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試練 幼年期の終わり 再


「なんだよ、今の」


 全身に鳥肌が立った。

 突如現れた膨大な魔力が世界を軋ませるような魔法を放ったのだ。遥か彼方で巻き起こった現象なのはわかっていたが、それでも意識せざるおえない。

 気まぐれに、あるいは偶然にもあんな魔法の矛先がこちらを向いた時点で終わりなのだ。

 集落へ向かっていた足が自然と止まっていた。

 おれだけじゃない。全員が魔力の発生源を向いていた。


「…多分、敵の誰かだと思う。村の誰とも違う魔力」


「そうね。混じりっけのない殺意が篭ってた。誰を狙ったのかはわからないけれど、容赦がなさすぎるわね」

 

 イナンナさんもミァハさんも深刻な表情を浮かべていた。狙われた誰かの安否については口にしない。そもそも、あんな規格外の魔法に狙われた時点で終わりなのだ。何とかするならその矛先が向く前だ。少なくともこの場にいる全員が束になっても叶わないのだから。

 おれのスキルを使ったアスラでも無理だ。

 いくら何でも今の魔力と比べれば天と地ほどの差がある。

 ある種絶望的な差を見せつけられ、場の雰囲気が一気に重くなった。

 さらに追い討ちのように、

 

「あれ、父さんがいた場所だ」

 

 とジーナ姉が呟いた。

 その一言でおれは血の気が引いた。

 つまり、あの膨大な魔力と規格外の魔法の標的は父だったのだ。その事実に言葉を失ったが、


「…あっ。そうなんだ」


「なら、大丈夫ね」

 

 至極あっさりと重たい雰囲気が消えた。

 心配して損したとでも言わんばかりの態度。今度は場の雰囲気の意味がわからず、言葉を失った。


「いや、え? 何ですかこの雰囲気? おれの親父ってそこまで嫌われてました?」


「ああ、ごめんなさい。そんなことはないわ。けれどね、あの人ならなんといか、ね?」


「…心配するだけ損。どうせ勝ってる」


 二人の言い分は同じだった。

 息子としては喜べばいいのか、実は嫌われてるんじゃないかと怪しめばいいのか。とにかく判断がつかず、姉二人を見た。


「父さんがそんなとこに飛ばされたんなら母さんも同じね。随分と用心深いことで」


「多分長老も同じ。村にいるのは若い戦士だけってことか」


 心配していない。

 むしろ、冷静に状況を見据えているみたいだった。どうやらこの場での少数派は自分の方らしい。おれはもうこの話題について考えるのをやめた。

 

「ねえ、ジーナ姉。みんなは集落にいるの?」


 不意にアスラが口を開いた。

 特に何の変哲もない質問だった。けれど、この場にいる全員があえてしなかった質問でもある。だから、自然と全員の視線が集中した。

 アスラは、その視線を真正面から受け止めている。

 真剣な表情には揺らぎがない。質問の意味をきちんと理解しているようだった。

 だからこそ、ジーナ姉は答えたのだろう。


「戦ってる。だから、少しでも早く戻ろう」


 それだけ。

 だから、そこから先は全力で走った。


 結局、見慣れた集落の姿はどこにもなかった。

 

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