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第0話 プロローグ

  -皆さんは異世界という概念を信じているだろうか-  

 

 異世界というファンタジー的な事を中高生なら一度は考えや、“憧れ”を持ったことがあると思う。実際俺、白鳥瑛汰は“憧れ”の方向性で異世界に行ってみたいと中学生の頃思っていた。それゆえ、妄想も嫌となる程していた。


 例を出すとするならばこうだ。


 ①異世界に転生する前に女神が出現!チート級の能力を与えられ、異世界で無双生活!


 ②チート級能力を使い、美少女達を乱獲!ハーレム三昧!


 こんな感じで超が付くほど痛々しい中学生、いわゆる中二病ってやつだった。

 今思えばそんな黒歴史を粉砕機に入れて粉々に消し去りたいと思ってるね。


 もちろん、重度の中二病を患っていたのが原因で、中学時代は友達を作るという基本的且つ序盤的な行動すら出来ていなかったね。お陰様で中学生活は無事に崩壊し、クラスメイトを「庶民共が」とか言って見下してたからね俺。


 一番酷いのが中学入学時の自己紹介で、「俺の名前は白鳥瑛汰(しらとりえいた)。苗字の白鳥というのは、俺に白い白鳥が憑依しているから付けられたのだ」とか意味わかんねぇ事言っちまったのが一番の過ちだったね。もっとマシな自己紹介をしてれば運命は変わっていたかもしれないんだけどね…。


 とにかく俺は本当に馬鹿な過ちを三年間しまくってきたのだ。

 だから俺は元中二病という事を忘れて、高校生活をエンジョイしたいんだよ!

 だがしかし、中学の三年間、クラスの係以外にまともに人と喋った事がなかった…。

 正直自己紹介くらいならできるか、という小さい希望を胸に頭の中で作戦を練っていたら、いつの間にか高校の校門に着いていた。


 自己紹介なんぞ、適正な声量で噛まなければ簡単な事だ。前言を撤回し、本当の事を言うと、スクールカーストが上位じゃなくても別に問題はないのだ。むしろ、中間層にいれば全然OKって感じだからね。


 さて、少し俺の昔話に時間を取りすぎてしまって申し訳なかったね。さて、俺のクラスはどこだ?


1年C組ね、了解。


 俺はC組の教室の前に来たが、何やら騒がしい。C組の周りだけ、他のクラスの奴も“何か”を見に来ている。

 なんだ?高校生活初日から誰かが問題でも起こしたのか?


 俺は人混みの中、少しの隙間からその“何か”を見てみた。その隙間から見えたのは、一目見ただけで分かる“美少女”だった。

 見た目を説明すると、流れるように綺麗な黒髪のロングヘア。瞳は鮮やかな青色、透き通るような白い肌、まるで欧州人と日本人をかけたような美貌だった。

 制服越しからも分かる、超超超スリムなボディ!胸は何カップぐらいだろうか………いや即座にこう考える俺はやべぇな。


 ザワザワザワ…


 「おいおい…なんだよあの美少女…」

 「人生で初めて見たぜ…女優より可愛いんだが…」

 「やっべ一目惚れだわあれ」


 どうやらこの人混みの正体は彼女みたいだ。物凄い好評だ。俺もあんな可憐で可愛い女性なんて見たことないぞ、こりゃ逆に問題だな。どんなに頑固な男でも、彼女を見たら絶対に一目惚れだろうな。

 だがしかし…流石に混み過ぎだな……これじゃあ教室に入れねぇよ。美少女を一目見たいのはわかるが、そんな騒いでると怒号が飛んでくるぞ。


 「ちょっと君達!何をそんなに騒いでるの?!早く自分の教室に戻って座りなさい!」


 ほらな。だがありがたい、これでやっと座れる。どうやら注意したのは俺のクラスの担任みたいだ。


「えぇと、皆さんご入学おめでとうございます。よろしくお願いします、1年C組を担当する山田勝彦と言います」


 一段落落ち着いた所で、課題となるのは自己紹介だ。いいか俺、普通に自己紹介をするんだ。噛まずに、訂正な声量で、名前と趣味…………よし…


 「では最初なのでね、前の人から自己紹介でもしてもらいましょうか」


 次々と自己紹介が淡々と終わっていく。この待っている時間が一番緊急がするのは陰キャだった奴なら分かるだろう?

 ここで無理に焦って、自己紹介の出来が落ちたら終わりだ…落ち着いて望むんだ…

 

 「次」


 俺の番だ。脳内では自己紹介はバッチリ、完璧だ。後はこれを落ち着いて言うのみ…


 ガタッ


 「あ、ぁ、…えぇと、白…鳥瑛汰…です…ぅ…しゅ…趣味は旅行…です…よろしく…お願いします…」


 終わった。

 ………

 

