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鬼人の旅路 これは君を探す物語  作者: 直江真
第三章 ヒガリヤ 剣舞祭編
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第93話 本戦 トキvsローゼ・ラブグリーン

 本戦、第6試合。


 今大会、貴族が本戦出場と少なからず注目を集めている。ナセル・キッソスとユージーンのぶつかり合いは白熱したものであり、同じ貴族というだけあってローゼ・ラブグリーン選手にも期待が集まっていた。


 舞台の上で余裕のあるトキを睨み付けるのは舞台に剣を突き刺し、肩で息をする薄いピンク色の長い髪を携えた女性だ。


 そう、その彼女こそが貴族の身分を持ちながらも魔法と剣を巧みに使いこなして予選を勝ち上がった猛者、ローゼ・ラブグリーンである。


 普段は自ら騎士団へと所属しており、街の治安や要人の警護に勤めているが今日に向けて休暇を取り、腕試しに来ていた。


 予選は勝ち上がったものの、本戦で当たったのは斧を自由自在に振り回す虎獣人。トキ・ダルタニアンとの戦いに苦戦を強いられていた。


 力も技も自分の遥か上をいくと剣を合わせて感じた彼女は胸を借りるつもりで全力を出し尽くしている。だが届かない。読み合いを制し、渾身の一撃さえも僅かに動かした斧で受け流され、反撃を喰らう。


 彼女は息を整え、立ち上がるとトキに向かって剣を振り上げる。そしてその周りには花びらが咲いた様に広がり、その中心に聳え立つ剣が神々しく輝きを放つ。


「我が花道を照らせ!"終わりなき(エターナル)愛の花(・ローゼンセ)"」


「いいねぇ、いいねぇ。その気概は良し!」


 ローゼが放った光線はトキに直撃した。残りの力を振り絞り、自分の出来る最高の技を放った彼女は攻撃の手を止めた。そこには片手で斧を振り回し、無傷で立っているトキの姿があった。


「なかなかだったよ。オーラをもう一段階上げなきゃ危なかった。…ならお返ししとかなきゃねぇ…!」


 トキが今度は仕掛けた。仕掛けたと言っても予選で見せた派手さない。至って普通の斧を使った薙ぎ払いだ。それを剣で受け止めた女性は押し返そうとするがピクリとも動かない。


「う、動かない!?」


 オーラを身に纏ったトキは普段の何倍も力を増幅させている。そんな彼女と正面切って戦うのは実力の差があり過ぎた。


「ほらっ、どうするよ。お前さんはぁ!!」


「まだだ…!負けてなるものかぁああああ!!!」


「おぉっ!?少しだが押し返したね。なかなか面白いじゃぁないかぁぁア!!!」


 必死の形相で剣を振るうローゼを余裕の笑みを浮かべて捌いていくトキは何度かの打ち合いをした後、斧にオーラを纏わせて薙ぎ払う様に振るった。彼女の手からついに剣がこぼれ落ちそうになる。


 その光景を見たトキが片手で斧を振り切るとボロボロになった斧を手放し、ローゼのこめかみ目掛けてフックを食らわせる。


「いい筋はしてる。誇っていいさ」


 気合いで踏ん張っていたローゼはトキの攻撃をまともに食らって力尽きた。


「カカカッ!楽しかったよ!」


「お見…ごと…」


 膝をついて倒れる彼女は満足そうに舞台に沈んだ。誰が見ても勝負が、予選が終了した瞬間だった。


 一瞬の出来事、相手の全力を出させる為に敢えてカウンターという戦法を取っていたトキがこの試合、初めて動いてから数秒の決着に度肝を抜かれる。


 観客の誰もがその豪快な技と相手の全力の攻撃を耐え切るタフさに魅せられていた。


 当の本人はカカカッ!とご満悦そうな姿から骨のある奴いてとても嬉しそうだ。


 ローゼ・ラブグリーンは担架に乗せられて運ばれたが心なしか、その顔には笑みが浮かんでいた。


 ◆


「さーて!本戦の第1試合から第6試合まで終わりました!此処で改めて選手をご紹介しましょう!えー、皆さん。空中に投影される対戦表をご覧下さい」


 司会者であるホレスが一通り言うと舞台会場上に巨大なスクリーンが投影される。


 [男性の部]

