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それからのこと 七


「これ、本当なのかい?」


 しばしの間本を読み耽っていた母さんは困惑した様子だった。無理もない。おれは中身を読むことはできなかったが、聞かされた内容はスケールが大きすぎる上に胡散臭すぎた。

 横からのぞいていた姉二人も怪訝そうな表情を浮かべるだけで、何か意見を言おうともしなかった。その反応だけで半信半疑どころか、信じていないのがわかる。

 

「本当だ。少なくとも、そこに書かれていた予言は必ず起こる。実際に起きたことをいくつも潰してきた」

 

「それで、家に帰ってこなかったと、死ね」


「だからって私たちの誕生日にいなかったのは許されない、死ね」


 親父の弁明に対して姉二人は大鉈を振るう。

 といっても、当然の如く親父は涼しい顔で聞き流している。しれっと世界を救ったことを自慢したいのかと思ったがただ単に事実を言っているだけのようだ。

 いや、まぁ、そんなことを自慢したい男だったらこんな面倒臭い真似はしないだろう。家族に秘密まで作って世界を救う真似をするなんて、それこそ漫画の正義の味方みたいな話だ。


「で、トールの結婚もその一環だってのかい?」

 

「そうだ。世界を救うために必要なことなんだ」


 ヤバい。

 一瞬で場が静まり返ってしまった。溢れんばかりの魔力も突き刺さるような殺意も消えている。だからこそ、次の瞬間には大爆発を起こす予感が急かすように鼓動を早くしている。

 今までも十分に殺意や敵意はあった。

 けれど、この緊迫感はいよいよヤバすぎる。


 その中心にいるのは、当然父親と母親だ。


 姉二人ですら気配を消して、ことの成り行きを見守っている。

 

「そうかい。あんたがそういうならそうなんだろうさ」


「なんだ、わかってくれるのか」


 ダメだ。

 親父が意外そうに眉根を寄せたのを見て全力で逃げ出したくなった。おれの目から見ても初めて隙らしい隙が見えたのだ。これまではどこ吹く風で自然体だったが、決して隙らしい隙はなかったのだ。

 一眼見ただけで身構えるしか無いとわからされる圧倒的な存在感。

 けれど、今はそれが崩れてしまった。

 それを、


「ああ。あんたがどうしようもない馬鹿だってことがわかったよっ!」


 母が見逃すはずはなかった。

 

 閃光が視界を染める。

 咄嗟に腕で目を覆ったが、視界は真っ白に染まったままだ。衝撃が襲ってきたが、それ以上に大きな爆音のせいで耳が馬鹿になってしまった。

 動けない。

 しばらく固まったままだったが、恐る恐るまぶたを開けた。いまだに視界はぼやけているし、キーンと耳鳴りは続いている。

 徐々に輪郭が合ってきて、視界の光景を理解するにつれて自分の行いが間違っていたことを思い知らされた。


「だから、言っただろう」


 親父の言葉には棘がない。けれど、明確な失望が込められているだけはわかった。

 母はすでに魔力を全開にして魔法を放つ体制になっている。姉二人はそれぞれアスラとフレイヤを担いで遠くに走り去っているのが見えた。

 逃げ遅れたのはおれ一人。

 さっきまで一家団欒していた家までも残骸を残して消し飛んでいた。

 

「ジーナは怒ると怖いんだよ」


 見境がなくなるから。

 そこで初めて、母がおれごと親父を吹き飛ばそうとしていることに気づいた。というか、おれが近くにいることなどまるで意識していないのだ。全力の魔法ぶっぱ。それに対抗する手段のないおれを守るため、親父が盾になったのだ。

 いや、ほんとどうしてこうなった。

 

 まさか、親父に喧嘩を売ったのに母親に殺されかけるなんて。


 おれはなんとか逃げる準備をすることにした。

 

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