大和とは 六
「んん? おー、にゃんだ、もう出てきちゃったのかー」
風圧。
船の外に出たと思ったと同時に目の前に肉球が現れた。巨大な戦艦をぶっ飛ばす一撃が炸裂寸前だった事実になんとも言えない気分になった。いや、修行中にも何度もぶっ飛ばされたせいで耐性がついているだけなんだが、麻呂ニは完全に気を失っていた。長老ですら目を剥いて全身を硬直させている。
「…相変わらずですな、バステト殿」
「ちみは相変わらず堅物だにゃー。昔みたいにバスにゃんと呼んでくれたまえ」
「そんな風に呼んだことはありません」
「だからちみはダメにゃんだってばー」
ゆるいやりとりなのに緊迫感がまるで薄れない。
相変わらずのバスにゃんだったが、彼女が何をしたのかがはっきりと見てとれたからだ。
天照。
麻呂ニがそう呼んだ船から無数の黒煙が上がっている。流線型だった船体には大穴がいくつか空き、そこから大きな炎が轟々と燃え盛っていた。
その強さは骨身に染みて理解していたつもりだったが、まだまだ認識が甘かったらしい。圧倒的なまでの攻撃力を見せつけられたのだ。
「なんなんですか、この黒猫」
なぜか、伊藤咲奈はおれの背後に隠れている。しかも、袖を引きながらどこか恐れを含んだ声音で言った。
実に珍しい。
流石にあれだけの戦力差を見せつけられて怯んだんだろうか。横目で伊藤咲奈を見て、さらに驚いた。顔面が強張り、真っ青になっていたからだ。
猫アレルギー?
前世でよく稀に耳にする事柄を思い出した。
「おれの師匠」
「はじめてあなたを尊敬します。まさか、猫を先生にするなんて」
皮肉なのかどうなのかも判別がつかない。
それほど狼狽している様子だったのだ。ただ猫が苦手だとか戦艦をぶっ飛ばす猫が怖いだとかではないだろう。
どうやら、バスにゃん自体が恐ろしくて仕方ない様子である。
いや、そりゃ戦艦ぶっとばす系猫が怖くないか怖いかで言えば、絶対怖いんだろうけれども。
「で? これはどういう状況にゃ?」
バスにゃんがおれに視線を向けている。
どうやら長老ではなく、おれに状況説明をさせたいらしい。いや、違うか。これからどうするかを求めているらしかった。
まぁ、確かに状況説明自体に意味はないのは間違いない。
村がメチャクチャになってよくわからない集団がそこかしこで動き回っている。ましてや建物を解体したり、土を掘り返したり。なによりこんな馬鹿でかい戦艦が上空で我が物顔でいるのだ。それこそ、そいつが原因だって思うはずである。
うん、バスにゃんの状況判断は間違っていない。
けれど、ここで強引にことを進めるのは良くない。
だから、
「とりあえず、飯でも食いません?」
そう言った。
さっき食ったのにまた食う。
けれど、一旦冷静になる時間が必要だと思ったのだ。
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