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幼年期の終わり 終


「意味がわかりません」


 言葉は端的に。

 反論の余地はないと明確な意思を込めた一撃が、おれのすぐ傍に叩き下ろされた。

 衝撃。

 巨大な何かが振り下ろされたかのような錯覚を覚えたが、何も見えなかった。けれど、すぐ脇の地面に穴が空いている。

 踵落とし、だろうか。

 けれど、正面に立っていたのに伊藤咲奈が動いたことに気づくことすらできなかった。多分、おれが瞬きをした瞬間に全て終わらせたんだろう。フィジカルゴリラの彼女にとっては不可能じゃないはずだ。そもそも蹴り上げた足を使って空を飛ぶとかマジで意味がわからないし、多分そういうことなんだろうなと思うことにした。

 

「どいてください。庇い立てする理由はないはずでしょう?」

 

「ある。こいつには利用価値があるからだ」


「…利用価値?」


「大和の内情を知れる。あんただって気づいているだろ? この襲撃の時点で大和に見限られたって」

 

 我ながら直球すぎる。

 けれど、これくらいはっきり言った方がいいような気がしたのだ。さしもの伊藤咲奈も言葉を失っているようだった。いや、おれの決めつけでしかなかったが心当たりもあるみたいだ。


「事実だ。お前はシブサワのおっさんから見限られた。流石に七年も遊んでたらクビにされんだろ」


「私の上司はあのド腐れジジイではありません」


 男はおれの言葉を肯定し、伊藤咲奈は曖昧に否定した。

 どうやら大和という組織も一枚岩ではないらしい。

 シブサワというのがボスだと思ったが幹部程度の地位にいるのだろうか。伊藤咲奈ですら下っ端だとすれば、大和という組織はおれが思った以上に強力な集団なのかもしれない。…まぁ、チートスキルを持った連中の集団なわけだから当然なのかもしれないが。


「けどな、小僧。俺がお前らに口を割ることはねえぞ? シブサワについてならいくらでもしゃべってやるが、それ以外はなしだ。そういう契約なんでな」


「契約? 借金のせいで言いなりになってるだけでしょう」


「それでも立派な契約だよ。破っちまったら死んじまうんだからな」


 なるほど、そこまで堕ちてやがるのか。

 この男のことじゃない。

 おそらくはおれと同じ融資のスキルを持っているであろうシブサワという男のことだ。やり口から闇金やヤクザの手法に近いが、金を貸し付けている時点で似たようなもんである。

 大事なのは一線を超えないこと。


 それを超えているであろう奴自体の存在を許せるはずもなかった。


 そもそも、シブサワというおっさんがこの村を襲撃した理由もおそらくはそこにあるはずなのだから。 

  

「あの、一つ聞きたいんですけど」


 我ながら声が震えていたかもしれない。

 けれど、聞かなければならないことだった。


「村を襲ったのは、おれを殺すためですか?」


 沈黙。

 突然の質問に男はただ沈黙で答えた。

 困惑しているわけでは当然ない。ただ、その結論に対して馬鹿正直に答えるだけの無神経さは持っていないようだった。

 

 だから、これが明白な答えだ。

 

 この瞬間、おれの幼年期は終わりを告げたのである。

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