死の行方 五
『覚えていないのか?』
いや、覚えているから聞いたんだけど。違うか。おれの聞き方がまずかったか、ただ会話を続けるために意味のない質問をしてしまったことを後悔した。己のコミュニケーションのなさを自覚しながら、どうにか意味のある対話をしなければならない。
意味のある対話。
そもそも、この龍は何をしに来たのかを。
「あー、いや、覚えているんです、けど。あの末路わぬ者を探しに来たんですよね?」
『そう言った』
呆れたような声音だった。
意外に人間臭い。
そう言えば、覚えていないのかと言った時もどこか寂しげだったような気がする。
「えっと、その、《《彼ら》》はなんというか、この村に襲撃をかけてきまして」
『だろうな。《《あれ》》は生きる者を許さない。全てを貪るだけだ』
あれ、ね。
言い方を聞く限りどうにも仲間という感じじゃない。いや、正直龍の言動なんて初めて聞いたから判別しようがないんだが、明らかに同格というか親密さが微塵も感じられないのだ。
少なくとも、心配してやってきたというわけじゃないようだ。
「だから、というか、なんというか、今まともに動ける状態ではなくてですね」
『ほう、そうか』
『やはりあやつらを撃退したか。やるではないか』
圧。
まっすぐに見つめられただけで息が止まりそうになった。殺意や敵意はまる感じない。むしろ前向きな感情を向けられているような気がするが期待が大きすぎると潰されると同じ意味で重圧がかかっているような気がした。
「撃退、というか。現在進行形で問題になってるといいますか」
『あれには死の概念がない。だからどうにもできないのだろう。それをどうにかするために我が来たのだ』
我。
いや、どうでもいいことに惹かれてる場合じゃない。
どうにかするためってのはどういう意味だろう。つまり、連中を片付けてくれるってことだろうか。
どうにも予想とは違う展開に言葉を失ってしまう。そんなおれに呆れたのか、哀れんだのかはわからないが龍は言葉を続けた。
『我をあれの元へ連れて行け。さすれば全てうまくいく』
はい、よろこんで。
と簡単に言えたらいいが。
けれど、今、あの化け物がいるのはこの村でも存在を秘匿している迷宮である。しかも迷宮主という時点でこの龍と会わせるわけにもいかなかった。
フレイヤ自身に聞ければいいのだが、この状況で待たせることも不可能だ。せめて、長老あたりがいれば相手をしてもらうこともできるんだろうが。
そんなおれの葛藤を見ていてなのかわからないが、
『もしや、あれを迷宮に押しこんだのではあるまいな』
そんなことを言い出した。
バレてる。
もはや間違いない。明らかにおれの内心を読み取っているだろう龍は呆れたようにため息を吐いた。
『無知とは恐ろしい』
『あれは対迷宮用の怪物だ。下手をすれば迷宮ごと食われるぞ』
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