親友の独白
私はきっと、嫌な人間だった。
裕福な家にたまたま産まれて、幼い頃から恵まれていたから世の中を斜に見ていたし、両親の教育と家庭環境もあって当たり障りのない交友関係しか構築しなかった。
成績も、人間家系も、立ち位置も、発現も、態度も、その場その場に合わせた適当なもの。それを見破った人はいなかったし、都合がよかった。周りの人間達を心の底では舐めていたかもしれない。
だから、自分と違いすぎる存在に出会ったとき、衝撃だった。
「あなた、どうして手を抜いているのですか?」
「へ?」
口をきいたのは初めてじゃなかった。何度も接してきたし、私も目の前の女の子は知っている。文武両道、才色兼備を地で行く同学年一番の女の子。
自然と人に頼られて、そして注目を浴びる。誰からも好かれる。こういう子ほど裏では性格が悪いんだろうなって、遠巻きにしていた。
目の前の子がどうして私に話しかけてきたのか、意図が掴めず間の抜けた声と表情で返すしかなかった。
どこまでも冷静で、怜悧な印象の少女は顔立ちと立ち振る舞いも合わさって大人っぽいと評判の同級生。でも今はこちらを責めたてているような鋭い視線のせいで、こわさすら覚える。
「なんのことっスか? いきなり」
「さっきの体育の短距離走のとき、わざとスピード緩めたでしょう」
相手は運動部の子だった。そんな子に足の速さで勝ったらやっかまれる。めんどうなことを避けるための処置を、見抜かれていたなんて。
「全力でやらないで、なんの意味があるのですか? 相手にも失礼では?」
「・・・・・・・・・・・・」
なんか、真面目すぎる子だなぁこの子は。
悪い子じゃない。けど、お堅いというか融通がきかないというか・・・・・・・・・。
他人の私のことで、わざわざ指摘しにくるなんて。
「まぁまぁ、そんな怒らないで~~。美人が台無しっスよ~~?」
「そうやっていつもみたいに適当にやり過ごそうと?」
「っ」
この子は、私という人間を見抜いている。
「私でも気づいたのですから、他の人達も気づきますよ」
「あはははは、ごめんっス。次から気を付けるから~~~」
「あ、ちょっと!」
逃げながら、なんとなくこの子は苦手だとおもった。
友達になる前の竹田れみに対しての印象はそれだけだった。




