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鬼人の旅路 これは君を探す物語  作者: 直江真
第三章 ヒガリヤ 剣舞祭編
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第73話 揺れる背中

 あの騒動から場所を離れて腕がいいと言われる鍛冶屋に来ていた。


 鍛冶屋は鍛治師が腕を振るって作った武器や防具を売っている。武器の研ぎ直しもしてくれる。


 レティシアが使っている短剣が刃こぼれしてしまい、それを研ぎ直す為に寄ったのだ。


 後は自分の防具もそろそろ買っておかなければいけない。あの日の戦いで俺が使っていた防具はボロボロになってしまったからだ。

 それに大会が開催されるまでの1週間の内に依頼をこなしておきたい。


 レティシアはタイラさんから譲り受けたと言っていた短剣の研ぎ直しと新たに幾つかの短剣を購入した。

 少しでも父親の武器の負担をなくす為だろう。


 そして次は俺の番だ。

 俺もキドウさんから頂いた大剣を預ける。鍛冶師が言うには無理な使い方で切れ味が悪くなっているとの事。


 そして防具は所々が壊れているので新しく買う事にする。


「これなんてどうでしょうか?耐熱性に優れているファイアボアの毛皮を使っているらしいですよ。中はくさびかたびらで防刃性にも優れてます!」


 レティシアは防具を吟味して選んでいた。目を輝かせている彼女に任せる事にした。


「艶のある黒い毛皮にくさびかたびらね…前の防具よりも若干重いが着てみると案外しっくりくるな。値段は…銀貨3枚かぁ、まあ必要経費だな」


 優勝したら彼女の防具を作って貰おうか…それとも大剣以外にも第二の武器として何か作って貰うのも良いかもしれない。


 レティシアに選んで貰った防具を手に金を払い、購入する。剣の研ぎ直しは明日、取りに来てくれというので鍛冶屋を後にした。


「いい防具を購入出来ましたね。後は大会まで依頼をこなしましょう!ヒガリヤは宝石を体内に溜め込む魔物もいるらしいので楽しみです!」


 やはりマリアの言う通り、女の子はキラキラしている物が好きなのだろうか…。

 いや、レティシアの場合は目がキラキラというかギラギラしている感じがする。


 そういえば、マリアの本当の性格は果たしてどちらなんだろう。

 逃げ出すような真似をしてしまったが次にあった時はゆっくりと話し合いたいと今では思うようになった。


「アル…さん!…トさん、聞いてますか?」


「悪い、ぼうっとしてたわ」


 レティシアの呼び掛けでこちらの方へ戻ってきた。心配そうに俺の顔を覗き込んできている。


「早く宿に帰って休みましょう。そろそろ…眠たくなってきましたから」


「だな。俺も疲れたし、明日、色々とやる事もあるしな」


 彼女のペースに合わせて歩いていく。

 後、宿屋まで半分という所でレティシアが大きくあくびをし始めた。


「眠いなら俺が運んでやろか?今は大剣も無いし、レティシアぐらいだったら背負っても軽いから問題ないぞ?」


 ゴシゴシと目を掻いている彼女に提案すればお願いしますと言った。その仕草が結構可愛い。


「ほら、後は任せて寝てろ。まあ、男の背中で悪いがな」


 彼女の前を屈んでやれば首に手を回して乗ってくる。そういえば、初めて会った時もこんな感じだったなぁと思い返す。

 膝裏に腕を通して身体を少しだけ前のめりにして安定させる。


「すみません、ありがとうございます。重かったら言ってください、すぐに離れますから」


「大丈夫だ。飯を食べているのかと心配になるぐらい軽いから問題ない」


 本当に軽い、この小さな少女にどれだけ助けられた事か。これくらいでいいならいつでもやってやる。彼女の恩はまだまだ返せそうにない。


「ふふっ、お上手ですね。昔、父の体調が良かった日にこうしておぶってもらった事があるんです」


 背中で語り始めるレティシアに相槌を打つ。

 背負っている為、彼女の表情は見れないがきっと微笑んでいるのだろう。その証拠に声が少し弾んでいる。


「あの時もこんな感じで背中は硬いんですけど、でも何処か安心できて気付いたら寝てしまう。お散歩する時はそれが大好きでよくねだったものでした」


 レティシアはアルバルトの背中に目を細めて顔を埋める。まるで懐かしい父の背中を思い出しているみたいに深呼吸をした。

 アルバルトは何も言わずにただ黙り、極力揺らさないように気を付けながら彼女を支えて歩く。


「本当に懐かしい…」


 僅かに上下する振動と好きな人の匂い、懐かしい硬い背中にレティシアは心地良くなり、ついには寝てしまった。

 アルバルトはしっかりと落ちない様に背負い直して宿屋を目指す。


「…寝ちまったな。起こさない様、慎重に行こう」


 道中、すれ違う人々に微笑ましいものを見たという視線が俺達に集中する。

 今更だがちょっと恥ずかしい。温かい視線を受けながら俺は同じペースを守って前へ進む。


 起こさない様に慎重に進んで宿へ帰った。宿屋の店主はレティシアが寝ている事を察して黙って鍵を渡す。鍵を貰って部屋へ着くがやはりベッドは一つしかない。


 ならばと背負っていた彼女をベッドにゆっくりと寝かせ、口元に乗っている髪の毛を手で優しく払う。

 寝るのに邪魔な靴を脱がして彼女に毛布を掛ければ終わりだ。

 

 自分も装備を外して床の上に寝転ぶ。腕を折り畳んで枕代わりにすれば準備は完了である。


 目を閉じれば迫り来る眠気には勝てず、そのまま身を任せる。


数分もしないでアルバルトは夢の世界へと旅立った。

アルバルト

なんとか宿へ帰れたぞ!

慣れない馬車生活をしていたからか、眠過ぎてヤバい。


レティシア

今回は眠れる狼のお姫様。

眠さがMAX、硬い男性の背中に揺られ、息を立てて寝てしまう。

警戒心が人一倍強い彼女でも、信頼出来る仲間の背中には弱かった。

なお、その寝顔はあまりに可愛く、彼らとすれ違った男達の視線を釘づけにした魔性の女である。



最後まで読んでくださりありがとうございます。


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モチベーションにもなりますので、感想等もよかったら聞かせて下さい!誤字脱字も教えて頂けたら幸いです!


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