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真実とは作られるもの 三


 おかしい。

 おれの予想とはまるで違う反応に頭を抱えたくなった。

 男は漫画や映画で見たうつ病患者みたい膝を抱えて、死にそうな顔をしている。リファイナンスをして法外な利息から解放したってのにちっとも嬉しそうじゃない。いや、もちろん感謝されたいなんて毛頭思ってなかったからその点に関して問題はないんだが、ないんだが、もっとこう、あれじゃないだろうか。


 絶対に殺してやる、とかなんとか。


「死にたい」


 もう何度目かもわからない呟きに、場の雰囲気がさらに困惑した。

 周囲の視線が痛い。

 今更ながら、現状を再度確認することにした。


 ここは長老の家にある広間だ。

 今回の襲撃でも屋敷自体は特に損傷もなく、内部にも遺体もなかったためそのまま生き残った者達の拠り所となっている。といっても、戦士達は集落の外縁で警備についているので高齢者や年少の子供達がほとんどだ。

 だから、その視線には力がある。

 自制心がまだ未熟で生の感情がそのままぶつけられているような錯覚を覚えるのだ。なにより、今のおれと同年代からの目がきつい。


 裏切り者、とその表情までが物語っているような気がするのだ。


 それも当然だ。なにせ、彼らの家族だって大勢死んでいるのだから。


「そんなに死にたいのなら楽にしてやろうかの」


「ちょっと待ってください。それじゃ、何にもならないじゃないですか」


 死刑宣告に慌てて反論する。

 いや、ほんと、なんでこんなことになっちまったのか。

 本当なら、シブサワの呪縛に解放されたこのおっさんを村の外なりなんなりに逃す予定だったのだ。あれだけの戦闘能力を持っている男だ。いくらこの村の戦士でも逃げ切れると思っていた。

 というか、襲撃に遭った直後であれば逃げるチャンス自体は十分にあったのである。なのに、この男は死にたいと呟くだけで動かなくなってしまった。

 そのまま村のメンツが揃ってジエンド。

 母もこの状況で助け舟を出すつもりはないらしく、ただ静観しているだけだ。おれに任せてくれと言った言葉を尊重してくれているようだが、困っている現状を見てとって手伝ってくれたっていいだろうに。

 恨み言の一つも言いたくなったが、そんなことを考えている場合じゃないと思考を切り替える。

 とにかく、目の前の長老をなんとかしなければ。

 

「ワシは村の衆を逃すのに手一杯じゃった」


「それはさっきも聞きました」


「何度でも言うさ。その判断を悔いてもおらんし、この場にいる者達が生きていることを喜ばしく思う」



「しかしな。それとは別に腑も煮えくり返っておる。こんな真似をした奴輩に地獄を見せねばならんとな」


 冷静な言葉だから重い。

 普段の長老からは考えられないほどの激情を感じ、おれはどうしてこなったんだと逃げ出したくなった。

 せめて、この男が奮い立ってくれれば弁明だってできるのに。

 おれはどうしてかこんな孤独な状況になってしまったのかを嘆きたくなった。


 ほんとに、どうしてこうなった。

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