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それからのこと 六


「何を言っているんだ、トール」


 全身を串刺しにされた気がした。

 錯覚でも何でもなく、親父がその気になればそうなっていただろう未来。

 さすがだ。

 おれが喧嘩を売ったからじゃない。おれが約束を破ろうとしているから本気で怒っている。

 けれど、その約束ってのは馬鹿親父が勝手に言ったことだ。

 親が息子に立場を利用して無理やり言うことを聞かせようとしてした最悪の類の決まり事。どうして、おれがそれを守ると思ったんだろうか。

 おれと親父の間なら100歩譲ってそれでも良いかもしれない。けれど、この場の家族全員に関係する話だし、なにより、フレイヤさんの人生に関わる話でもあるのだ。

 彼女自身は親父に協力的だし、世界を救うことに積極的に参加したいのは間違いないだろう。だが、それと自分の伴侶を選ぶのは全くの別問題ではないだろうか。

 脳内で自己弁護を完了させてから、親父と対峙する。

 

 怖っ。


 改めて息子に向けて良い類の重圧じゃないと慄いた。…いや、逃げてる場合じゃない。とにかく、ゴングを鳴らしたのはおれなんだから。


「そのまんまだよ。姉二人を差し置いておれの嫁って話もそうだし、それを親父が主導するのもそう。しかも母さんにも説明せずにだ。そもそも、本人同士で納得してるってことで話を通せっての気に食わねえ。親父じゃなくておれとフレイヤさんの責任にすり替えてるじゃねえか」


「それ、本当かい?」


「ああ。親父がそう言えってさ」


 母のボルテージがさらに上がっていく。臨戦体制。親父が恨めしそうな視線でおれをみているが自業自得だと睨みつけた。

 ちらりとフレイヤさんを見る。

 俯いて黙っている。…彼女も被害者ではあるが、親父に協力したという時点で共犯でもある。だから責める気は無かったが、擁護する気もなかった。

 まぁ、結局のところ、


「とにかく、あの本を読ませれば良いんだよ。おれには読めなかったけど、母さんたちなら読めるだろ」

 

 フェアじゃないのが気に食わないのだ。はじめから全部馬鹿正直に話せば良い。それを都合が悪いからと隠すことで相手をコントロールしようとする真似自体が絶対に許せなかった。


「本ですって?」


「愚弟、何の話だ?」


 姉二人は機敏に反応していくれた。これで親父が誤魔化すのも難しくなるだろう。


「トール、どうしてくれる?」


「どうするもなにもないだろ。あの本をみせればいいんだって」


「……まったく、育て方を間違えたか」


「アグニル」


 母が鋭い声で言った。


「いい加減話しな。あんたがずっと前から何かを隠してたのはわかってるんだからさ」

 

「……ふぅ」

 

 親父は少しだけ物思いに耽るような表情を浮かべた。

  

「読んでみてくれ。到底、信じれるとは思えないがな」


 それが親父の本心だったのだろう。

 懐から取り出した本を母に渡し、


「これでいいか?」


 逆ギレ気味に親父はおれに凄んだ。

 うん、素で怖い。

 身内への手心がないとここまで圧倒的な存在感を放つのか。それでも、息子として親父にびびっているわけにはいかないので、


「いいからさ。自分の家族を信じろって」


 そう、おれの本心を伝えてやった。


 

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