幼年期の終わり 再々再々々
「今度はなんだってんだ…っ!」
光が。
ただただ眩い光がいつまでもそこにあった。瞼越しでも瞳が焼かれそうになって顔を背ける。いつまでも続く閃光を前に、ただただ立ち尽くすしかなかった。
「愚弟! アスラを向かわせろ! 逃げられるぞ!」
ジーナ姉の言葉で若干我に帰ったが、それでも思うようにできない。視覚に真っ直ぐ訴えてくる暴力のせいで意識が集中できなかった。
いや、実際、映画で閃光弾で動けなくなるのを見て不思議に思っていたが、体験することになるとは思ってなかった。
ふと気づく。
おれは《《こんな》》なのに、どうしてジーナ姉は状況を冷静に見ているんだ?
それと同時に他のみんなの気配を知覚した。融資のスキルの副産物。繋がりのある相手の動向を把握できる能力が活きた。
全員が全員、すでに動き出している。
蹲っているのはおれだけだ。
情けなさよりも他に理由があるのを確信した。
目だ。
目を魔力で覆っている。
「くそが…っ!」
当たり前と言えば当たり前の話だ。
いくら生物としての強度が人間と鬼で違うとは言え、こんな強烈な光を当てられて
正常に行動出来るはずがない。そういう状況にも対応する術を持っているだけの話なのだ。
おれには魔力がない。だから、ジンキを目に纏わせた。
うん、眩しい。
けれど、見えるし動ける。
こんな簡単なことに気づかなかった自分が恥ずかしくなった。
「そこかっ」
見つけた。
上空。
男はつまらなそうな表情でおれたちを見下ろしている。
腰をかけたままの姿勢で上昇する姿はどこか滑稽に見える。というか、なんだあれは。あれだ、宇宙人に誘拐される人間そのものの絵面というか、アブダクションだったか? そんな感じのことが起きている。
いや、マジでふざけんなよ…っ!
集落の人間をどんだけ殺したと思ってやがる、そんな安いSF映画みたいな展開許されるわけねえだろうが…っ!
「アスラっ!」
強制執行。
叫ぶのさえもどかしくて全力でスキルを発動する。出し惜しみはなしだ。あのすかしたおっさんは絶対に逃さねえ。
アスラから膨大な魔力が迸る。
それと同時に、アスラを男の元へ差し向けた。
「だめっ! 遠い!」
イーナ姉の叫びに歯噛みする。
如何せん遅すぎた。膨大な魔力で強化したアスラの脚力でもっても届かない。
もはや点のようにしか見えなくなった男を見上げ、石でも投げつけるしかないと腹を決めたところで、
「そのまま! 全力で蹴り上げてっ!」
そんな声が聞こえた。
伊藤咲奈。
猛烈な速度で走り去る彼女をおれはただ見送った。
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