表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/120

元義妹、親友と恋人(元義兄)と買い物をする。

 男性と女性では、脳の構造が違うという話を聞いたことがある。


捉え方、考え方も大きく変わってしまう。男性は買い物にいくとき、具体的にどういう物を買うかなんとなく決めて向かうそうだ。女性は買う物を決めないで出掛ける。迷い選ぶ時間も楽しむためだと脳が判断してしまうらしい。



 大学の抗議で知った内容で納得した。だから女性と買い物に出掛けるときはおおらかな広い心でいられると教授に感謝したほどだ。


 けど、実際にできるかどうかっていうのは別なんだ。


「あ、れみ。これなんてどうスか?」


「う~ん、でもそれだとこれと合わせるには・・・・・・・・・こっちのスカートなんてどうですか?」



 一体もう何時間経っているだろうかってくらい延々と二人は服を吟味してキャイキャイして次々と手にする服を入れ替えていく。俺は輪の中に入れず眺めることしかできない。


 二人だけの空気というか空間というか。女性用の服屋にいるせいで恥ずかしいのもあったんだろう。けど、そうして眺めていると少しずつ安心してくる。


 まりあちゃんという同年代の友達と一緒にいるれみは、歳相応のやりとりをして女子高生らしい姿だから。俺といるときのれみとギャップがありすぎて最初は驚いたけど。


「どうしたんですか? 私たちを見つめて」


いかん。れみに気づかれた。なんとなく顔を背けて明言を避ける。


「ちょ、れみ。察してあげたらどうスか?」


 まりあちゃんが助け船を出してくれて助かった。ごにょごにょと耳打ちをして、そしてれみが冷たい蔑む視線を。何故に?


「いやらしいです。不潔です」


 なにが? 


「けど、恋人して彼氏の要望に応えるのも彼女の責務スよ? それが普通スよ?」

「なら仕方ありませんね。どうぞお願いします」


 不穏なやりとりだし、どうぞと言われてもなにを求められているのかわからない俺は目を丸くするしかない。


「なにをやっているんですか? 早く私に似合いそうな服を選んでください。あなたがそうしたいように」

「まりあちゃん。君、なにを言った?」



 どうも二人は勘違いをしているみたいだけど、ここで否定するとめんどくさいことになる。だから曖昧な笑いで従おう。




 とはいえファッションに詳しいわけでもこだわりがあるわけでもない。自分で買いにくるときはまだしも、恋人(嘘設定)の服を選んだことなんて皆無。いろいろ服をれみの体の前で合わせたりイメージしてみるけど、だめだ決められない。




「じゃあこれとこれならどっちがいいスか?」




 片方は清楚なかんじ。もう片方は露出が多め。俺としては露出が少ないほうを選びたいけど、う~ん。難しい。自分のだとパッと決められるのに、女性のを選ぶのがこんなに困難だとは。




「あ~あ、パイセン優柔不断は嫌われるっスよ?」


「だってしょうがないだろ。れみはなに着ても似合うんだし」


「・・・・・・・・・え?」




 れみはスタイルがいいし、贔屓目でなくても顔立ちが整っている。だからどんな服でも着こなせるだろう。だからこそどれを選ぶかっていうのが難しいんだ。




「うわぁ、パイセンすごいスね。ナチュラルに惚気るとか」


「惚気? どこが?」




 惚気じゃなくて偽らざる本音、真実を述べただけだ。




「しかも自覚なしとか。ほられみだって見てください」


「え? なんですか? 別になにも聞こえませんでしたけど?」




 促されるけど、れみは俺たちとは違うほう、明後日のほうに体ごと向けてしまっている。え、怒ってる? 




「じゃあ聞き方変えるスね。パイセンはどういう服が好みでどういう服をれみに着てほしいスか?」




 好みの服。着てほしい服。その二つを連想して、パズルのピースを当て嵌めていくようにカチリカチリとはまって一着の服を選べた。




「これなんてどうかな」


「へぇ~。パイセンはこういうのがお好みなんスねぇ~。ほぉほぉ~」


「私にこれを着てほしいんですか。こういう服がいいんですか」




 二人はそれぞれ違った反応をしているけど、なんだか良い気がしない。センスを貶すような反応で、自信をなくしてしまう。




「では一回試着してきます。彼氏の俺色に染めてやるぜ! という気持ちと自分好みの服を着た彼女を視姦したいという身勝手で気持ちの悪い恋人の気持ちを嫌々汲むのは不本意ですがそれが普通なので仕方ありません」


「待てどういうことだ!」




 呼び止めようと試みたけど、れみはさっさと試着室のカーテンを閉めてしまう。聞き捨てならなかったけど、入るのも開けるのも、声をかけるのも躊躇われてしまう。




「れみ、なんだか変なこと口走ってたけどどうしたんスかね?」


 


