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鬼人の旅路 これは君を探す物語  作者: 直江真
第三章 ヒガリヤ 剣舞祭編
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第72話 登録での騒動

 時計塔を目印にして歩いていけば円形の大きな建物が見えてきた。受付はそのドーム外でやっているらしく、人混みと行列がある。


「あの列に並ぶのか…」


「そうですね。どれくらい掛かるんでしょうか…」


 鬱になりながらも最後尾に並ぶ。

 明日はどうするか、大会はどんな形式でこの人数をふるい落とすのだろうかなどと2人で会話していくうち人がどんどん進み、受付まで来ることができた。


 此処までくるのに1時間は並んだ気がする。


「お待たせしました。剣舞祭へ参加という事で間違いないですね?ご利用は初めてですか?」


「彼と参加で、利用は初めてです」


「かしこまりました。では簡単に説明させて頂きます。まず、男女に分かれて別々に試合が開催されます。本大会では武器の持ち込みや魔法、スキルの何でもありの形式となっています。怪我などについては自己責任でお願い致しております」


(自己責任…自分は怪我を治せるが無いに越したことはない、気をつけておこう)


「トーナメントに出るには予選を通過する必要がございます。予選は幾つかのグループに分けられ、バトルロワイヤル形式で勝ち残った者が本戦へと進めます。ここまで何か質問はありますか?」


「では一つ。優勝者には恩恵が受けられるという訳ですが、それは男女別々で2人分という事に間違いありませんね?」


「ええ、優勝者には主催者である我が国の王であるマーラット・アルバス・ヒガリヤ国王様から直接お言葉を頂き、優勝者の証である褒章が贈られます。それを引き換えにご要望にあった武器や防具などが作られる訳です」


 レティシアの質問にも動じずに受付の女は答えてくれた。


 成る程、予選を通過しなければ本戦に出場出来ない…予選はかなり苦労しそうだな。


「ありがとう、よく分かった。それじゃあ、改めて頼むよ」


「承りました。剣舞祭は1週間後の朝9時から始まりますので、番号が呼ばれましたら係員にこちらをお渡しください。くれぐれも無くしてはいけませんよ」


 受付の女の手には番号が書かれた四角いプレートが握られていた。俺の番号は102番、レティシアは52番だ。


「俺は102か…。この後はひとまず宿に戻るで良いんだろう?」


「そうですね。ん?……あれは何の騒ぎでしょうか…?」


 彼らの視線の先には小柄な少年がいた。どうやらアルバルト達と同じ様に受付を済ませた冒険者にちょっかいを出されているみたいだ。


「なんだと…!もう一回行ってみろよ!」


 小柄な少年が叫ぶ。それに答えたのはちょっかいを出した冒険者、大柄な獣人の男だ。


「何度でも言ってやるさ!ガキがこんな所に来るんじゃねえ。ガキはガキらしくママに甘えて大人しく寝てろや!」


 馬鹿にした笑い声を上げる冒険者に周りも釣られてくすりと笑う。

 コケにされた方は悔しそうに口を食いしばって耐えているのが見ていられない。


「う、うるさい!オレは絶対に優勝してやるんだ!お前なんか今すぐにでもボコボコに出来るんだからな!」


「へっ、お前みたいなガキに何が出来るんだぁ?怪我する前に帰った方が良いんじゃないですか〜?ほぉら、バブちゃん此処ですよぉ〜!?」


 戯けたように揶揄う獣人の男に少年は手を胸の前で握り、顔を真っ赤にさせて今にも殴りかかりそうな勢いである。


 …これは流石に止めるか。


「くそっ、この野郎!!」


 少年があの獣人に殴りかかりに行ったので素早く間に入って拳を止める。


(そんな睨まないでくれよ。ここで手を出しちゃ不味いのは考えれば分かるだろうに…)


「待て!そこまでにしろ!!」


 アルバルトに拳を止められた少年は怒り狂い、叫びを上げる。


「お前もそいつの仲間か!このクズ共め!早く離せよっ!!」


 乱暴に腕を振り回してきたので力を緩めて掴むのを止める。そして当たらない様に半歩後ろに下がって躱す。

 激昂してまだまだ元気が有り余っている少年に向かって叫ぶ。


「別にコイツの仲間じゃない。それにやるなら武道大会でやれ、此処で争っても迷惑だ!お前も煽り過ぎだぞ!!」


「おぉ、おぉ、怖い怖い。…という事だ、ガキィ!続きは剣舞祭でやり合おうぜ。まっ、お前がそこまで勝ち残れるとは思わないがな」


 少年を見るのをやめて反対にいる獣人の男にも注意する。

 肩をすくめて分かったかと思いきや、また煽る。全く懲りない男だ。


「ーーッ!もう良い!絶対に吠え面欠かせてやるからな!……覚えてろよっ!!」


 少年は力強い足取りでドスンドスンと地面を蹴ってこの場を去っていった。

 残されたのは俺と獣人の男だけだ。


 どうすんだよ、この空気。


「行っちまったな…」


「ふんっ、くだらねぇ。これだから、ぬるま湯に使ったガキは嫌いなんだ。……おい、お前。俺はゼニスってんだ、名前を聞かせろ」


「俺はアルバルトだ」


「ははっ!成る程、お前がそうか!お目にかかれて嬉しいぜ。それに噂は聞いてるぜぇ、魔族とやり合ったんだってな!面白れぇ…」


 ニタァと笑うとゼニスはとても嬉しそうだった。

 まるで子供がお気に入りのおもちゃを手に入れた様に無邪気に笑う。


「お前ともやり合う機会があったら潰してやるよ。…じゃあな、アルバルト」


 すれ違い様にそう耳元で囁いた後、男もまた去っていった。周りの冒険者も面白い見せ物が終わったと言わんばかりに散り散りに消えていく。


「あの男は一体、何がしたかったんでしょうかね」


「…さぁな、人の考えなんて誰にも分からなねぇし、俺達も帰ろう」


 遠巻きに視線を集めながらも素早くこの場から去って行く。様子を見守っていたレティシアと合流し、帰り道を歩いていく。


 それにしてもあの少年は本当にこの大会に出場するつもりなんだろうか。


 あの冒険者が言った通りではないがなるべく怪我をしないようにとあの小さき少年の無事を祈る。


最後まで読んでくださりありがとうございます。


少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマークの登録と広告の下にある【☆☆☆☆☆】で評価してもらえると嬉しいです。


モチベーションにもなりますので、感想等もよかったら聞かせて下さい!誤字脱字も教えて頂けたら幸いです!


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