大和とは 八
「あいつとの約束でね。この村に関わってる連中には手を出せなかったんだ。だから見逃してたけれど、でも、こんなことしでかしたんだ。これまでの自分の行いを省みるといいんじゃにゃいかなー」
ばちりと火花が散った。
もちろん錯覚だ。
けれど、目の前で怪獣同士が今か今かとゴングが鳴らすのを焦らし合っている事実は変わらない。
いや、ほんと、どうしてこうなった。
強烈な気のぶつかり合いのせいでまるで生きた心地がしない。長老ですら刺激しないように黙っているし、麻呂ニは白目剥いているし。この場で最弱のおれにできることなんて何もない。
ただ沈黙しているしかできない状況ってのは、どうしてこう辛いのか。冷や汗が全身から吹き出して、ただ事の成り行きを見守りたくなってきた。
もちろん、そんなわけにはいかないのだが。
「それは言いがかりですね。私はあくまでこの村の戦士を育てていただけです。魔獣だって狩の仕方を子供に教えるでしょう? 大切な儀式を貶すのはあなた方にとっても許せない行為なのでは? 遥か太鼓の昔から生きているあなた方にとっては」
「それにも限度がある。七年でよくも殺しに殺したり。同胞を失う思いをお前にも味合わせてやるさ」
キャラ作りだったんだな、あの喋り方。
ヒートアップしていく場の雰囲気に飲み込まれないよう思考が明後日の方向に向いている。現実逃避している自覚はあるが真正面から受け止めるには重すぎる。
いや、ほんとどうすればいいんだこれ。
下手に横槍入れておっぱじまったらそれこそ収集がつかない。
けれどこのまま待っていても開戦は待ったなし。どっちに転んでも大惨事は目に見えている。
だったら前に進むべきだ。
反射的に浮かんだ思考のまま、睨み合う二人の前に進み出ようとして。
巨大な岩が目の前をものすごい速度で通り過ぎていった。
「おーい」
能天気な声が聞こえた。
気の抜けた雰囲気なのに、なぜかいやにはっきりと聞き取れる。おそらくは魔力が込められているのだ。だから、米粒ほどにしか見えない存在からの声が聞こえているのだ。
だが、今大事なのはそんなことじゃない。
最も大事なのは、目の前を巨大な岩がものすごい速度で通過する瞬間まで誰一人反応できなかった点にある。
「そこまでにしてくれ。今はそんなことをしている場合じゃないんだ」
声がよりクリアに響く。
この場にいる全員が、いや、気絶している麻呂ニ以外の誰もが知っている。
突然横槍を入れても誰にも邪魔できない存在。少なくとも暴力が場を支配している状況においては絶対の存在がいる。
おれは安堵して座り込んだ。
いい加減、とんでもない状況の連続で参っていたらしい。けれど、これでようやく気を抜くことが出来た。
「聞こえているか? 聞こえているならそのまま降りてくれ。あと3秒で来れなければ撃ち落とすぞ」
脅しでもなんでもない。
淡々とした事実として告げる最終通告がこの状況の終わらせたのだった。
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