死の行方 四
龍、ドラゴン。
はじめて目にしたそれと瓜二つの存在が目の前にいる。
見下ろす視線には知性が宿り、どこか優しげな印象を受けた。そこまでも記憶にある出会いと同じで、デジャブというにはあまりにも状況が酷似していることに驚いた。
再現と言っていいのかもしれない。
違うのはおれがいくらか成長したくらいで、それ以外は何も変わらなかった。
絶対的捕食者と被捕食者との関係性も。
ふと、苦い記憶も追い出す。
そうだ、あの時はこいつの巨大な舌に舐められたんだ。その後、激痛に襲われて意識が朦朧となったんだった。今思い出しても筆舌にし難い痛み。当時は赤子だったせいもあるんだろうが、もう一度味わうのだけは絶対嫌だと思った。
もちろん、思っただけで動くこともできずにいるわけなんだが。
不意に、綺麗な音が聞こえた。
これも前回に聞いたことのある音だ。龍の鳴き声。ここまでの展開もかつてのそれと同じで思わずおれは身構えた。
けれど、
【おかしい】
前回とは違うことが一つ。
はじめは聞き間違いの類かと思ったが、それが龍の言葉だと理解するのに時間はかからなかった。直接頭の中に響くような感覚。それもこれまで経験したことがあったからこそすぐにそうと受け入れることができたのだ。
とういうか、
「しゃべれるんだ」
そんな当たり前のことが妙に気になった。
確かに知性を感じる瞳ではあった。けれど、ここまでしっかりと言葉がわかるとは思わなかった。これだけ巨大で神聖な化け物なのだ。おれたちみたいな小さな存在のことなんて虫ケラ程度にしか思えないだろうに。
【末路わぬ者共が来たはずだ。どこにいる?】
おれが言葉を理解できたことを察したのか、ドラゴンは問いを返してきた。もちろん、おれの言葉はスルー。いや、確かに会話の流れとしてはそこまでおかしくないんだろうか。
むしろ、話しかけてるのに話せるんだとか言われて馬鹿にするなと怒られなかっただけ幸運なのかもしれなかった。
「まつろわぬもの?」
【不死の軍勢だ。この地にいることはわかっている】
ああ、と納得した。
やはり《《あれ》》は厄ネタで間違いないらしい。襲撃だけでは飽き足らず、こんなヤバい存在まで引き寄せやがった。
さて、どうしたものか。
悩む理由はいくつかある。
一つはこのまま素直に引き渡していいのかという点。
今まさにあの化け物について真相究明中なのだ。このまま引き渡せばなにもわからないままになってしまう。そもそも連中で終わりとは限らないのだ。
また襲撃された場合、対処法すらわからずに被害が拡大する恐れもある。田んぼが枯れたとは言え、この土地をめちゃくちゃにされるわけにはいかなかった。というか、そんなこと許せるはずもない。
二つ目の理由は、そもそもこのドラゴンをフレイヤ達と接触させていいのかわからなかった。長老や伊藤咲奈なら何も問題ないかもしれない。戦闘になっても二人がいた方が心強いのも間違いない。
問題はフレイヤだ。
ドラゴンとはそもそも迷宮を守るボスとして名高い存在である。それが別の迷宮の主人と接触した場合どうなるのか想像したくもなかった。
もちろん、目の前のドラゴンが迷宮の怪物と同種なのかはわからない。けれど、あの化け物を探しに来たと言っている時点で関係があるのは間違いない。
最悪なのは同じ迷宮の怪物であるため回収しにきたケース。
一度迷宮を抜け出した怪物を同じ迷宮の怪物が回収するなんて話聞いたこともないが、道理としてはさほど間違っていないようにも思えた。
だから、
「おれと、一度会ったことあるよな…ますよね?」
我ながら震える声で、話題を変えることにした。
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