死の行方 急
融資とはあくまで取引契約の一つだ。いくつかの要件があって初めて成立する。
その要件の中には当然資金使途が含まれる。簡単に言えば決められた行為に対して使用するのが前提の話ということだ。
今回のケースの場合、目の前で無尽蔵に伸び続ける化け物を燃やし尽くす炎を生み出すため、といったところか。貸し出すのは魔力。あとは実行に際して条件を付与すればいい。
この魔力で生み出した炎はあの化け物を《《焼き払うことにしか使わない》》。または龍と合意を得た場合には強制的に条件を履行させる、とか。
そうすれば少なくとも迷宮に被害を及ばせることがなくなるのだ。
『…そこまで助けたい?』
「当たり前だ」
『…そりゃ、そうよね。ええ。婚約者だもんね』
拗ねたような態度をとられてもどうしようもない。
そもそも、おれとしては一刻も早くあの化け物を退治したいのだ。どんどんでかくなっていく化け物を見ていると、それだけフレイヤに危険が迫っていると言うことなのだ。もちろん、長老と伊藤咲奈もいるからまだ大丈夫だと思うが。
それでも、迷宮を蹂躙されている様を見てだけなのは心臓に悪すぎる。
『いいわ、乗ってあげる。ただし、こちらからも条件をつけさせてもらう』
「え」
『私は別に魔力なんていらないわ。あなたの婚約者のことなんて私には関係ないし。…まぁ、私も無関係だからって殺してもいいとは考えてはないから、まぁ、あなたの提案に乗ってあげてもいいってだけの話だし?』
「む」
意外に冷静だなこの龍。
舌打ちを我慢しながら逆に提案してきた龍に対して同意するかを考える。どんな条件をつけられるかわからない。口車に乗せてうやむやにしようにも時間がもったいない。
どちらにせよ、この龍が何を望んでいるのかがわからなければどうしようもないのだ。
「わかった。条件は」
『婚約の解消』
「無理だ。愛してるからな」
『…この場面でそゆこと言うんだ』
なぜか心底呆れているような声音だった。
我ながら即答できたことに驚く。色々なことはあったが、彼女に対する想いは真実だ。妙な気恥ずかしさに頬が熱くなってきたがそれを気にするようなそぶりだけはしたくなかった。
『なら、別なのにする』
「なんだよ」
『こいつを燃やしたら私の話も聞いて。私のこと、そして、あなた自身のことを知ってほしい』
「…それだけ?」
『それだけでいいわ。で、どうなの?』
わけがわからない。
ただ、それなりに事情があることだけはわかった。そもそも、考えてみればおれがこの世界に目覚めた時にこの龍が目の前にいたのだ。
もしかすると、おれの出生の秘密くらいは知っているのかもしれない。
まぁ、それほど気にしていたわけじゃないんだが。
「いい。すぐに契約しよう」
『よろしい。で、どうすればいいの』
「君の名前を教えてくれ。それだけわかれば十分だ」
どうでもいいことだが契約に印鑑を使わなくてもいいのはここが異世界だからだろう。かつては印鑑証明や印鑑やらの書類で面倒だった。印鑑レスは地方にまで波及してなかったし、口頭で契約できる分快適である。本当にどうでもいい余談だった。
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