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儀式(異世界のお約束)


 伊藤咲奈さんとの出会いからさらに三ヶ月以上が経過した。

 

 寝て起きての繰り返しだったが、自分の体の変化に驚かされた。疲れ知らずな上に、寝る前に出来なかったことができるようになっていく。こんな感覚を覚えたのは初めてだった。…いや、もちろん前世でも同じことがあったのは間違いない。けれど、精神というか意識がはっきりしているとここまで新鮮な日々だったのかと感動してしまった。

 

 だからこそ、チャレンジ意欲が湧いてくるのだ。


「ほぉ。もう立ったか」


 シーナさんが感心した様子で見つめている。

 返事をしようと思ったが、バランスを取るのに必死で何も言えなかった。両足の筋力はまだ足りない気がしたがそれでも何とか直立することはできた。

 体軸の意識。

 昔やってた空手を思い出す。あの頃は必死に拳を突いていたがその時に意識させられたことが今に役立っている。

 しばらく立つことに意識を集中していたが、わずかに膝が揺れた。

 堪えようと意識した時には床に寝転がってしまった。また、やり直しである。

 

「あー、くそー」

 

「上出来だ。まだイーナもジーナも立てないんだぞ? 練習すればすぐに歩けるようになるさ」

 

 シーナさんはそう言って、おれを抱き上げた。

 そのまま頭を撫でられる。

 最近はこれが多い。なんというか赤ちゃんなら当たり前なのかもしれないがどうにもむず痒い気分だ。悪い気分はしないのだが、居心地の悪さも感じていた。

 当たり前だ、中身は三十五のおっさんなんだから。

 なにより、こんなふうに褒めてもらうのも前世で十分に経験したはずなのだから。覚えてはいないが、両親に十分されたはずである。そう思うとなぜか何とも言えない気持ちになるのだ。

 親父やお袋は元気だろうか。

 まぁ、今考えても仕方がないことだから棚に上げておくしかないだろう。

 まだ歩くことすら出来ないんだから。


「そろそろ昼か。どれ、私の」


「だからそれは結構です」


「むぅ。どうして母の愛を理解できない」


 シーナさんはぶつくさ文句を言いながらも哺乳瓶を持ってきてくれた。

 本当にシーナさんとアグニルさんには感謝しかない。おれの嫌がることは一切し、本当の息子のように扱ってくれいた。まだ数ヶ月の付き合いだが彼女らがどれだけすばらしい人格の持ち主であるかはもう十分に理解している。いや、実際、おれが逆の立場だったらここまでのことは絶対にできない。毎食の用意や寝かしつけ。血の通わない他人に対してここまで至れり尽くせりをするなんて想像もできなかった。

 だからこそ彼女たちのことを尊敬しているし、信じることができるのだ。まぁ、母乳を飲ませようとしてくることだけは正直理解できないのだが。

 

「シーナ、帰ったぞぉ!」

 

 アグニルさんが帰ってきた。

 日中の間、アグニルさんは村の仕事をしている。まだ小さいイーナとジーナ、そしておれの面倒をシーナさんが見てくれているのだ。シーナさんの話ではもう少しおれたちが大きくなれば彼女も働きに出るらしい。

 アグニルさんは普段より急ぎ足でやってきて、シーナさんから哺乳瓶を飲ませてもらっていたおれを見た。

 

「やったな、トール!」


「なんだい、一体?」

 

 何がいいことがあったんだろうか。 

 喜色満面で興奮気味のアグニルさんをおれとシーナさんは醒めた目で見ていた。この人はたまにこういうことがあるのだ。狩りでうまくいった時も同じようなテンションだったと思い出す。

 だが、今回は違ったようだ。

 しばらくおれと同じように醒めた表情を浮かべていたシーナさんが何かに気づいたのだ。


「まさか、あれが決まったのっ?」


「そうだよっ! トールに決まったんだ」


「やったじゃないっ!」


 なぜかシーナさんのテンションまで跳ね上がっている。

 何が起きたのかわからず、かと言ってテンションを上げていいものかもわからなかったので聞いてみた。


「あの、何があったんです?」



「お前の()()()()()()()()が決まったんだ」


 は?

 思わず聞き間違いかと思った。だが、同時にお約束でもあることを思い出した。

 

 スキル。


 今さらそんな要素が出てくるとは思わなかった。


 

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