最強の戦士 三
「ちょっと待った。今の発言はなし。この人適当なこというとこあるから。ていうか、そもそもはっきりと言ったわけじゃないから無効ってことで」
流石にこれは不味すぎる。
麻呂ニと親父の間に割って入って、発言を有耶無耶にした。
「? 何を言ってるんだ、トール。私はいつだって真剣だぞ?」
「いつだってぶっ飛んでんだから黙ってろ…! そんな簡単に決められることじゃねえだろうが…!」
頭が痛くなってきた。
何も考えていない父親に振り回されるのはもっと大きくなってからと思っていたが…いや、よく考えればいつだって振り回されっぱなしだった。とにかく麻呂ニと引き離し、長老の元へと引っ張っていく。なぜか伊藤咲奈がワクワクした表情でこっちに近寄ってきたが無視することにした。
「クソ親父、いい加減にしろよ。そんな簡単に村のことまで決めるなよ、このままだと大和に乗っ取られるかもしれないんだぞ?」
「乗っ取られる? 彼らがそう言ったのか?」
「いうわけねえだろっ! 本音と建前ってのがあんだろが!」
無償の支援、無償の復興。
大和に非があるのは間違いない。けれど、それを真に受けていいはずがない。米作りだってそうだ。弱った時に擦り寄られて、そのまま支配されるなんてことはよくあることだ。
前世だってそうだった。歴史の勉強を少しでもまともにすれば無償という言葉がつくこと自体、どれだけ恐ろしいことが待っているかわかるはず。どれだけの痛みを受けようと、深い傷跡をつけられようと、立ち直るのは自力でやるしかないのだ。
米作りだってそうだ。基幹産業を明け渡すことがどれほど危険なことか。
「いいかっ? あいつらが無償の支援だとか無償の復興だなんだってのはありがたいのはわかる。けど、そのまま言いなりになったらそれこそ終わりなんだっ! 大体、あいつらはまだ首謀者のシブサワの身柄について何もしてないんだぞっ! 真っ先にやつの首を持ってくるのが筋だろっ!」
我ながらどこの蛮族の主張かと思った。
けれど、紛れもない本心である。何度思考とも絶対にこの考えがぶれることはない。復興や支援は前を向くためには必要なことだろう。けれど、それではダメだ。
絶対にシブサワは次の一手を打ってくる。
他国の軍勢ですら動かした奴がこのままなんてことはありえない。
だからこそ、後顧の憂いを断たねば。
そのための交渉の場にすべきなんだ。
「…トール。お前は」
「長老は黙っててください。このバカ親父には息子のおれが言い聞かせないと」
「うん。どうも勘違いしているようだな」
「あ? なにがだよ?」
「俺も彼らを許したわけじゃない」
「やるなら徹底的にだ。これから面白くなるぞ」
そう言って、親父は珍しく獰猛な笑みを浮かべた。
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