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幼年期の終わり 破 再


「…何の真似ですか?」


 うん、怖い。

 こちらを見下ろす視線には一切の容赦がない。というか、本当にあの伊藤咲奈なのか疑わしくなるくらい怖い。胡散臭い笑みが消え、無表情なのに圧が強すぎる。

 この男には敵に対する感情以上の何かがあるのは間違いない。それを土足で踏み込んだのだから当然の反応なのかもしれなかった。

 

「いや、その、なんだ」


 我ながらしどろもどろだ。

 相変わらずというかなんというか、自分の行動が自分でも理解できていないのが主な理由だった。もちろん、目の前にいる伊藤咲奈が怖いのもあるが。

 いや、ほんと、どうしておれはこんなよくわからない真似をしてしまうんだろう。アスラどころか姉二人、イナンナさんやミァハさんまで唖然とした表情を浮かべている。

 

「なんですか?」


 だから圧が強いって。

 けれど、反論できる理屈もないし自分の感情の整理もついていない。

 それでも、ここから退く気にはならなかった。


 金なんか借りなければ良かった。

 

 その一言を聞いて黙っていられるはずがなかった。


「あのー、なんだ。あんた、なんで金を借りたんだ?」


 伊藤咲奈は怖い。怖すぎたので男の方に意識を集中した。

 視線も男の方に向け、完全に伊藤咲奈を無視する形。いや、実際圧が強すぎて無視なんてできてないんだが、それでも無視しているふりをしなければならない。

 でなければ、この場に立った意味がないのだ。


「なんでって」


「ほら、なんか酒飲みすぎたーとか女を買ったーとか賭けに使ったーとかあるじゃん? そういう類で散財しちゃったのかなーってさ。泡銭が雪だるま式に増えちゃったのかなーってのが気になって」


 言葉遣いも聞いている内容も我ながら最悪の態度だ。

 年上に対する礼儀もないし、相手を貶すような内容だったし。そりゃ、村のみんなが殺されたんだこれくらいの態度は許されるはず…いや、そもそもこんな庇う真似をする時点でおかしいだろおれ。

 我ながら後悔したが、


「伝染病だ。嫁も娘も治る見込みがなかったが、大和に治せる奴がいた。そいつに使ったんだ」


 本当にどうしようもないと更に後悔することになった。

 あれだけ怖かったのに、おれは伊藤咲奈を見た。

 否定して欲しかった。

 けれど、なぜか、彼女はそこではじめて圧を消したのだ。

 心底衝撃を受けたような表情を一瞬浮かべ、おれの視線に気づいて表情を消した。ああ、本当に嫌になる。これは彼女にも何か心当たりがあって、その事実を突きつけられた感じなんじゃないだろうか。

 だったら、おれがとる選択肢は一つしかないじゃないか。


「だからと言ってこの凶行が許されるはずもないでしょう。ご安心を遺言は私が」


()()()



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 これは同情じゃない。

 ただ、金のために殺されるなんて馬鹿な真似だけは見逃せなかったのだ。


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