 俺の高校生活、青春、消えちまったな。“脳内では”完璧だった。周りの視線が刺さるように痛い。俺は結局、何も変わってなかったんだな。


 「あっはははははははははwwww」

 「白鳥君きょどりすぎ〜!!!」

 「どんだけ緊張してんだよ〜」


 あれ?意外と反応悪くないぞ?さっきまで怖かった視線が歓迎の視線となって俺に優しく当たってくる………。

 もしかしてこれ、陰キャをついに脱した?!ああ…これが幸せってやつなのかね…


 「ああ、すいません…緊張してて…はは…」

 「まぁ初日だからね、瑛汰くんね、はい次」


 なんとか乗り切ったようだ。神様、こんな良いクラスに俺を入れてくれて本当にありがとう。今だけは信じるよ。

 …

 ……

 ………


 ガタッ


 俺の席の後ろは、騒ぎ立てられていた超絶美少女であった。自己紹介のせいで全く気にしていなかったが、正直嬉しい。


 「千本木 葵です。趣味は読書です。皆さんよろしくお願いしますね」


 なんと爽やかな笑顔なんだろうか。この笑顔で一つの戦争を止められるのではないかと疑う程の凄まじい笑顔だ。

 趣味が読書と言うのも、とても清楚と言ったところか。もしこの俺が、この美少女に告白されたら50回ぐらいは聞き返すだろう。

 他人の自己紹介でここまで幸せな気持ちになったのは俺だけではない筈だ。


 「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!!」

 「キャアアアアアアアアアアアアア!!!♡♡」

 「天使だぁあああああああああああああ!!」


 案の定、こんな反応だ。先生まで叫んでいる。女性までも虜にするこの笑顔をこんな近くで見て良いのだろうか、VIP席みたいなものだ。

 だが俺は叫ばなかった。いや、感動と歓喜が高まり過ぎて叫べなかったのだろう。俺は、彼女の美貌を下からまじまじと見ていた。


 「葵さんね!!!なんて可愛いのかしら…」


 「いえいえそんな事ないですよ!勝彦先生の方こそ肌が綺麗で羨ましいですよ!」


 「?!嬉しいわ!ありがとう!じゃあドンドン言っちゃいましょう!はい次!」


 美少女&優しい性格に勝てる奴はいねぇな。担任も完全に興奮しちゃってるしな…葵さん一人だけで軍隊動かせられんじゃねぇの…?それは考え過ぎか…。

 にしてもあんな美少女がいるとは思わなかったな。中学時代の奴らと離れるために都立のそれなりに頭の良い高校を選んだが、ここなら楽しく生活が出来そうだ。

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 「じゃあ今日はこれで終わり!親御さん達にプリント渡しといてね〜、はい、じゃあ解散!」


 登校初日なので午前中には終わった。


 「帰るか…」


 結局、今日は友達という関係を作るのはできなかった。まぁ登校初日だしね?本格的に授業始まるの明日からだからね?

 少しの不安と焦りを背負って帰宅しようとした時。誰かが近づいてきた。


 「白鳥だっけ?ちょっと皆でクラスの歓迎会するんだけど、白鳥も来ない?」


 話しかけてきたのは自己紹介で一発芸をやっていた奴だった。いわゆる、陽キャだ。

 俺は陽キャは大の嫌いだったが、こいつは優しい陽キャの部類に入るのだろうか、何故か嫌いにはなれない。

 だが、歓迎会………ボーナスイベントだぜ…!!!!陰キャ中二病の時代は歓迎会なんて誘われなかったから、マジで嬉しい。


 「え?行ってもいいの?俺、てっきり暗い奴って思われて誘われないのかと…」


 「何言ってんだよ、全然暗い奴とも思ってねぇし、そもそも歓迎会なんだから、気軽に行こうぜ」


 なんて優しい奴なんだろうか、これは行くしかないだろ。それにあの美少女、葵さんもきっと来るのだろう。これは千載一遇のチャンスと捉えるしかないだろう。


 「分かった。誘ってくれてありがとうな」


 「おうよ!」


 俺は陽キャの満面の笑みを見ると、下駄箱に行き、クラスの30人程と集団で歓迎会をする会場へ向かっていた。


さてさて、今の状況で考えるべき事は、葵さんにどう話しかけるかだ。下手に話しかければ引かれるか嫌われるの二択だ。

 歓迎会の会場は学校を出て徒歩10分の所にあるファミレスだ。この10分間で葵さんへの接し方について考えよう。

 確か、読書が好きとか言ってたな、俺も中学時代は毎日ラノベを読んでいたが、流石にラノベは好きじゃないよなぁ…。きっと俺の脳では到底理解に及ばない、哲学的な本を読んでいるんだろう。

 じゃあどうすれば…


 クラスの奴らは葵さんを囲み、話しながら歩いていた。俺はその盛り上がっている中には入れる勇気がないから、集団の後ろでひとりでに考えていた。


 一向に考えがまとまらない。

 

 俺は5分程考えていた。今は交差点だ、信号が青に変わるにはまだ時間がある。んー…葵さんの性格ならラノベの話をしても大丈夫か?………いや辞めよう。


 俺は下を向きながら葛藤しまくった。


 やっぱり好きな〇〇で攻めてみるのも有りなのか?俺と共通の好きな〇〇があったら話が進むしな…それで行くか…!


 顔を上げると、信号は青に変わっていた。


 クラスの奴らは横断歩道の真ん中まで歩いていた。


 俺は追いつこうと速歩きをした。


 何かがおかしい。


 急にクラスの奴らは葵さんを置いて、急いで横断歩道を渡りきった。


 なぜ?と思い、瞬時に横断歩道の横を向いた。


           トラックだ



 100km近くは出ているであろうか、トラックが真っ直ぐに向かってきていた。居眠りだろうか、脳卒中だろうか、それとも殺意だろうか。


 俺は考えるより先に足が動いた。葵さんを助けなきゃ。きっと葵さんは自分自身の命に関わる事態にショックで足が動かなかったのだろう。

 俺は自分の危険より葵さんを優先していた。


 だが、なぜ俺以外に誰も助けない。なぜ?


 なぜ?


 


 

 周りの顔はよく見えなかったが、唖然としていたと思う。


 今までこんな全速力で走ったことはなかった。


 葵さんまでは僅か1m。


 手を伸ばした。


 とどけ


 

読んでくださりありがとうございます!


面白かったらブクマと感想も是非是非お願いします!


また、改善点等がありましたら感想の点で受け付けます。


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