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最強の戦士 二


「で、いつまで気を失ったふりをしているんだ? 無理やり起こす趣味はないが盗み聞きを無視するのも限度がある」


 アグニルの言葉にびくっと反応した奴がいる。

 長老が抱えていた麻呂ニだ。

 全身の力が抜けてもたれ掛かっているように見えたが、実にわかりすくびくっとなっていた。長老が苦虫を噛み潰したような表情で睨みつけている。それでもしばらく動かなかったが、ううんとかわざとらしい声をあげて麻呂ニは今起きましたよという態度で目を開けた。


「はっ、何が起きたじゃー? なんか知らない奴がいるぅー?」


 下手くそか。

 ここまでわざとらしすぎると逆にどうでも良くなってきた。白けた場の雰囲気を察しているだろうに麻呂ニはあくまで今起きたという態度を崩さない。

 ある意味大人である。

 いや、大人というか詐欺師の類というか見栄っ張りというか。

 とにかく麻呂ニはこのまま強引に話を進めるつもりのようだった。


「はじめまして、不二和良麻呂二と申す。大和における相談役を承っておる。貴殿が最強の戦士と名高いアグニル殿であるか?」


「違うぞ」


「へ?」


 なにいってんだ、こいつ。

 親父の返答に全員がそう思ったに違いない。ただ当の本人は涼しい顔でいた。嘘をついているとか屁理屈を言いそうな態度じゃなかったが、


「名前は正しいが、私は最強の戦士ではない。名乗ったこともないし、私よりも強い戦士なんてそれこそどこにでもいるぞ?」


 まさかの謙遜だった。

 いや、ここまで傍若無人な振る舞いをしておきながらどうしてそんなとこで遠慮するのか、本気でわからない。

 父親がまるで理解できないと頭を抱えたくなっていると、

 

「なんと…」


 なぜか、最も理解できないタイミングで全く関係ないやつが本当に意味のわからない感動を覚えている場面を見てしまった。いや、マジで意味がわからない。なんでそんな表情浮かべてんだこのおっさん。

 麻呂ニはどこか浮かれているかのような雰囲気を出しながらアグニルを見ている。いや、ほんと、なんていうか雰囲気がマジでキモいのだ。

 

「ふむ、素晴らしい心意気である。謝罪しよう。確かに、ワシは寝たふりをしておった」


 いや、どういう謝罪だよ。

 もう場の空気に乗るのが面倒になって黙っていることにした。

 しかし、堂々とした態度である。主張している内容には一切共感できないが、まぁ、ここまで開き直ると受け入れてもいいかと思ってしまうんだから不思議だ。…いや、もう、ほんと、なんの話をしてるんだっけ?

 

「ああ、わかった謝罪を受けいれよう」


 半ば予想通りの展開。

 だが、


「ただ、これからみんな世話になるんだ。この件は水に流そうじゃないか」

 

 その先を予測するのを怠ってしまった。

 そうだ、こいつは何を言い出すのかわからないのだ。そんなやつにべらべら喋らせたこと自体がバカすぎる。


 

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