元義妹、元義兄とその友達と大いに交流す
健が目を覚まし、二人で事情を説明するけど、れみは納得していない。それから夕食を作ることになったけど、俺と健を二人っきりにしたくないのか距離をとらせる。
食事中も肩と肩で触れあうくらいの近さでだ。逆に健とは距離をとらせる。健はすっごい悔しそうにしているけど、やめろ。その反応でれみが勘違いしそうだから。
「兄さん、あ~んです」
ブフォ、とご飯粒を吹き出しそうになった。
「いつもしていることではないですか。恋人なんですから普通です。それとも長井先輩の前ではしたくないと? やはりなにか特別な関係が?」
れみの誤解を終わらせるためにも、満足するまで付き合うしかないらしい。
けど、それがイチャイチャを見せつけられているとおもったらしい健は、呪い殺しそうな眼光で俺を睨んでくる。箸をガジガジと噛み続ける仕草は鬼みたい。
誰のせいでこうなったかわかってんのかって苛立ちすら覚える。
「れみ、もう遅いし帰ったらどうだ?」
食事を終えて食器を洗ったあと、俺の改善点をレクチャーし、諸々の指導を終えたれみにそう提案した。
「やはり長井先輩と二人で過ごしたいんですか? だから私が早く帰るように、もう来ないように真剣に話を聞いているのですか? 最近、生活が改善の傾向にあるのはそういうことですか?」
めんどくせぇ・・・・・・・・・。そこはかとなく・・・・・・・・・。
「もう、どうすればわかってくれるんだよ。俺は健と付き合ってないし。女性にしか興味ないし。第一れみに嘘つくわけないだろ」
「・・・・・・・・・え?」
ん? なんか反応示した?
「私に嘘はつかない?」
「ああ。そうだよ。れみは俺にとって大切な存在だし」
れみはどうかわからないけど、俺はれみを今でも妹だっておもってる。
「れみもれみとの関係も大切にしたいし」
昔、俺は自分を優先した。そのせいでれみを泣かせて、悲しませた。もう二度とそんなことしたくない。
それに、今頑張って終わらせようとしているれみと一緒にいる時間も、しくて嬉しい。
ずっと続いてほしいと願っていながら、だからこそ貴重で大切なんだ。今まで会えていなかった妹と、もう会えなくなるこの関係が尊くて一秒一秒が大切なんだ。
「つまり、兄さんは私と一緒にずっといたいと?」
「・・・・・・・・・ああ。そうだよ」
昔みたいに仲のいい義兄妹みたいに、一緒にいられればって願ってやまないよ。
まぁ無理だけど。
「そうですか。それが兄さんの本当の気持ちなんですね。今は信じます。信じたいです。私も・・・・・・・・・いえなんでもありません」
最後言い淀んだのが引っかかったけど、納得したらしい。というかなんか機嫌がよくなってる。
「まったく、仕方ない兄さんです。けど、もう少し時と場所を選んでください。私だってまだ答えが決まっていませんしいきなりそんな大胆な告白なんて」
答え? 告白? なんのこと?
「・・・・・・・・・なぁ瞬、俺もう帰るわ」
「お、そうか」
いい具合で健が帰ろうとしてほっとする。これでれみはより安心するだろう。
「そうだ、れみちゃん。よかったら連絡先交換しない?」
「あ?」
と油断していたら最後にこいつとんでもない爆弾を。
「どうしてですか?」
「それは――」
健の口を塞いでそのまま移動、事情聴取にうつる。
「お前どういうつもりだ」
「なんだよ。別にれみちゃん狙ってるわけじゃねぇ。れみちゃんとお前付き合って間もないだろ? だからアドバイスとか相談とかできる相手必要じゃないかって俺なりの配慮だよ」
ヘラヘラしながら流暢な説明。それが本当ならいい。けど、こいつ健だしなぁ。なんか魂胆があるんじゃないかって気がしてならない。
「まぁそうやって女子高生と仲良くなって友達紹介してもらったり、お前が捨てられたときおこぼれに預かれないかな~って」
うっわ、最低。
「だめだ」
妹とこいつが連絡を取り合うのは、絶対よくない。
れみが悪影響を受けるだろうし。それに、健の申し出は俺とれみが恋人関係っていう前提のもの。
恋人じゃなくて元義理の兄妹という複雑な事情があるとはいえ、俺とれみの関係は近い将来終わる。絶対に。
そんな背景を鑑みれば健とれみが今後も連絡を取り合える間柄っていうのは喜ばしくない。お互いの近況を知れる存在がすぐ側にいるんだから。
「なんだよ嫉妬か? ん? 恋人が異性と連絡し合うのは認めないってやつか? 束縛激しい男は嫌われるぜ?」
面白がって肘で小突く健を、どうやって諦めさせるか。
「健、今の女子高生について知ってるか?」
名案が浮かんだ。
「れみから聞いた話だけど、今の女子高生ってやばいらしいぞ」
「どうやばいんだよ」
「まず友達だろうと恋人だろうと三十分に一回は連絡を取り合うって暗黙の了解があるらしい。それに少しでも返信が遅れたりできなかったりするとそのままブロック、仲間内からもハブられて孤立するらしい。恋人でも更に酷くなる」
女子高生に幻滅させるでたらめを吹き込めばいい。れみという現役の女子高生と付き合っていると健はおもっているし、だからこそ誰より情報を持っているという立場の俺が教えることは信憑性が高くなる。こういえば下心がある健は諦めるだろう。
「それくらい俺は受け入れるよ。講義だろうとバイトだろうと女の子を優先する」
くそ、菩薩みたいに微笑みやがって。まぁいい次だ。
「あと女子校の女子高生って下の毛今剃らないらしい」
「つまり皆あそこ剛毛なのか。興奮する」
「それに、定期的に一万円のお小遣いを渡さないといけない」
「それで信頼と恋人関係を得られるなら安いものだ」
「恋人以外の異性と口をきくのも同じ空間にいるのも大人数で遊ぶのも禁止だ」
「大学やめてお坊さんになる覚悟はある」
「女子高生の言うことが絶対でわがままだろうとなんだろうと口答えはだめ。ドタキャンされても受け入れないといけない」
「大人の余裕を見せてやんよ」
「あと、皆未だにおねしょしてておむつ付けてる」
「最近聖水プレイと幼児プレイに興味持ってる」
「へこたれねぇなお前は!」
そしてとんでもねぇやつだ! 引けよ! 諦めろよ! なんで答えるごとに熱意が強くなっていくんだよ! どんだけ恋人ほしいんだ!
「あと――」
「兄さん? なにを話しているんですか?」
それかられみに嘘をついていることがバレ、正座で説教。れみと健が連絡先を交換するのを黙って見ているしかできなかった。
「お前、どうしてあいつと交換したんだ?」
「兄さんは、私とあの人が連絡しあうのがいやなんですか」
「それはそうだろ」
「ですよね。あんな嘘をついてまで拒んでいたくらいですから。けど、私にも私の考えがあるのです」
正直、不安だ。今後変なことにならなければいいけど。
「大丈夫です。兄さんの気持ちがあの人にないのはさっきはっきりと教えてもらいました。だから、嫉妬しないでください」
「ん?」
「まったく、兄さんは本当に仕方がない人です」
「・・・・・・・・・・・・なにかあったら言ってくれ」
れみが嬉しそうなのが気になった。けど、最終的にはまぁいいかとおもった。
いざというときになればそのときになってから考えればいいと楽観的におもったのだ




