彼女の抵抗
「近づかないでください。あなた達は出禁です」
フレイヤは威嚇するように言った。おれの腕を抱え込んでいるのは彼女なりの意思表示である。
威嚇された側の長老と伊藤咲奈は特に気分を害してはいないようだ。というか、慣れているのだ。
ここ最近、フレイヤの独占欲が爆発しているのである。
「仲睦まじいのは結構ですが、今はそんなことを言っている場合ではありません。一刻も早く対策を練らなければならないんです」
「嘘ですね。私はもう騙されませんから」
「いやいやいや。本当にやばいんだ。疑うのはわかるけど、とりあえず入れてくれ」
おれの言葉にフレイヤは鋭い眼光をむけてくるだけだった。
いや、まぁ、毎度のことすぎて言いたいこともあるんだろうが、ここで引き下がるわけにはいかないのだ。
どうしても迷宮の力を、フレイヤの力を借りなければならない。
だから、わざわざここで作戦会議をすることにしたのだから。
「い・やっ!」
おれの言葉を全力で否定するフレイヤ。
抱えた腕を決して離そうとしないところがなんとも言えない。子供が駄々をこねるのと同じである。こうなるとしばらくは拗ねていうことを聞いてくれなくなるのだ。
「いやぁ、わかっていましたがここまでとは。典型的なバカップルですね」
「ほっとけ」
実際婚約者同士なんだから何も間違っていない。その上、結婚の話までしてるんだから紛れも無いバカップルだろう。…それはそれでこういう状態になるのは問題あるんじゃなかろうか。
「せめて事情だけは聞いてくれんかのう」
「い・やっ! ていうか、あんたは私の迷宮どんだけぶっ飛ばしてくれたと思ってんのっ!」
「むぅ」
長老もフレイヤ相手にはうだつが上がらない。
まぁ、ここ数年大暴れできていたのもフレイヤの迷宮があってこそだ。最近は結界術を極めたとかで異次元に敵を連れ込めるので使わなくなったが、襲撃に対してはどうやって迷宮へ引き込むのかが肝だった。
襲撃の度に外敵から破壊され、味方であるはずの長老から爆撃されるのだ。
大切な迷宮を滅茶苦茶にされる度にフレイヤが泣き崩れたのは言うまでもない。その度におれが慰めてたから彼女が長老や伊藤咲奈に対して攻撃的になる理由も十分に理解していた。
おれに対しては直接言わないまでも、いろいろと言いたいことはあるはずだ。それでも彼女がおれを責めないのは、一重にフレイヤの好意に甘えているだけなのである。
「それならおれだって同罪だ。…この村を守るためにも必要なことなんだ。頼む、フレイヤ」
「……」
じと目で睨まれる。
普段ならここで彼女が折れてくれるのだが、今日はそう簡単にいかないらしい。もしかして、これまで積もり積もったものが我慢できなくなったのかもしれない。
一瞬の沈黙の後、
「この間の話、忘れないでね」
さらり、とフレイヤはそんなことを言った。
怖い。
いや、そんな感想を抱くおれの方が間違っているのか。彼女にとってはそれが自分の迷宮を滅茶苦茶にされようとも我慢できている理由なのだから。
何も言えないおれから視線を外し、彼女は長老達を迷宮へと招き入れた。
渋々と言った態度は一切崩さず、おれに見せつけるように。
これは、マジでやばい。
おれはただため息を吐いた。
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