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それからのこと 戎


「で、いつまでそうしてるんだ?」


 長老の案内で屋敷の離れに来た。

 窓を閉め切っているせいで暗闇に近い空間に彼女はいた。普段の華やかな雰囲気はかけらもない。膝を抱えて微動だにしない様子は見ているこちらまで気分が沈みそうになる。


 フレイヤはおれの呼びかけにも反応しない。親父とお袋の喧嘩に巻き込まれてからずっと塞ぎ込んだままなのだ。

 

 まぁ、なんとなく心情はわかる。世界を救うと迷宮から連れ出されたのに味方おれからの裏切りに遭い、その上、天災じみた戦闘にまで巻き込まれたのだ。

 これから輝かしい未来が待っていると期待したのに出会い頭のトラックに轢かれたみたいな心境なんだろう。異世界転生したのはおれのほうだが。

 …だめだ。くそつまらない考えしか浮かばない。洒落た励ましも思いつかないし、どうしたもんかと頭を抱えそうになった。

 もちろん態度には出さない。流石に目の前で沈んでいる人間がいるのに余計な刺激を与える真似をするつもりはなかった。


「ずっとこの調子じゃ」


「わかったよ、長老。あとはおれがなんとかする」


「そうか。頼むぞ」


 それだけである。含みもなく当然のように言って長老は出て行った。

 出て行った長老の背中を目で追ってから、おれはフレイヤに向き直った。やはり微動だにしない。

 

 どうしたもんかと思ったと同時に、立ちっぱなしなことにも気づいた。とりあえずフレイヤから二、三歩程度の距離で座った。


「…何しに来たの?」


 ぼそりと。

 呟く言葉に若干安堵する。流石に廃人みたいな憔悴の仕方はしていないらしい。というか、


「別に。ただここにいるって聞いたから」


 そもそも、彼女はどうしてここまで落ち込んでいるんだろう。

 いや、確かに心情はわかる。けれど、本気で世界を救おうって決意したやつがただ思い通りに事が進まないってだけでここまで沈み込むもんだろうか。

 せめて、暴れ出すぐらいの気概はあるだろうに。


「そうなんだ。ありがとう」


「どう、いたしまして?」


 お礼を言われた理由がわからない。

 しかも、なぜか雰囲気が明るくなった気がする。…いや、今の会話で明るくなる要素があっただろうか? それとも、もともとそこまで落ち込んでなかったとか?

 わからないことを考えてもしょうがない。とりあえず、会話を続けることにした。


「あー、なんだ。疲れちまったのか?」


「? どうして?」


「いや、どうしてって。こんなとこにいるし」

 

 むっとした顔をするフレイヤ。

 おれ、なにかおかしなこと言ったか?


「…私は怒ってるんだよ?」


 怒ってるの?

 そう聞きそうになって飲みこんだ。いや、そのまま聞き返した方がよかっただろうか。困惑するおれの様子がおかしかったのか、フレイヤは拗ねたような表情を浮かべた。


「やっぱりわかってない」


「えっと」



「私のこと欲しいって言ったくせに」


 

 んん?

 そこまで言われて思い出した。

 

 迷宮のクリア報酬。

 

 あの時のやりとりでそんな話があったな、と。

 

 え、まじで言ってんのこの人?

 


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