これからのこと 五
そもそも田んぼの作り方ってどんなんだろう。
元日本人でありながらおれは米のことを何も知らない。せいぜい水捌けの悪い土を何度も何度も枯葉や堆肥を混ぜて耕すことで柔らかくし、あぜを作って、水路を引いて、水を入れることで形になる、らしい。
この知識ですら伊藤咲奈が何度も説明してくれたおかげで理解できたことだ。
そもそも、話始めの時点で専門的すぎてまるで理解できなかったのだ。それを噛み砕いて噛み砕いてようやくここまで理解することができた。
そして、何よりも大事なのは魔力が残留していない土壌であること。
いくら耕そうとも魔力の浄化はできない。はじめから影響を受けていない土壌を探さなければならないのが何よりもネックだった。
「すぐに見つかると思ったんだけどなぁ、どうしてここまで魔力がそこかしこに残留してんだ?」
「さて? 私にとってもそれは不思議なんですよね。普通、魔力が残留するのはダンジョンそのものか、あるいは大戦クラスの戦場でもなければあり得ないんですけれどね」
「そんな話きいたことないけど?」
「ええ。ここでそんなことがあったという歴史は近隣諸国にもないそうです。麻呂ニの調査なので信憑性は高いかと」
「…あのおっさん、本当に抜け目ないんだな」
お歯黒様の姿のせいでふざけた大人にしか見えないがさすがは一組織の顔役である。まぁ、七年間も組織の構成員を一つの集落にぶちこむなんてことをやる男である。それくらいのことは朝飯前なんだろう。
いや、それよりも。
「あのさ、今だから聞きたいんだけど」
「なんです?」
「おれのスキルってそこまで危ないやつなのか?」
「え?」
今更なにをという表情を浮かべる伊藤咲奈。
確かに、シブサワがやったことは恐ろしいことだ。本来であれば一騎当千に近い大和構成員を数十人単位で自身の配下として従えることができたのだから。もちろん、使い道を変えれば信用創造による経済圏の創造だってすることが出来るのは理解できる。それが前世において資本主義という名で生活の術となっていたのだ。
けれど、前世にはアグニルがいなかった。
一人で軍勢を相手取り、その全てを押し返す存在。無双のスキルだろうと強力無比な魔法だろうと通用しない理不尽な強さ。
核兵器と違い、自分自身の意思でその力を行使することが出来る存在。
どちらかといえば、そちらの方がずっと優先度が高いんじゃないだろうか。
「…そうですね。確かに当初はアグニルさんへの監視の意味を含めての潜伏でした。あなたのスキルについてはあくまでおまけでしかなかった」
おれの言葉を肯定するような言葉。
やっぱりか。
融資のスキルよりも遥かにやばい存在がいるのだからそっちが本命になるのは当然のことだ。
まぁ、そもそも、おれの使い方だって真っ当なやり方じゃない。それはダンジョンで金貨を手に入れようと多分変えることができなかった。
おれが出来ることは融資としての通貨の供給ではなく、もっと別な方法なのだから。
シブサワのスキルの使い方と比べればあまりに未熟すぎる。
おれはそう思っていたが、
「けれど、今は違います。あなたのスキルの力は異常です。だから、私はここに残ることを決めたんです」
なんでか、そんなことを言われた。
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