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真実とは


「黙ってるってことは正しいってことなんですね」

 

 続くおれの言葉にも男は沈黙を貫いた。

 どうやら本当に契約で今回の襲撃については話せないようだった。けれど、事実確認においては十分に可能である。それだけでもこの男には利用価値があることを証明していた。


「でも、どうして今なんですか? いくらでも襲うタイミングはあったでしょう。何がシブサワさんを怒らせたんですか?」


「さぁな。そこはおれもおかしいとは思っていた。あいつは用意周到で慎重に慎重を重ねたみたいなクソ野郎だが、今回の件は突然過ぎた。その分人員に関しては制限もなかった、はずなんだがな」


 人員?

 ここにいるのはこの男一人だけだ。多分、父と母、そして伊藤咲奈に人員を集中させたのだろう。伊藤咲奈はここにいるし、父と母なら大丈夫だろう。世界最強の戦士だし、身内がなんの心配もしていない時点で問題ないはずだ。

 

「ここまでボロ負けしちまったんだ。あいつもブチギレてんだろうさ」


「ボロ負け?」


「おれは人より目が良いいんだ。全員やられちまったみたいだな。お前の両親、どっちもヤバ過ぎだろ」

 

 どんっと鈍い音がした。

 何かが地面に落下した音。

 無意識に視線を向ければ黒ずみになったなにかが落ちていた。

 それが、人間であることをなぜかすぐに理解した。

 

 同時に、スキルを発動した。


「アスラっ!」

 

 雷鳴が轟いた。

 全身を貫くような轟音に肉体が強張った。

 それでも間に合った。

 

 直撃するはずだった雷撃から男を救い出すことに成功したのだから。


「どういうことだい、トール?」


 降ってくる言葉は聞き慣れたそれとはまるで違っていた。普段であれば何気ない、当たり前の言葉だったのに、全身からが血の気が引くほどの怒気が込められている。

 降り注がれる視線には物理的な効果があるかのような錯覚を覚えたし、そもそもこの場から逃げ出したくなっていた。いや、逃げても無駄なのを理解していたと言った方がいいのかもしれない。

 それでも真正面から見つめなければならなかった。

 

 ここで目を逸らせば男は死ぬ。

 

 なにより、母親と真正面から対峙できない息子ほど情けない存在はいないだろう。

 

「シーナ母さん」


 雷雲が空をあっという間に覆ってしまった。

 強風が吹き荒れ、稲光と雷鳴が空気を一層張り詰めたものへと変えていく。

 その中心にはおれのよく知る人物。

 この七年間、一度も反抗しようと思えなかった存在がいるのだ。

 伊藤咲奈なんてもう関係ない。

 もはや、この場の決定権は彼女に握られてしまった。


「もう一度言う。何をしているんだい、トール?」


 うん、だめだ。

 これはおれの話を聞かない時のパターンだ。普段ならおしりぺんぺんで済むかもしれないが、今回ばかりはどうしようもなさそうだった。

 


 

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