大和とは 三
「なぜ、大地を掘っている?」
眼下の光景をただ呆けて見ているだけのおれとは違い、長老は何が起きているのかをしっかりと見定めていたらしい。放たれた言葉にはゾッとするほどの怒気を感じる。視線を向ければ、長老の形相はまさしく鬼のそれに変わっていた。
「ああ。あれは土壌がスキルによって汚染されてしまったからじゃな。…うむ、その点についても説明せねばならんか」
「汚染ってことは、毒か何かを撒いたってことですかっ?」
「毒、と言っていいじゃろうな。だからこそ、ワシ自ら出張ってきたのである」
否定しなかったことに愕然とした。
てっきりお為ごかしの何かをいうかと思っていたが、肯定するとは思わなかった。掘り進めているのは一箇所だけじゃない。少なくとも半分近くが土をひっくり返されているのが実際に見て取れるのだ。
「貴様…っ! はじめからこれが狙いかっ!」
「どのようなことを言われようとも言い訳はできん。しかし、現実としてそのような手段を用いられたのは間違いない。だからこそ、我らはどのような要求であろうとも受け入れる覚悟でおじゃる。それだけのことをしたとワシら自身が理解しておるのだ」
長老の殺気の前に不二和原はまったく動揺しなかった。
性質が悪い冗談みたいな話だった。
長老がその気になれば、この船ごとこの男を全力でぶち殺していたはずだ。それだけの戦力を長老は保有していたし、実行できるだけの条件は全て揃っていたのだ。
ただ一つ。
不二和原麻呂二が丸腰で対面している状況を除けば。
本当に腹がたつ。この男はこんな胡散臭い雰囲気を醸し出しながら、誠実さを全面に出していると訴えているのだ。
その事実が殺したいほどに腹立たしい。
この場におれがいる時点で長老は手を出すことは出来ないことも十分に理解しているのだ。
七歳児。というか、集落の誰かがいる時点で長老としての判断を強いられている。この集落を生かすための選択肢を選ばされているのだ。
「お前、マジでふざけんなよ…っ!」
そこまで思考して反射的に声を張り上げた。
いや、だって、そうしなければ、このまま丸め込まれるしかない状況を理解出来たのだ。長老には立場がある。ここで全ての流れを無視してこの男に反発すればどうなるかを全て理解しているはずだ。
だからこそ、おれが否を唱えなければならない。
こんな道理を超えた理不尽を押し付けた相手に対して正当な言い分を言えるのは俺しかいないのだ。この村での異端児。なにより、大和との関係性もある人材。
ここまで手のひらで動かされていると思おうが、思うからこそ。
全力でブチギレ散らかすしかないと思った。
「このクソお歯黒野郎っ…! お前、てめえらがやらかしたことを恩着せがましく復興したとか言おうとしやがったってことかっ? なんだよ、汚染ってお前どう考えてもてめえらで責任を負うべきことだろうがっ!」
我ながら、叫ぶ内容に不備はない。
だからこそ、
「だから、お主らを救うのは当たり前のことなのじゃ」
その言葉自体が欺瞞に満ち溢れた言葉でしかなかった。
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