伊藤咲奈:スキル
「あ、透さん! お久しぶりです!」
シーナさんに抱かれて外に出ると、聞き覚えのある声が聞こえた。
声の方へ視線を向ける。ついこの間まで体の自由がまるで効かなかったが、今は首を傾けることくらいはできるようになった。果たして、そこには想像通りの人物がいた。
伊藤咲奈さん。
数ヶ月ぶりの再会だったが相変わらず元気な人だ。見ているこちらまで元気になるような気がする。咲奈さんは駆け寄ってくるとなぜかおれをじいっと見つめてきた。
「うわ、おっきくなってる! かわいーっ!」
「あはは、ありがとうございます」
相変わらずの騒がしさ。
目を輝かせながら褒められるのは正直苦手だった。なんというか犬や猫になったような気分になるのだ。シーナさんから褒められるのとはまた違った感覚である。
「あの、咲奈さんはどうしてここに?」
「あ、ごめんなさい。えっと、私も祝福の儀に参加させていただくことになったんだ」
「え? 咲奈さんもですか」
「うん。あ、もちろん主役じゃないよ。傍で見学させていただくの」
詳しく聞けば、おれが異世界人だということで彼女も同席することになったのだという。なぜなら彼女自身も、以前この村で儀式を受けたからだそうだ。
「じゃあ、咲奈さんもスキルを?」
「うん。私の場合はこれだね」
そう言って咲奈さんはスマホのようなものを取り出した。
いや、ちょっと待った。
「え、咲奈さん、これは」
「あ、これも初めて見せますよね。これ、ギルドが作ったんです。通信もできますし、なにより」
咲奈さんが画面を何度かタップした。
すると、
「鑑定が出来るんです」
画面が空中に映し出された。
まるでARのようだ。映し出されているのはゲームでいうステータス画面のように見えた。咲奈さんの顔写真と一緒にいくつかの項目と数字が浮かんでいる。…が、読めない。モザイクがかったみたいに不鮮明で思わず目を凝らしてしまった。
「あー、だめだよ。そこはプライベートだから見えないの」
めっと叱られた。
…いや、見せたのはそっちだろ的なことは言わない方が無難だろう。別に彼女自身怒っているような雰囲気もなかったが、このノリについていくのはおじさんにはつらい。
どうでもいいがノリという言葉自体時代遅れな気がするのは、おれだけなんだろうか。いや、昔から使って馴染み深いんでこのまま使っていくつもりだけれども。
「ごめんなさい?」
「よろしい。で、と。ここをこうして」
咲奈さんはおれの適当な謝罪に満足したようでまた画面をタップし始めた。
その度に画面が鮮明になっていく。
けれど具体的な数値や項目名は不鮮明なままだ。プライベートというのは守秘事項というか秘密にしたいという意味だったんだなとそこで理解した。
「で、これが私のスキル。ここに書いてあるでしょ?」
モザイク加工が消え、文字が読み取れるようになった。
日本語。
まぁ、日本人ギルドが作ったのだから当然なのだが、
「ファンタジスタ?」
そこに書かれていたのは意外なことだった。
「かっこいいでしょう?」
得意満面な笑みを浮かべる咲奈さん。
いや、実際。おれの世代でサッカーをやっていたなら誰もが憧れる称号なのであった。
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