大和とは 四
「あいや、救うという言葉は正しくない。償うという言葉が正しい。此度の襲撃はそれだけの傷跡を残す所業であった。シブサワは本気でこの集落を滅ぼそうと画策していたのだ。それだけのことをしてでも滅ぼす価値を見出した、という見方もできるかの」
「おれのせいだって言いてえんだろ」
「ほほ、何もそういうことを言いたいのではない。問題はそれだけの価値をシブサワめが見出したという事実じゃ。今後、その事実がお主に付き纏うことになる」
「どういう意味だ?」
周りくどい言い方に苛立ちが募る。
どうにもこのおっさんとおれは相性が悪いらしい。
おれが感じているということは向こうもそう感じているはずだ。けれど、おっさんは態度出すことなく笑みすら浮かべている。
「此度の襲撃、全て他国にも知れ渡っておる」
ん?
言っている意味はわかるがここでそんなことを言う意味がわからない。だからどうしたと言いたい衝動を我慢して言葉の意味を改めて考える。
うん、やっぱりわからない。
「どうやら意味がわかっていないようでおじゃるな。よろしい。つまりはこの村がそれだけ恨みを買っているということじゃ」
「恨み?」
「妬み嫉み、恐れ。言葉はなんでもいい。最強の戦士の村。それも傭兵なんて阿漕な商売を生業としておれば相応の代償はつきもの。そこに此度の襲撃により集落が弱ってしまった。その上、それだけの襲撃を受けた原因が齢七つの幼児というのであれば」
「黙れぃっ!」
怒号。
長老は顔を真っ赤にしてしている。鬼の形相がさらに深く刻まれ、殺気を隠そうともしていない。その反応が嬉しかった。けれど、喜ぶ気分には到底なれなかった。
つまり、それだけこの集落が危険な状況であることがわかったからだ。
「ワシが一人でここまできた理由の一つでもある。他の大和の面々は他国からの侵攻軍を食い止めておるのだ。周辺国どころか大陸からも刺客がきておるそうだ。よくもここまで世界を動かしたものだ」
「それもシブサワめの仕業ではないかっ!」
「左様。だからこそ、ワシらは支援を惜しまぬ。此度の襲撃が呼水となり、世界大戦が起こる事態は避けねばならんのだ。だからこそ、ワシらの支援を受け入れてほしい。でなければ、一つの集落を世界が滅ぼすというあってはならん前例が生まれてしまう」
意味がわからない。
いや、言っていること自体はわかるのに明らかに壮大になりすぎている。正直ついていけなかった。なのに、長老の雰囲気は限りなく真剣そのもので。
眼下の光景を見る。
こうして時間が過ぎるだけで、みるみる故郷の風景が変わっていく。汚染だかなんだか知らないがここまでのことをしなければならないと言われて納得できるはずもなかった。けれど、それ以上に物資の搬入や治療をしている光景まで見えてしまう。だからこそ、強い拒絶が出来ない。
自分だけであればいくらでも拒絶できる。けれど、村のことを考えるとそれも出来ない。
必要なのは、この状況を一発でひっくり返す強烈な何かがあれば。
そんな俺の願いが通じたのかはわからない。
けれど、
「あ」
見えた。
この状況を一発でひっくり返す何かが飛んでくるのが。
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