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最強の戦士 四


「留学生? ワシらの各支部に、村の童を送ると?」


 目が点になっている。もちろんおれたちも同じだ。

 自信満々で言うもんだから任せてみたが、まさかの留学生。復興を目指す段階なのに、こいつは何を言っているんだ。

 

「ああ。あなた方の支部は全世界にあると聞いている。その各地で我らが同胞を育ててほしい。その上で、大和という組織を学ばせてくれ」


「学ぶ? 各地と言っても、まぁ、この村の童達ならばどうとでもなるが」


「では、簡単でいいので支部の場所を教えてほしい。こう見えても若い頃は世界各地を回ったこともある。どの地区にどの子を配するかはこちらで決めさせてもらう」


「ちょ、待たれい! まだ受け入れるか応じておらん。そもそも各支部の位置を部外者に教えるなどワシの一存では」


「え。麻呂ニだったら出来るでしょ?」


「ちょ、咲…奈っ! 急に何をっ?」


「私は賛成です、ってこと」


「いや、しかし」


 とんとん拍子で話が進んでいく。

 いや、今の伊藤咲奈と麻呂二のやりとりの不自然さはあえて無視する。元々伊藤咲奈という存在自体が怪しさしかないのだ。今更そこを追求しても何の意味もない。

 一番の問題はこの男が何を考えているのかがまるでわからないことだ。

 続く言葉はさらに意味不明だった。


「それと、いますぐ復興作業を止めてほしい。止めなければ、おれが自分で止めるぞ」


「ば、なにを言っておるっ! アグニル、貴様、それが何を意味するのかわかっているのかっ?」


「わかっているさ。落ち着けよ、長老。今復興したところで何の意味があるんだ?」


「意味ってなんだよ! 住む場所もないじゃないかっ!」


 考えを聞くのにも限度がある。

 あんまりといえばあんまりな物言いに流石のおれも反論した。けれど、


「復興してもまた襲撃を受けるんだぞ? だから意味がないと言ったんだ」


「っ、だから、シブサワって奴を…!」


「それは出来ないんだろう? とっくに高飛びしたんじゃないのか?」

 

 ぎょっとする。

 最後の質問は麻呂ニに対するものだ。

 意外な角度からの質問に麻呂ニは一瞬苦い表情を浮かべたが、


「そうじゃ。だからこそ無償の支援を申し出ている。少し前に、あやつは大和との関係を絶ったのじゃ」


 そう言った。

 

「なら、このままここを復興しても襲撃のおそれがあるわけだ。どうだ、おかしな話じゃないだろう?」


「じゃ、じゃあここはどうすんだよ! このままにしておくっていうのか!」


 見るも無惨な故郷。

 未だに復興作業は続いているが、それでもまだまだ手付かずの状態と言っていい。崩れた家屋、抉れた大地、農地は荒れに荒らされている。亡骸は布や何かを被せられているがそこかしこにある。

 倫理的に考えてもこのまま放置なんてできないし、亡骸を放置して疫病まで蔓延したらそれこそ救いようがない。

 だが、


「亡骸はもちろん弔うさ。けれど襲撃で倒壊した家屋や荒地はそのままにするんだ。そうだな、ここを我らの聖地としよう。ここであったことを後世にまで残していくんだ。米作りの他にも役割ができたな、トール」


 父の言葉には一片の迷いもなかった。

 その行為の意味もわからないが、どうやら決定事項らしい。米農家だけではなく墓守としての仕事まで任されるとは思っていなかった。目の前の男の発想に、今度こそ、おれは呆然とするほかなかった。

 

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