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これからのこと 六


 突然の宣言にぽかんとしてしまう。


 我ながらどうでもいい質問をしたと思ったが、こんなふうに返されるとは思っていなかった。自虐ネタというわけではないが融資のスキルがあまり役に立たないということを確認したかっただけなのだが。

 こんなに真剣な表情で見つめれられることが久しぶりすぎてドギマギしてしまう。

 けれど、ああ、そうか。

 もしかすると、彼女が言うようにおれのスキルは捨てたもんじゃないのかもしれない。


「ああ、なるほど。そういうやり方もあるか」


「はい?」


「いや、助かった。自分でも何で気づかなかったんだって思うけど、でも、うん。やっぱり一人で考えてるだけじゃダメだよな」


「なんの話ですか?」


「なにって」


 そっと地面に触れる。

 冷た、くはない。けれど柔らかな土の感触を久しぶりにしっかりと認識できた。何度も土壌の調査で同じことをしていたのに、今の今までそのことに思い至っていなかったのだ。


 そもそも、貸し借りなんて曖昧なものを貨幣と同じ基準で取り立てできたのだ。


 だったら、その借り手が人間かどうかなんて基準は曖昧でも出来るんじゃないだろうか。そもそも、前世でだって法人にも貸してたし、国家なんて曖昧の象徴みたいなものだって借金や融資だってやっていた。


 貸す相手は何だっていいのだ。元手と利息を返してさえもらえれば。

 

 そんな当たり前のことをすっかり忘れていた。


「…何を、したんですか?」


 あっさりとした手応えに驚いた。 

 これまでで一番やりやすかったし、多分ほぼ思い通りの条件を約定できたのだ。アスラだとこうはいかない。あいつはあれで頑固だし、本能的な拒絶はものすごく強烈だったのだ。


 強制執行をするのはそういうことだ。

 約定違反という大義名分がなければアスラを思い通りに操ることはできないのだ。

 

 けれど、土は違う。

 意思はあるのかないのかわからないが、おれの呼びかけや要求には応えてくれたのだ。であれば、貸すのは可能なのだ。

 もちろん、相手がそれを拒絶すれば無理だがそうならない自信もあった。


 作り方は知らなくても田んぼのこと自体は知っている。そこから取れる米がどれだけの人間を幸せに出来るのかを。

 

 それを伝えられたからこそ、目の前の光景が生まれたのだ。


「ここでもし米が採れたらたくさんの人に食わせるって約束したんだ。炊き立ての白米を食った時の感覚。こいつらはそれを感じたことはないだろうから、おれの記憶にある感情を伝えてみた。それがよっぽどうまそうだったんだろうな」


 イメージ通りすぎて苦笑してしまう。

 幼い頃に見た田んぼが目の前に広がっていた。

 一枚どころじゃない、一反歩はあるんじゃなかろうか。

 広がったみずみずしい光景に、そっと合掌をした。



「やっぱり、あなたはおかしい」


 

 独り言のようだが、明らかに聞こえるように言っている。それをあえて指摘することはせず、おれはただ感謝の祈りを捧げた。

  

 

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