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真実 続々続々々


「…なんだと?」


 意識が飛ぶかと思ったが、そうではなかった。

 男は正気を保ったまま、強烈な目でおれを睨みつけてきた。今までの茫洋とした雰囲気はどこへやら。ひしゃげた顔面から凄みが溢れ、気を抜けばそのまま噛み殺されるなんじゃないかとありえない妄想が脳裏に過ぎった。

 こういうのは大丈夫らしい。

 なんでだろうと思考しようとしてやめた。なんとなくわかったからだ。

 この怒りはこの男が自分自身に対して感じている怒りだ。悔しさは恨みつらみとはまた違う。見た目七歳児のおれに対して怒りが湧き上がることもあるかもしれないが、それだけでここまでの凄みを発揮するとは思えなかった。

 

 男が本気で怒るのは自分の不甲斐なさか女を寝取られた時くらいだ。

 

 その両方の要素が絡まっているからこそ、シブサワの支配に対して辛うじてエラーを生み出しているんじゃなかろうか。

 いや、そんなことですらどうでもいい。せっかく火が灯ったのだ。それを煽らなくてどうするってんだ。


「悔しくねえのかって言ってんだよ。嫁と娘も取られて、ドブ攫いやらされて、挙句にどこのどいつかもわからねえ連中と殺し合いをやらされて、その上負けちまった。いいとこ何にもねえじゃん」


「…返す言葉もねえな」


 言いすぎた、とは思わなかった。

 怒りが萎むとも思えなかったからだ。自分に対する失望、諦観ってのは厄介だ。どれだけ失望しようとも、諦観を覚えようともいくらだって火は灯る。生きている間、ずっとそれが続くのだ。そういう経験は大なり小なり誰にだってある。失望から目を背けるか、諦観を受け止めるか。この男はただ囚われているだけ。


 それからの解放こそが、おそらくはシブサワに対するもっとも有効な対応手段となるはずである。

 

「だったらもう逃げるのはやめようぜ。くだらねえことに巻き込まれるのも、嫁と娘がどっか行っちまったのも全部運が悪かっただけだ。でも取り返す方法もある。それをおれが準備してやる。だから、おれに任せてくれ」


「だから、お前から借り直せってか? おれとまだ会ったばかりでお互いのこともよく知らないのに? おれとシブサワにだってそれなりの付き合いはあった」



「たかだか金で奴隷になる付き合いがか? ダチだったら金なんてもんは貸すんじゃなくてくれてやるもんだろ? そうじゃなきゃ用立てすること自体がダチを馬鹿にしてるようなもんだ。あんた、本気でコケにされてんだぜ?」


 知人だろうが友人だろうが一人の人間としての関係で金の貸し借りをするやつは本物の馬鹿か相手を支配したいサイコパスくらいだろう。ダチに金を貸すならくれてやる気じゃなきゃダメだ。

 男として最低限の矜持、あるいは人として当たり前すぎることだろう。

 頼まれたから貸してやった? その一言がどれだけてめえの愚劣さを物語っているのかわかってやがるんだろうか。

 おれの言葉に今度こそ男は言葉を失ったようだ。

 何かを言おうとして何も言えない。

 ひしゃげた顔面から僅かに血が溢れた。

 傷口が開いたのか、それとも別の何かだったのか。

 それを考える前に、


「もう、疲れた」


 男は僅かに頷いた。

 見間違いじゃない。

 男は確かに、おれの言葉に同意したのだ。

 証拠に、感覚的なものであったが確かにスキルの発動条件を満たしたのを感じた。あとは、粛々とすべきことをするだけである。


 リファイナンス。

 

 つまり、借金の借り換えである。 


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