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死の行方 八


 とられた。

 

 多分、間違いなくそう言ったはずだ。聞き間違えようもない大音量だった。未だに『あああああ』と叫び続けているのはそれだけ後悔の念があるんだろうか。

 会話の流れから考えれば、何をとられたか主張しているのかは明白だった。

 

 おれである。

 

 いや、なんで?


『うわああああああああああああああああああああああああああんっ!』


「あの、ちょっと…!」


『ああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!』


「ああ、もう! 意味わかんないですよっ! とにかく落ち着いてっ!」


 最初の威厳はどこへやら。

 なぜか情緒が急転直下して天元突破した龍を必死に宥める。鱗を撫でてみたが、どれだけ効果があるのかわからない。多分泣きながら飛んでいるんだが、それでも振り落とされるような無茶苦茶な軌道じゃないのがせめてもの救いだ。

 ていうか、なんでそんなことで取り乱しているのかがまるで理解できない。

 

 過去におれと会ったのは一度だけ。しかもなんかめちゃくちゃ痛いことされた覚えしかないし、そこで所有権を主張されても意味不明だった。


『婚約者とかふざけんなぁあああああっっ! こっちはずっと待ってたのにぃいいいいいいいっ!』


 叫び声は続く。

 だんだんと話は見えてきたが、それにしたって身勝手すぎる主張だった。

 つまり、あれだ。

 記憶にある最初の会合の時から待っていたらしい。多分、言葉がわかるようになるまでってことだろう。

 そうだ。あの時、初めは穏やかな感じだったのに急に怒り出したんだった。あれ、おれが言葉を理解してなかったからなのか?


「と、とにかく、今はそれどころじゃないだろっ! あれ、なんとかしなきゃっ!」


『だから焼き払うって言ってんでしょぉおおおおおっ!』


「だから駄目だってっ!」


『どうしろっていうのよぉおおおおっ!』


 知るか! 

 そう叫びたい衝動を抑え、再度【末路わぬもの】へ視線を向けた。

 …だめだ、倍近くデカくなってる。

 そもそもおれにはどうしようもなかったのだ。どうにかできるのはこの龍の方で、その龍が焼き払う以外の方法がないというならどうしようもできないのである。

 けれど、それではフレイヤがどうなるのかわからない。

 なら、おれが取るべき手段は一つだった。


「て、提案があるっ!」


『え?』


 急に叫び声が消えて、さっきまでの狼狽した雰囲気が消えた。龍は首を後ろに逸らして、おれと視線を合わせた。いや、なんでそんな急に素に戻るんだよと言いたかったが、そんなことを指摘している時間はない。


「あんたがあれを燃やすのはいい。けど、おれが力を貸すからその対価として条件をつけさせてくれ」


『力を貸す? あなたが?』


 疑念に満ちた視線。当たり前だ。この龍には力を借りる必要がまるでない。自分だけで目の前の化け物を倒すことができるんだろう。それで困るのはおれだけだ。

 けれど、なぜかわからないが、わかりたくもないが、この龍はおれにご執心のようである。なら、そこに付け込んで交渉するのは当たり前の話だ。


「そうだ。あんただってあの規模の化け物を焼くにはそれなりの魔力が必要なはずだ。それをおれが用意するからあんたはおれが指定した条件の通りにやってくれればいい」


『魔力を貰うのは悪くない。条件とは?』


「あの化け物だけを燃やす」


『不可能だ。そんな器用な真似はできない』



「だからおれのスキルを使えばできるって言ってんだ。《《貸したものの使い途ってのは融資じゃ一番重要》》だからな」

 


 

 

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