 今にも爆発しそうなほど顔を膨れさせているまりあちゃんは、笑うのを必死で堪えている感みえみえ。わざとやってんのかってくらい。




 絶対この子確信犯。れみが勘違いしていることを知っている上で楽しんでいる。どいうことか聞こうとしたけど、あっという間に着替えたれみがカーテンを開けた。




「どうですか?」


「ああ、似合っているよ」


「そうですかじゃあ今日はこれを買います。不本意ですが」




 言い捨てるとれみはまた試着室に引っ込む。そして着替えて出てくると俺への不平不満をぶつけてくる。




 「まったくこれだから男の人は」「この服を着たまま楽しんでやるぜぐへへ・・・・・・とか妄想しているんでしょう」「もしくは一枚一枚俺の手で脱がしていくのも楽しむんでしょう。そうやって興奮するんでしょう」「今後はそういう変態チックなところも矯正するかどうか検討します」と言い続けている。




「いやぁ、あんな嬉しそうなれみ新鮮スねぇ」


「どこが? プリプリ怒ってるじゃん」


「パイセンは付き合ってまだ時間がないスからわからないんでしょうけど、私たちは長い付き合いスからねぇ」


 なんだろう。ちょっと妬ましい。けど俺にはなにもする資格がないんじゃないかって気持ちもあるから複雑なモヤモヤが生じる。


 まりあちゃんも服を選んで、次に移動・・・・・・・・・することになったけど逃げだしたくなった。なんでってそれは下着エリアだったのだ。さっきよりも羞恥心が強くなる。しかも男俺しかいないし。他のお客さんも店員でさえ俺をじろじろと睨んでいる気がするし。


 できるだけ早く終わらせてくれ、と願ってやまない。


「では早く選んださい」

「・・・・・・・・・・ん?」


 P A D U N ?




「まさかお前俺に下着を選べと!? 正気か!?」

「い、いいから早く選んでください。恋人同士ならこれくらい普通でしょう。まりあが見ていますし」


 たしかに仲のいい恋人なら普通かもしれない。けど、彼氏レベルがゼロな俺にはあまりにも酷だ。ここで拒否したらまりあちゃんに疑われて嘘だとばれる。進退窮まるとはこのことか。


「ん? どうしたんスか? いつもみたいにやらないんスか?」


 この子は・・・・・・・・・! 煽っているのか純粋なのか・・・・・・・・・! 


 ええいままよ! とある種開き直った俺は覚悟を決めて下着を選ぶ。


(俺は恋人れみの恋人、恋人)


 心の中で唱え続ける。一緒に下着を買いに来た、恋人なのだから恥ずかしくない、もう全然の然!! と言い聞かせ続けながらまず一枚目。


 レースのあしらわれた純白なタイプ。


 少しくっきりとした形のセクシーな黒いやつ、きわどいTバック状の赤いやつ。


 ガーターベルト、すけすけのネグリジェ。


「ぐふ、はぁ、はぁ・・・・・・・・!!」


 つい呻く。


 それぞれ着たれみを連想して、倒錯的な恥ずかしさと興奮で頭がおかしくなりそう。だめだ、どれも過激すぎる。目に毒すぎてまともな判断ができない。もっと目に優しいものはないのだろうか。


「あ、これはいいんじゃないか?」


 俺が選んだのはかわいらしいデフォルメされた動物がプリントされたもの。うん、これなら安心。


「「・・・・・・・・・・・・」」

「あ、こいつとこいつもいいんじゃね?」


 毛糸で編まれたパンツは冬なら暖かいだろう。それにスポーツブラだって使いやすくていいはず。それと女児アニメとか作品のキャラクターが描かれているやつも、昔履いてたはず。


「うん。これなら俺も大丈夫だ。さぁれみ。これを――」

「どういうことですかこれは・・・・・・・・・」

「あれ?」


 なんだかれみの様子がおかしい。いつも以上に怒っていて、迫力があってこわい。


「こんな子供用のものが私にふさわしいと? 似合っていると? 履いてほしいと? 私を子供だと?」

「いやいやいや。違うよ? 俺は高校生らしいさが。それにこういうの好きだろ?」

「小学生で卒業したんです。ふざけないでください」


 言い訳をすればするほど、火に油を注ぐ結果に。怒りもヒートアップしていき、俺とれみの距離もズイズイと詰められて逃げ場がない。慎重さかられみが至近距離で見上げてくるアングルになるけど、それにしても迫力と圧が強すぎてたじたじになってしまう。


「まぁまぁれみ。こういうのが好きっていう男の人もいるらしいっス。それに、ギャップ萌えを狙ってるんじゃないスか?」


 そこでまりあちゃんが間に入って引き剥がしながらアシストをしてくれる。グッジョブ。


「ギャップ萌え? どういうことですか?」

「つまり絶対にれみが履かないものを履かせるのが好きってことっス。そういうれみが見たくてたまらないぜ! ってことじゃね?」

「・・・・・・・・・・なるほど。大学生ともなれば普通では物足りないということですか。私がこういう下着を履いているのに燃える、つまりは興奮するということですか。萌えという言葉にそこまで最低な意味があったなんて。さすがです。変態」

「勝手に二人で納得して勝手に決めつけて勝手に変態扱いしないでください!」

「つまりパイセンは高校生、いや中学生のときに普通の下着を履いている人には興奮できなくなったってことになるっスよね? それだけの経験をしてきたってことっスよね?」

「どれだけ爛れた学生時代だったんですか。不良です。変態です。矯正です」

「お願いだから少しは話を聞いてくれない!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