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元義妹、思いの丈をぶちまける。

まりあちゃんと二人でれみを追いかけているものの、足の速さに差がありすぎる。距離がまったく縮まらず、息が切れてきた。


「れみ、体育の成績もダントツっスからね………!」


「はぁはぁ………くそ………! あいつ完璧かよ!?」


 運動不足が祟ったか、体力より先に筋肉が悲鳴をあげている。


「れみいいいいい!! 待ってくれええええ!!」

「来ないでください!!」

「そういうわけには………ぜぇ、はぁ………い、かない!!」


 叫んだせいで、余計体力の消費が著しい。


「もうどうでもいいです!! 兄さんもまりあも好き勝手していればいいです!!」

「そんなわけに………いくか………!」

「兄さんは女性だったら誰でもいいのでしょう! 誰が妹でもいいのでしょう!」

「だからなんでそうなるんだ!」

「だってまりあの肩を持っているではないですか!」

「どこがだ!?」

「私に会うより先にまりあに会ってました! 私に許しを乞う前にまりあを優先しています!」

「そ………!」


 息が詰まる。


 自分が良かれとおもって、俺のことを後回しにしていた。そうすべきだとおもった。俺なんか許すより先にまりあちゃんと仲直りしてほしかった。友情を先に回復させるべきだとおもった。


 そんな考え自体が傲慢だったんだ。


 れみからすれば自分を蔑ろにされたようなものなんだろう。


 けど、まさかれみにそんな風な受け取り方をさせていたなんて………!



 ああ、まただ。


 また俺は自分本位でれみを傷つけた。


 れみの気持ちを、感情を優先すべきだった。


 最低だ。


「そんなわけないだろっっっ!!」


 だからこそ、せめて諦めない。諦めちゃだめだ。


 いくらでも罵倒されてもいい。怒られてもこってり絞られてもいい。一生恨まれてもいい。ここでれみを追うのを諦めたら、本当にすべてがおしまいになる。


「れみが一番大切だ!! れみ以外にそうおもえる女の子なんていない!」


 そう。妹だから。


 一番身近で、誰よりもずっと一緒にいたくて、


「な………は!?」

 

 大きく揺らめいて、れみのスピードが若干緩んだ。


「う、嘘です! だったら合コンになんか行くわけないです! もう兄さんには騙されません!」

「頼まれたからだ! そもそも俺も行きたかったわけじゃない!」

「まりあとデートに行きました! 私との約束を破って!」

「それは返す言葉もない!!」

「私を弄んで辱めました! お義父様の前で! もうお嫁にいけないほどです!」

「責任取らせてくれ!」

「!?」


 街中を二人で駆けながらどれだけ時間が経っただろう。どれだけ叫んだだろう。 れみのスピードが、どんどん落ちてくる。


 もう少しで追いつけそうだけど、俺ももう限界が近い。あと少しのところで、僅かな距離をどうにも縮めることができない。


「こ、こんなときにふざけたこと言わないでください! こんなときに言われても嬉しくないです!」

「じゃあどんなときならいいんだ!」

「兄さんの馬鹿!」

「教えてくれ!! れみはどうしたい!? 俺になにをしてほしい!? れみに許されるならなんでもする!! れみがまりあちゃんと仲直りしたいんだったら俺も手伝う! 仲直りしたくないんだったら無理強いはしない! 俺が許せないんならそれでいい! けど――」


 喉がひりついて裂けそうなほど痛い。もう走る姿勢すら維持できないほど疲労が蓄積していて気を抜けば倒れそうだ。


「れみに後悔してほしくないんだ!!」


 なけなしの力を、意地で振り絞る。


「だって俺は死ぬほど後悔した!! れみと会えなくなって! あんな気持ちをれみに味わってほしくない! 俺なんかのせいでこれ以上れみが不幸になるのが一番嫌なんだ!! 俺なんかのせいで友達を失わせちゃいけないっておもった!! 俺なんかが言うなって話だけど!」


 ほぼ歩いているくらいにまで下がり、一歩、また一歩とゆっくり。よろよろと頼りない足取りで。


 あと一歩、足を延ばせば掴める。追いつける。


「どれだけ恥ずかしいことを叫びまくるんですか………」


 立ち止まったれみに、つい止まってしまった。


「兄さんは最低です………」

「うん………」

「デート、楽しみにしてたんですよ?」

「うん………………」

「しかも私の友達だったまりあとです」

「うん………」

「一番大切だった人達を一度に失った気分です」

「ごめん」

「許しません」


 多少の息の乱れは、すぐに整いはじめている。だけじゃなくって、声音にしっかりとした力強さときっぱりとした厳しさがある。


「絶対に。絶対に簡単に許したりなんかしません。許したら兄さんはまた調子にのります。同じ過ちを繰り返します」

「かも………しれない………」

「だから――」


 れみが振り返って、こちらに飛び込んでくる。おもわず鑪を踏んだけどれみを抱き抱えることでなんとか防いだ。


「もう嘘はつかないでください。二度と他の女の人と一緒にならないでください。私が納得できるまで、兄さんを許しません」

「うん………」

「簡単になんて、許してあげないんですから………。それが兄さんへの罰です」


 それでいい。


 今はこうしてれみの側にいられるだけで。

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