第63話 Bランク昇格試験2
試験が始まり、アルバルトがユージーンに対して先制を取った所まで時間は遡る。
レティシアはミリアと対峙していた。
「あちゃー、始まっちゃったね。この前といい、今回といい本当にごめんね。あの馬鹿、信じたら一直線な人だからなかなか折れないのよね…」
ミリアは申し訳なさそうにレティシアに謝る。レティシアはいつもの様に無表情を崩さずに返答した。
「始まってしまったのは仕方ありません」
「そう?そう言ってもらえると助かるわ」
安堵して息を吐くミリアにレティシアは更に一言、自身が心の内で考えていた事を吐き出した。
「ですが、ミリアさん。貴方、本当に止める気はあったのですか?」
「……何が言いたいのかな?」
「言葉通りですよ。貴方が本気で説得したならユージーンさんがあそこまで暴走する事がなかったでしょうに…謝るという意志があるのなら、私が賭け事の対象になった際に止めてくれると思いましたが、貴方はそうしなかった。何故ですか?」
レティシアの鋭いツッコミにミリアは三角帽子を深く被り直す。その顔は気付かれて欲しくはなかったと物語っていた。
「…ばれちゃってたか。そうだよ、私は彼が本気なら止める気なんてない。それが彼のやりたい事ならね?」
「やはりそうでしたか…」
「彼に嫌われなくないからよ。彼は私の英雄だから!我が敵に裁きの礫をッ!ロックレイン!!」
ミリアが杖を高く掲げて土魔法を発動する。ミリアの頭上には幾つのも土の弾丸が形成されてレティシアに襲いかかった。
「……ッ!"疾風"」
レティシアはスキルを使って次々と来る土の弾丸を躱していく。
ミリアが杖をレティシアに向けて魔法を操作する動きをすれば、彼女の大きな胸が揺れる。そしてその魔法をレティシアが飛んだり左右に移動したりして躱せばとスカートが捲れる。
最年少でBランク昇格試験を受けるという噂を聞きつけた他の冒険者の男共はその光景に雄叫びを上げた。それを冷たい目で見る女冒険者達には気づいていない。
「流石にこれじゃ倒せないわよね…なら、水よ荒れ狂え!ウォータースプラッシュ!!」
「なっ、複数持ちですか!」
ミリアの周りに水の柱が下から上へ溢れ出してくる。レティシアは慌てて横に飛んで回避した。さっきまで立っていた所を見れば、そこは土と水が合わさり、泥が作られていた。
(あそこはぬかるみで足を取られそうですね)
「まさか本当に複数持ちだったとは…属性は水と土ですね」
「ええそうよ。と言っても私は精々その二つだけ、だけどね!」
ミリアの魔法は執拗にレティシアへ飛んでいく。杖を振るうと魔法がミリアから間髪入れずに照射され、レティシアは足をひたすら動かした。しかし、その疲れから彼女は息が少し上がって来ており、苦しそうな顔を浮かべている。その微妙な変化に気付いたミリアは搦手でいくことを決めた。
「全く本当にすばしっこいんだから!ならこれならどう?ウォーターウォール!」
レティシアの周りに水のカーテンが覆い、ミリアの姿が見えなくなり、八方から水の膜を突き抜けて岩の弾丸がレティシアに襲い掛かる。
レティシアは自分の耳を使って水を突き破って来る岩を短剣で弾き飛ばしていく。
「このままではいけませんね…風よ、ウィンドブレス!!」
彼女は地面に向かって風魔法を放ち、上空へ逃げる。くるりと回転して着地した。
水に濡れたレティシアを見て更に男の冒険者達はボルテージを上げる。そして女の冒険者は近くにいたパーティーメンバーの男を絞め上げていた。
ミリアはこれも駄目かと呟き、レティシアに話し掛ける。
「私が1人になってからずっと側にいてくれたの。だから彼のやる事なら全て肯定してみせる。それが私の本性……まあ、女の子を側に置こうとする性格は直して欲しいとは思うけどね?」
「ミリアさん…貴方はおかしいです。嫌われたくないから全部を肯定するなんて!」
「それは貴方も同じでしょう?レティシアさんだってあの人には嫌われたくない筈よ!」
レティシアは足に力を入れて地面を蹴る。それに反応したミリアが杖を振れば、土魔法で作り出した岩の礫がレティシア目掛け飛んで行く。
迫り来る魔法にレティシアは己が使える風魔法で対抗した。
「例え嫌われたとしても、大切だからこそ話し合い、意見をぶつけ合って共に成長する。それが私たちの在り方です!」
「行きなさい!ロックレインッ!!」
「ウィンドブレス…!」
目の前の降ってくる岩を強い突風で全て吹き飛ばす。そして相手が怯んだ隙にレティシアは持っている刃引きされた短剣でミリアを斬り掛かった。
「ロックウォール!そしてアースバインド!!」
「くっ…?!」
土で出来た壁でレティシアの猛攻を凌ぎ、更にその壁から土が伸びてレティシアの身体を拘束する。
「外れないわよ。風魔法は土属性の魔法と相性は最悪。ウィンドブレスじゃ、私の拘束は破壊出来ない。そこでゆっくりと見てなよ。彼が貴方の大切な人を倒す所を…あの人はユージには勝てないわ」
ミリアが指し示した先にはアルバルトがユージーンの雷槍を喰らっている姿だった。
「アルバルトさん!?」
「これで彼も終わっ…てない!?」
アルバルトの様子が少しおかしいとミリアは即座に感じた。先程までがお遊びだと思う程の気迫に押されていた。
なんだアレは…まるで魔物、いや私達があの日に戦った魔族に近い感じがする。ユージも感じ取っていたのか槍が僅かに震えている。
彼から語り継がれる言葉は暴力的で、でも彼女を大切に思っている節が伝わる内容だった。アルバルトが話す内容をレティシアは目を閉じて静かに聞いていた。
(そうです、まだ終わっていません。彼が諦めていないのなら私も諦める理由はありませんよね!)
「ミリアさん、ごめんなさい。やっぱり貴方達の仲間にはなれません」
身体全体に力が漲る。まるで血が沸騰するみたいに熱くなっているようだ。負けられない。もうお荷物にはなりたくない!
レティシアを拘束している土にヒビが入っていく。そしてレティシアはアースバインドを力任せに打ち破った。
「嘘っ!そんな馬鹿なっ!?私の拘束を力づくで解くなんて…」
「だってこの勝負、勝つのはーーー」
アルバルトとレティシアの声がシンクロする。
「「ーーー俺達だ!!/私達です!!」」
レティシア
何故でしょうか…こんなにも力が溢れて来ます。でも、これならこんな物……!
ミリア
嘘…力任せで壊せる程の魔法じゃ無いのに…えぇ…。
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