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真実とは作られるもの 二


「何を考えておるんじゃ、トール。今すぐその男を引き渡せ」


 普段通りの穏やかな声に有無を言わさぬ響きがあった。

 予想できたことだ。

 周囲からは敵意と困惑の視線。場の雰囲気はさまざまな感情が混ざり合って重いのか軽いのかもよくわからないことになっていた。

 集落の住人を殺戮した大罪人。

 その生き残りが目の前にいるのだ。それこそ袋叩きにしなければ気が済まないだろうし、生きていること自体が許せないという心情になるのは間違いない。

 なにより、それを匿っているのは集落に受け入れたとはいえ繋がりの薄い孤児だ。それこそ村八分どころか、孤児もまとめて厄介事を片付けるなんて話になってもおかしくないだろうなと思った。

 そこまでの空気になってはいないが、危うさはある。困惑に満ちた視線が敵意に変われば、その時点でおれは集落の一員ではなくなるのだ。

 

「だめです。さっきも言った通り、この男も含めた大和の人間は操られているのが大半でした。既にお互いがお互いで血を流し尽くした。これ以上、血を流す必要はないと思います」


 我ながら白々しい言葉だと思った。

 けれど、これも偽りのない本心だった。

 既に被害状況も、相手に対する損害についても把握できる状況へとなっている。集落で命を落としたのは三十三名。襲撃を行った大和側に関してはその倍の六十六名が亡くなっている。

 双方合わせて百名近くの命が失われたのだ。

 これ以上の犠牲は集落の存続にも関わるだろうし、大和側ですら組織の滅亡につながるはずだ。

 だから、ここで手打ちにする必要がある。

 

 少なくとも、首謀者の首一つで終わらせる必要があるのだ。


「操られていたと言ったが、首謀者はわかっておるのか?」


「ええ。大和のシブサワという男です」


 ざわっと周囲が騒々しくなった。

 これにはおれの方が驚いた。

 どうやらこの名前に心当たりがあるらしい。


「…知ってるんですか?」


「はじめにこの村に訪れたのがあいつじゃ。そこからワシらと大和の付き合いは始まった」


「はぁっ?」

 

 さらに驚いた。

 というか、だからこの村の襲撃がスムーズにやられたんじゃなかろうか。というか、はじめにこの村に来たってことは随分昔の話ということだろうか。

 驚愕と困惑のせいで思考が単調になっている。今大事なのはそこじゃない。既に多数の死者が出ており、このまま泥沼の抗争へ陥らせないためにも犠牲者の連鎖を止める必要がある。


「とにかく、そのシブサワに落とし前をつけさせましょう。でなければ、大和の戦争になりかねない。全てはシブサワが起こしたことなんですから」


「なにより、おれはあいつが大和の人間を操った方法も知ってる。その解除法も身につけました。その証拠がこの男なんです」


 そう言って、おれはタカムラと名乗った男を指した。


「…死にたい」


 ぽつり、と一言。

 うん、どうしよっかな、これ。

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