これからのこと
結局、親父の案は全面的に受け入れられた、らしい。
らしい、という曖昧な表現なのは実際にそこまで見届けることができなかったからだ。親父の考えを聞いた麻呂ニはしばしの葛藤の末、親父を大和の本部へと連れていくことを決めたのだ。
その場にいる全員を連れていくことは出来ないと親父だけを連れて向かったのである。家族ですらダメだというんだから酷い話だ。黒煙を上げたまま遠ざかる天照を見ながら、おれたちは長老の家へとすごすご帰ったのであった。
その翌日には、再び大和からの使者が来た。
親父の姿はなかった。
そこからはあっという間だった。
親父の言葉通りに事が進むことになり、村の子供はその日のうちに大和の各支部へ移送する段取りまで整ってしまった。理由の説明は一切なし。ただどこどこの家の誰々は大和のどこどこ支部の人間が迎えに来たら乗れ、である。
あんな非常事態の後に、よくもまぁここまで無慈悲な対応ができたもんである。我が父親ながら血も涙も無い所業にしか思えなかった。
「え、なんで? 村の外に出れるんでしょ? 楽しみじゃん」
「あー、そう、かなぁ?」
そんなおれの感傷じみた思いは余計なおせっかいだったらしい。
今、おれたちは流石に何でもかんでもそのままはまずいだろうということで、村の掃除をしている。同輩に混じって清掃しながら、今回の我が父の所業について謝罪をして回ろうとした矢先のことである。
何度か集会でも隣になった娘を見つけ、それとなく村の外へ出ることを聞いてみたのである。
男連中にはいつでも聞けるが女子連中と会話をする機会は案外少ない。なので、彼女に声をかけてみたのだ。断じて異性としての下心が会ったわけでは無い。七歳児に欲情するほど感性まで若返ってはいないのだ。
「でもさ、家族とも離れるわけじゃないか。それって寂しくないの?」
「? 今更でしょ。みんな外に働きに出るし、ばあちゃんはこの間死んじゃったからさ。家にいても一人だし」
「…ごめん」
「? なんで謝るの? みんな似たようなもんでしょ」
逞しい。
謝罪した自分が恥ずかしくなってしまうほどあっけらかんとした態度だった。七歳児とは思えない返答である。前から気づいていたがどうにもこの村の子供達は成熟しているように思えた。
「折角だし、外の世界を見るのもいいんじゃない? ていうか、見てみたくない? だって、私たち以外の種族もたくさんいるんだよ? そういう人たちと友達になれるかもってワクワクするんだよね」
「友達、ね。そうか、そう考えた方がずっといいか」
当たり前と言えば当たり前の考え方なのかも知れない。
前世でも進学の際に似たようなことを自分自身も考えていたような気がしたからだ。
特に大学なんかそうだった。一人暮らしとなればこれまでの自分とは違う生活になるし、他県に行けばそこはもう新しい世界と同義なのだから。
新しい場所での出会いを求める感覚というの随分と久しぶりに思い出した。
凄惨な過去があろうとも、未来へ向かうのは何も変わらない。
なら、新しい可能性に期待をのせる考えも悪く無いのかも知れない、と随分とおっさんくさい感想を覚えた。まぁ、実際おっさんなのだが。
「あ、そうだ。トールさ、ここに残るんでしょ? 連絡取りたいからさ、ちょっと今夜時間ある?」
「今夜? 連絡先っていうか手紙とかのやり取りは大和の人が繋いでくれるっていってたけど」
「そうじゃなくてさ。ああ、あんたはわからないか。うん、とりあえず夜に行くからよろしく」
なんで夜?
いまいち意味がわからず詳しく聞こうとしたら、
「トール、なにやってんの?」
なんでか怖い顔をしたアスラが来た。
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