 1ユージーン

 2ゼニス


 3カーマン

 4アルバルト


 [女性の部]

 1レティシア

 2トキ


 男性の部は後2回勝てば優勝。女性の部は男性の部が終わった後に決勝戦となっている。


「アルバルトさん…大丈夫ですか?顔色があまり良くないですよ」


「あぁ、大丈夫。ちょっと対戦相手の事を考えてただけだから…レティシアこそ、次はもう決勝だろう。次の相手はあのトキだ。全力で頑張って来いよ」


「そうよ、レティシアさん!決勝戦だなんて凄いじゃないの!」


 ミリアが興奮気味にレティシアに詰め寄る。トーマスとユージーンもそれに当てられたのかテンションが少し高かった。


「ありがとうございます。絶対に優勝してみせますね」


 レティシアも拳を小さく握り込んでふんふんと気合を入れている。彼女の大きい尻尾がぶんぶんと動いてアルバルトの顔を叩いていた。


「ユージーンもアルバルトさんも頑張ってね。私、全力で応援するから!」


「でもよぉ、兄ちゃんとユージーンの兄ちゃんが戦うってなったらオバ…ミリアの姉ちゃんはどっち応援するんだ?」


「そ、それは…勿論、両方よ、両方!変な事聞くんじゃないわよ!それと今なんて言おうとしたの…?またわからせるわよ?」


「ひぇぇ、冗談だよ、冗談!」


 トーマスとミリアのコントみたいなやり取りに近くに座っているユージーン達は笑いを噛み締めた。


「さて、僕もそろそろ行くとするよ。アルバルト、決勝で戦おう!」


「…ふぅ、簡単に言うよな」


 バシッと顔を叩いて気合いを入れる。


「うだうだ考えるのはやめだ。やってやろうじゃねぇか…!次の相手がカマだろうが何だろうが全部倒して俺が優勝する。だからユージーン、勝ってこいよ!」


「油断はしないさ。……では行ってくるよ」


(そうさ、油断すら出来ない。ライアン選手の本体をすぐに見破って見せたあの洞察力と一撃で倒してしまう力はアルバルトに匹敵するかも知れない)


 今も思い出すアルバルトとの戦闘。相対した時の圧迫感はユージーンにとって少しトラウマになっていた。それと同じ感覚を覚えたゼニスの試合を見て背筋がゾッとした。


「……それでも僕は僕の全力を持って勝ちに行く」


 背筋を伸ばし、観客席から立ち去るユージーン。そんな彼の背中には幾つもの声援が贈られていた。


 ◆


 ユージーンがアルバルト達と会話を重ねている頃、ユージーンの対戦相手であるゼニスが今か今かと試合が始まるのを待ち望んでいた。


「俺の次の相手は…あの金髪野郎か」


(あの槍捌き…速い上に威力も相当なもんだろう。だが俺には効かねえ)


 舞台に続く通路の壁に腕を組んで寄り掛かっているゼニスは不敵に笑う。


「クククッ、問題はねぇ…」


 笑う。楽しみ過ぎて口元の口角が上がり、凶悪な顔つきで舌舐めずりをしていた。


「勝つのは…この俺だ…!!」

ローゼ・ラブグリーン

貴族であり、騎士団に所属しているお嬢様。家系が騎士を排出しているだけあって随分と鍛えられている。

家族は兄が1人、姉が1人、妹が2人と大家族なので跡継ぎ問題には困っていない。

親バカな両親だが、尊敬をしている。



最後まで読んでくださりありがとうございます。


少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマークの登録と広告の下にある【☆☆☆☆☆】で評価してもらえると嬉しいです。


モチベーションにもなりますので、感想等もよかったら聞かせて下さい!誤字脱字も教えて頂けたら幸いです!


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