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試練 幼年期の終わり 再々


「おばちゃん」


 呼びかけても反応はない。

 当たり前だ。

 目の前で倒れた彼女は実に満足そうな表情を浮かべて倒れていた。傍にはどこの誰かもわからない男。その首には見事な切創。何が起きたのかは考えるまでもなくわかる。

 最後まで戦ったのだ。

 その上で為すべきことを為したと満足気に死んでいるのである。

 

 例え、その全身を鉄の矢に貫かれようとも彼女は自分の死に様を誇っているってことなんだろう。あるいは、信じているのかもしれない。

 自分が一人仕留めたことでみんなが生き残れる可能性が上がったことを。


 集落の入り口で倒れ伏した彼女は、いや、彼女達は誰もが満足気な表情を浮かべていた。

 

「駄目だ。みんな串刺しになって死んでる」


 アスラが若干青ざめた表情を浮かべている。

 言わなくてもわかることをわざわざ口にするのも、どうやら動揺を抑える目的があるようだった。さっきの質問だってそうだ。中身が中年おっさんのおれですら正直しんどい状況なのである。まだまだ幼いこいつが冷静に振る舞っている時点ですごいことだ。

 そんな諸々のことを考えながら、一杯一杯になりつつあるアスラの頭を撫でる。

 いや、おれよりもでかいから大変だったが二、三回ぐりぐりやって姉たちの方に向き直った。


「愚弟。お前のスキルを使え」


「あれ、絶対こっち見てるわね」


 殺気で肌がぴりついた。

 長老の家の屋根。

 そこから降ってくる視線がその正体だ。おれの視力では点のようにしか見えないが、確かにそこに誰かがいる。

 直感だったが、あれが鉄の矢の射主だとおれは確信した。

 

「なんで撃たねえんだ?」


 と、同時に自然とそんな言葉が出た。

 明らかにおれたちを標的として見ている。なのに、撃たない。

 逃げ出したくなるくらいの殺気や圧力を感じるが実際の攻撃がないのはなぜだろう。そんな当然の疑問を口にしたと同時に、


「…うん。やっぱりおかしい、かも」


 甲高い金属音が鳴った。

 おれの背後。それもすぐ近くだ。

 振り返るとそこに真っ二つに折れた鉄の矢が落ちていた。

 

「お見事。…うん、単発でしかも威力が低い。背後からの奇襲はなにかのスキルを使ったんだろうけれど、でも、みんなの時とは違うみたい。本来ならもっと多くの攻撃を仕掛けるはず。消耗? あり得なくもないけれど、姿を晒してる時点で違う、かしら?」

 

 ミァハさんは敢えて現状を口に出してくれているんだろう。

 そして、防いでくれたのはイナンナさんだろうか。彼女の影が不自然に伸びているし、多分、そこから何かしてくれたんだろう。

 よくよく考えると、影を使う攻撃はイナンナさんのスキルなんだろうか。魔法というには魔力の流れが僅かだし、なにより発動時の反応がないのも気になった。


 思考が逸れた。

 

 とにかく現状は理解した。

 こちらを見据える男におれたちを殲滅するだけの術はない。けれど、迎撃する手段はある。おそらくはこのまま仕掛けたとしても、全員が無事で済むなんてことは出来まい。良くて半分。悪ければ、残ったのは一人だけだったという状況も十分にあり得た。どこまでが射程なのかはわからないがお互いが姿を見せ合う現状から逃げ出すのもいい手なのかもしれない。

 こう着状態に持ち込まれたのは間違い無いので、さて、どうしようかと思考する。

 

 いや、考えるまでもなかった。


「アスラで仕掛けます。イーナ姉とジーナ姉はサポート。ミァハさん、イナンナさん。トドメはお二人でお願いします」

 

 冷静に冷徹に。

 

 あの男を始末する。


 周囲には同胞が倒れ伏しているのだ。何を持ってもあの男を始末し、仇をとらねばならない。

 ここで逃げるなんて真似は絶対に許される行為ではない。

 

 これは弔いなのだから。

 


 

 


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