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鬼人の旅路 これは君を探す物語  作者: 直江真
第三章 ヒガリヤ 剣舞祭編
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第86話 ゼニスとトキ

 最後の予選を余裕を見せつけて会場を後にしたトキは控え室から観客席に続く廊下を歩いていた。


「よぉ、待ってたぜぇ。一体何年振りだぁ?ここに顔を出すなんて珍しいな、先生ぇ?」


 壁に寄り掛かり、トキを待ち伏せていたのは前回の優勝者であるゼニスだ。その口振りから二人の間に何か繋がりがあるのは間違いない。


「何だ、誰かと思ったら馬鹿弟子か。それにしても相変わらず不器用だったねぇ、お前さんは。さっさと私みたいにキメちまえば良かったのにさ」


「久しぶりだってのにまた説教かよ。それに勘違いすんじゃねえ、力の差が分からねえ生意気な餓鬼に立場ってのを教えてやっただけだ」


「カカカッ!結局、放っておけなかったって事だろ」


 悪態を吐くゼニスにトキは笑う。


「…それよりも5年も何処ほっつき歩いてたんだ?ええ?言えよ、オラッ!」


 壁に寄り掛かるのを止め、ズボンに指を突っ込みながらトキを威圧する。そんなの何処吹く風と威圧など無かったと思うぐらいスルーするトキにゼニスは青筋を立てる。


「悪かったねえ、この5年で色々とやる事が出来ちまったんだ。金と暫く空けるって置き手紙もしただろう?」


「あんな内容、納得出来るか!理由も言わずにアンタはあんな手紙と金だけ残して消えやがって!!そのやる事に何で俺を連れて行かなかった!!?」


「お前さんは弱いからだ」


「この俺が、弱いだと!?」


 即答したその言葉に思わず、ガッとトキの胸元を掴んで顔を寄せる。互いに相手を睨みつけ、険悪な空気が流れる。


 先に目を逸らしたのはゼニスだった。掴んでいた手を乱暴に離してトキに背を向ける。


「チッ、本当に変わってねえなぁ。一つだけ答えろ。この5年、姿や居場所さえ掴めなかったアンタが何故今になって姿を見せた?」


「…勇者を探す為さ。この世界は今、危機に晒されている。魔王は封印から解き放たれ、世界各地で異変が起き始めた。魔王は勇者にしか倒せない。勇者が倒れたらもう誰も助からない。だからあたいは此処に居る」


 魔王は最恐であり最凶の存在だ。アルバルトの父親である前勇者ミナト・キムカエを取り込んでしまった。当時のあたい達が束になってやっと倒せた敵が更に強く、強大な力を手に入れてしまったのだ。魔王の闇を完全に打ち負かすのは勇者の持つ女神の力のみ。


 だからあの日、オーラを纏う事が出来るあたいは魔王の気配を感じる事が出来た。世界各地で暴れる魔物や魔族を討伐しに赴いては勇者を探す旅だった。


 新たな勇者を探すのは骨が折れた。女神の力の残滓がこの世界には多過ぎる。しらみ潰しに探していたがようやく会う事が出来た。


 右手に女神の力を宿した少年の名はアルバルト。姐さん…ツナとミナトの面影があった。会った時、すぐに2人の子供だと気付けたのは親譲りの目元と髪色のお蔭だ。


 片側にはレティシアという狼人族の少女が寄り添っている。使う武器にスキルの特徴、種族に異常とも言える観察力。もしやと思って聞いたが思った通り、あのタイラの娘だ。


 あたい達の次世代が勇者の元にいるなんてと運命的な物が働いているとすら思った。


 それにしてもあの喧嘩屋が子を持つなんて…それもこんな可愛いと来た。いじらしくて嫉妬深い。ついつい旅路で揶揄いたくなる愛しさだった。ぷりぷりと怒る姿は笑いが止まらない。


 そんな彼らと試しに腕試しをすると思ったよりも弱い。これじゃあ、馬鹿弟子であるゼニスの方がまだ強い。


 あたいはまだまだ強くなって貰わねばとゼニスの時みたいに師匠の真似事をしてみたが飲み込みは異様に早かった。まるでスポンジに水を吸い込ませる様に吸収するのだ。これも血かと思いながらも空いた隙に拳を叩き込むのは止めなかった。生憎、手加減は苦手なんでね。


 動きはマシになって来たし、まだ伸びしろがある。彼らの成長が楽しみになっている自分がいる。

 誤魔化さず、真面目に話し始めたトキを小馬鹿にする様にゼニスは卑屈な笑みを浮かべる。


「だから守ってやろうってか?へっ、気にいらねぇ……魔王だか勇者かなんて知らねえが試してやんよ。俺がその勇者よりも強いって事を証明してやる。そして先生の言う魔王とか言うふざけた奴も俺がぶっ飛ばせば文句ねえよな!」


 自分を置いて行った原因が勇者を探す旅路にお前の実力では着いていけないと知ったゼニスは声を荒げて叫ぶ。


 彼女を悩ませる全てを片付ければ自分の元に先生は戻って来てくれると勝手に解釈してトキに背を向けたまま、歩き出す。


「そうだねぇ、お前さんがアルバルトを倒す事が出来るか見させてもらうとするよ。…大きな壁ほど乗り越えた時、勇者は今よりも更に強くなるだろうからね」


 最後の言葉まで聞かずにトキと別れたゼニスは彼女から見えない位置にある曲がり角を進むと壁に腕を怒りを乗せて強くぶつける。


「勇者…アルバルト…絶対に俺の方が強えって証明してみせる。勝つのは……この俺だ」


 ゼニスが視界から消えたトキはガシガシと頭を掻いて息を吐く。


「大事な弟子を危険な事に巻き込みたく無かった師匠の気持ちを分かってくれると思ったんだがねぇ。なかなか伝わらないもんだね」


 金の為、店の為、武具の為、そして自分の力を証明する為に本戦へと進出を果たした彼らはそれぞれの想いを携えて舞台に上がる。


 これより先は一対一の戦いだ。人数が多い予選よりも舞台が広く使える為、様々な戦術が見られるだろう。観客も今か今かと始まるのを楽しみにしている。


 その彼らに魔の手が少しずつ忍び寄って来ているとはこの時、誰もが予想できなかった。

ゼニス

久しぶりに見た先生が楽しそうに他の奴の面倒を見ている……気に入らねぇ。俺がそいつよりも強い事を証明してやる。


トキ

今のゼニスの力では勇者を探しながら魔族を倒す旅について行けないと判断し、置き手紙をして彼を置いてきた。正直、彼が自分に対してここまで執着を見せるとは思わなくて内心驚いている。



最後まで読んでくださりありがとうございます。


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モチベーションにもなりますので、感想等もよかったら聞かせて下さい!誤字脱字も教えて頂けたら幸いです!


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