悪徳 二
「本当に悪趣味ですね。なんですか、このチート武器」
画面上には膨大に降り注ぐ魔力の塊を切り裂く軍勢が見える。先ほどまでは雨霰と降り注ぐそれらを前に逃げ惑うしかなかった兵士たちが反攻に出たのだ。
ただの反攻だけならなんのドラマ性もない。
圧倒的に不利な状況下を覆そうと必死にもがく姿が克明に映し出されているのだ。
ていうか、剣からビーム出てるし。
そうか、星を切るにビームが必要なのか。
「さぁな。おれはあくまで連中が最高の武器を手にいれるための引換券を貸しただけだ。どんな性能を選ぶかはこいつら自身が決めたことだ」
「その結果がこれですか」
「ああ。誰だってヒーローになる夢は持ってるってことだろ」
光量がすごい。
さっきまでの長老の爆撃だって眩しすぎて見ていられなかったのに、ここまでくると見ているだけで目に深刻なダメージを受けてしまうかもしれない。
スキルの効果が十分に発揮されたのも確認できたので後は長老に任せよう。
「よろしいのですか? 長老が負けるかもしれませんよ?」
「ありえないってわかってて聞いてるだろ? まぁ、万が一長老が負けたとしても本望なんじゃないか?」
「その場合、あなたが危ないのでは?」
「それは大丈夫。こんな最強の武具を貸してやったんだ。最悪、利息を取り立てて殺すから」
「利息で殺す、ですか?」
「あれ、言ってなかったけ?」
「融資ってのは貸したものを絶対に回収するもんなんだよ。相手が死んでも逃さない。ただなんて虫のいい話はないんだ」
今回貸した先は二つ。
一つはもちろん長老。
無数の術を行使するハッスルじいちゃんだが、流石に寄る年波には勝てない。思い通りに魔法を行使し続けることが出来なかった。そこで、おれのスキルを使って魔力を貸し与えた。
これまでの付き合いやアスラから返してもらった魔力によってそれなりの量を確保できていたから出来たことだ。流石に、はじめて長老に貸した時にはないよりマシ程度だったらしい。けれど、二度三度と繰り返すうちにどんどん量が増していった、らしい。
おれは魔力が使えないんで増えたか減ったかなんてことすらわからない。けれど、スキルを使う度に長老はより超絶的な魔法を好き放題使っているのは事実なのだ。
そして、もう一方。
よく知らない連中にも貸した。
魔法を使えるのかもわからなかったし、同じ土俵では多分長老相手に勝てる奴なんてそうはいないだろう。
だから、武器を与えた。
正確には、彼らにとって最高の武具を得られる権利を貸したのである。
もちろん、これは融資だから権利を得られるだけの魔力を貸したと言い換えることができるかもしれない。…いや、というか、もしかするとその魔力すらも『何か』によって得ているのかもしれなかった。
その『何か』について、まだおれは何も理解できていなかった。
迷宮で得た山ほどの金貨。
それすらもいつの間にかなくなってしまっていた。
「あ。思ったよりもあっさりでしたね」
眩い光はいつの間にか消えていた。
画面には無数の屍が倒れ伏し、長老が満足げに浮かんでいる。
見慣れた光景だったが、またスキルが強化されたので満足である。
これ以上貸し付けていても利息が増えるだけなので回収する。いくら長老といえど無尽蔵な魔力を持っているわけじゃない。
こうして、大魔王の侵攻にどうにか凌ぐことができた。
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