真実とは作られるもの 七
「ちょっと待ってください。黙って聞いてれば、随分と物騒な話になっていませんか? 暴発したのは一部だけ。それもシブサワの一派だけのはずですが?」
張り詰めた雰囲気に水を差すように伊藤咲奈が言った。
この状況をつまらなそうに静観しているだけだったくせに、要所となるときちんと動くのはさすがである。
けれど、よくこのタイミングを選んだもんだ。
鬼の形相をしたタカムラと長老の視線を受けながらも伊藤咲奈は堂々としている。
「関係ない。これだけの規模で戦争を仕掛けたきた事実は変わらん。そもそもシブサワ自身が組織の顔ではないのか?」
「冗談言わないでください。あの男は確かに高い地位にいますが組織の代表ではありません。あくまで金庫番です。今回のことはあの男の独断によるものです。証拠に、今回の襲撃には純粋な戦闘員がほとんどいませんでしたし、私には何も知らされていませんから」
伊藤咲奈の言葉は筋が通っていた。
タカムラにトドメを刺したのは彼女だったし、彼女自身も襲撃を受けたことは聞いている。なにより、シブサワには融資のスキルで他人を操る能力がある。
ただし、金庫番か。
その地位にいるということは一組織の資金の運用を任されているということである。
下手をすれば、融資のスキルを応用して組織を乗っ取ることだって出来るはずだ。組織のボスが誰なのかわからないし、詳しい組織図もわからないがそういうのを飛び越えることが出来るのが金の繋がりなのである。
「そもそも、お主の立場自体がワシらにはよくわからんでな。てっきり下っ端の一人だと思っていたが」
「ええ、下っ端ですよ。ただし、シブサワを監視及び告発する権限を与えられていますがね」
「…どういうことだ、サクナ?」
タカムラが反応した。
いや、おれだって流石に今の言葉は聞き捨てならない。監視、告発? ここまでの話し合いが無意味になりかねない情報を無視はできなかった。
というか、呼び捨てする間柄だったのか。その点はどうでもいいものの、関係性だけは記憶しておくことにした。
「そのままの意味です。それだけ、シブサワの行動が目に余ったということですよ。金銭の貸与により支配するやり口に気づいていなかったとでも? 上層部ではとっくの昔にあの男の危険性を見抜いていたんですよ。私以外にも同じ権限を持った者が各地に派遣されているんですよ」
驚愕の事実。
伊藤咲奈がこの村に留まっていたのはおれを監視するためだけではなかったらしい。はじめからシブサワとの関係が濃い村だからとマークしていたようだ。
しかも、同じスキルを持った人間がいるとなってそのまま滞在することにしたらしい。
「ですから、今回の件を以って大和はシブサワを追放するはずです。もちろん大和としても償いのために復興の支援も行なっていくはずです。詳しいことは私自身がこれから大和と交渉しますので」
「なので、あくまで怨嗟はシブサワへ。これからも良き関係を維持するために、私が粉骨砕身取り組んで参ります」
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