大和とは
「さて、腹越しらえをしたところで話し合いといこうかの。此度の件に関して大和は全面的に非を認め、無償の支援を提供する用意がある。インフラ、田畑、作付け、医療、物資。全てそちらの要望に応えよう」
尊大な口調が鼻につくが、言葉通りの行動をされては何もいえない。
虫型ロボットは次々と物資を集落に下ろし、インフラ整備を始めている。こちらの応諾を得ないまま進めているのは問題だが、実際に必要なことだと誰もがわかっているので文句もいえない。
しかも、これだけめちゃくちゃになった集落に食糧まで用意してくれる手際の良さ。なにより、無償で提供という点がずるすぎた。
おれだって、懐かしい故郷の味とやらを味わったせいでどんな態度をしていればいいのかもわからないのだ。
やっぱおにぎりはうまい。ウインナーが肝だ。
「なぜ、ここまでの支援を? 伊藤咲奈の話ではあくまでシブサワの一派の暴走だと伺っておりましたが?」
長老が珍しく硬い言葉遣いをしている。
まちがいなく警戒心マックスな上、無償の善意に困惑している証拠だ。表情こそ平静を装っているが、雰囲気が普段とまるで違う。
この支援を拒絶することは出来ない。それだけ集落が受けたダメージは大きいし、倉庫だっていくつか焼き払われているのを見た。これからのことを考えれば物資の供給がどれだけ重要なのか痛いほどわかっているんだろう。
この場にいる全員がそれを理解しているからこそ、この男はここまで尊大な態度をとっているのではないか。
不二和良麻呂二。
麻呂二と書いてマロニーと読むとかわざわざ同郷のおれに教えたあたり、この男は油断ならない。事の経緯を聞いているのだから当然かもしれないが、見た目七歳児のおれをこんな重大な会談に同席させている点もある種手のひらの上に乗せられている感がある。
ここは長老の屋敷ではなく、救済艦『天照』の内部だ。おれと長老は麻呂二に誘われるまま、上空にサルベージ(?)されたのである。内装からして応接間のような雰囲気があるが実際のところはわからない。内部の構造に関しても探ることすら許されなかった。
ちなみに、伊藤咲奈もドヤ顔のまま同席していた。
「なにを申すのです。暴走とはいえども、シブサワは大和一派。その被害に遭われた貴殿らを放置することなど出来ようはずがない。この支援は我ら大和が貴殿らとの交渉の場に着くための前提としての行為。この村落の復興のためには決して力を惜しまないでおじゃ!」
おじゃ! って言われても。
どうやら素でおじゃとかいう人種らしい。いや、同じ時代の同郷かと思ったがどうにも違うような気がしてきた。というか違ってほしい。
こんな面白人間とこんな真面目な話をするという時点で頭がバグっているが、それ以上におにぎりがやばい。これはまちがいなく。
「ただひとつだけお願いがあって」
なぜか、麻呂ニは愛想笑いを浮かべて、
「この、米の栽培を行ってほしい。我らが祖国の味ゆえこの世界にも普及したいのじゃ」
そんなことを言った。
そう、このおにぎりは明らかに白米だ。おれの世界で食っていた米。その風味や味わいにおれは意識の大半を割かれていたのである。
おにぎりうめえ。
五個目のおにぎりを頬張りながら、おれはただただ至福を味わっていた。
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