真実 続々続々
「いや、なんでお前に任せなきゃなんねんだよ」
小馬鹿にするような態度で男は言った。
そりゃそうだ。おれだって、別にこの男の事情を詳しくは知らない。もしかすれば概略ですらまだまだ知らない部分はあるだろう。それでも、シブサワへの対抗策としてどうしても検証しなければならないのだ。
支配からの脱却を。
それに、この男の戦闘力は本物だ。どうにもモチベーション自体はなかったようだが、遠距離攻撃が出来るスキルはそれだけで脅威である。このまま殺すのは実に惜しい。
諸々の理由は頭の中に浮かんでいるので、おれは男の態度を無視して言葉を続けた。
「このままでいいのかよ。利用して切り捨てられて。さっきの口ぶりじゃ、嫁と娘は生きているんだろ? なのに、ここで死んでもいいってのはおかしい。シブサワに寝取られでもしたか?」
「…はっ。それこそお前には関係ねえだろうが」
まじかよ、シブサワってのは本物の腐れ外道らしい。
男の態度で地雷を踏んでしまったことに気づいたが、この状況ならありだと判断する。地雷を踏み抜いたおれに対して怒りすら湧いてこないのは明らかにおかしい。
男は疲れたような表情を浮かべるだけ。それが全てを物語っている。
「確かに関係ねえ。けど、気に食わねえんだよ。借金は稼いだ金で返すべきだ。それをカタにして奴隷みたいに扱うなんてことあっちゃならなねえんだ。だから、おれがあんたを救けるのはそれが理由だよ」
本心だ。
ここでおためごかしや言い訳染みたことを言う必要はない。ただおれ自身の思いをまっすぐに伝えるだけでいいのだ。
「ああ、なるほど。シブサワへの対応策ってことか。…なら、おれもあいつのスキルでやらちまってるってわけだ。そりゃそうか。我ながら、随分とひでえことしかしてこなかったしな。よくも殺したもんだよ」
「…なんでそんなに軽いんだ、お前。ふざけるなよ」
ここまで黙っていたアスラが我慢できなくなったのか横槍を入れてきた。
いや、言いたいことはわかる。
怒りを覚えるのも当たり前の話だ。けれど、正気でない人間に感情をぶつけてもなんの意味もない。まして、償いをさせるなんてことも出来やしないのだ。
おれは視線とジェスチャーだけでアスラを止めた。不満たらたらの表情だったが、それでもそれ以上の言葉を続けることはしなかった。
「あんたの言う通りだ。おれはシブサワへの対抗策が欲しい。あんたをシブサワの借金から救うことができれば、それだけで手出しできなくなるからな」
「それを聞いて、なんでおれがお前に手を貸すとおもってんだ?」
「悔しくねえのかよ?」
一言。
おれはより深く男を抉ることにした。
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