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鬼人の旅路 これは君を探す物語  作者: 直江真
第ニ章 王都エウロアエ 神が堕ちた日編
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第60話 温かい食事

 あれからレティシアに引きずられる様にハルゲル達の所に顔を出した。


 子供達から驚かれはしたがハルゲルやラーナさんが落ち着かせてご飯にしようと提案、子供達は一目散におもちゃやらが散らかっている部屋の片付けをし始める。


「ちょっと待ってな。いきなりみんなと同じ物は体に良くないからね」


 ラーナさんが料理を作るために奥へ引っ込んだ。俺はこれ以上迷惑を掛けない様に椅子に座ってただひたすら待つ事にする。


「ほら、これでも食べな」


 そして出されたものを見てみると小さな米の入ったスープ、つまりはお粥みたいな料理が出された。これはレティシアもよく食べていたルーファという家庭料理なんだとか。体調の悪いタイラさんが食べる時、消化の良い食べ物としてよく作っていたらしい。


「我らが神に祈りましょう。女神セレーネ様、我らをいつまでも見守っていて下さい。いつまでも女神の御加護があらん事を…」


 料理が行き渡るとラーナさんが席に着き、女神に祈りを捧げる。


 普段のヤンキー姉ちゃんシスターみたいなラーナさんだが、こういう姿を見るとちゃんとシスターなんだよな…。


 久しぶりの食事だったのでひと口、ゆっくりと咀嚼して食べると身体の中からじわりと温かな感覚がする。


「………美味い」


 あまりの美味さにひと口、またひと口とスプーンで掬って口に運ぶ。ポロポロと目から涙が溢れる。


「はは……うまい。美味くて…ダメだ、涙が止まらねぇや…」


 みんなが何事かと見てくるが気にしていられない。隣に座っていたレティシアが心配そうに背中を揺すってくるが大丈夫と静止する。


 前世の日本でいつも食べていた米を思い出して食べる。懐かしい優しい口溶けに口元も緩くなる。


 生きていて良かった。


 レティシア達はありきたりな料理だと言うが、そう思える程、今の俺にとっては何よりのご馳走だった。


 みんなが食べ終わる頃には皿に入っていたルーファを全部食べ切っていた。


「ご馳走様でした」


 美味かった。何も入っていない皿を見て独り言を言う。


 こんなに温かな食事は果たしていつぶりだろうか。親父とお袋と一緒に食べていた頃をふと思い出す。


 あの時はこんな光景が当たり前だと思っていた。いつまでも続く平穏な生活に満足していた。


 あんな事が起きて初めて気付いた。気付くのが遅かったんだ。あの日常が掛け替えのない大切な物だったなんて、前世で死んだあの時から幾らでも気付けただろうに…見ないふりをしていた。


 俺には今の家族が居た。それなのに前の家族を思い出すのは、なんだか悪い気がしたから考えない様にしていた結果がこのザマだ。今の俺には何も残っていない。


 食べ終わった食器は子供達が回収して部屋に帰るようにラーナさんに促される。尻尾を腕に巻きつけたレティシアとその反対側にベッタリとくっつくミミちゃんに連れられ、俺が寝ていた部屋へ歩く。


 まずはリハビリだ。衰えてしまった筋肉を取り戻さなければいけない。


 部屋に着くと彼女達はやる事があるらしく部屋を出て行ってしまった。その際に絶対安静だと念押しされてしまった。


 彼女達が部屋から居なくなるのを見計らい、部屋の片隅で試しに腕立てを始める。鬼人族の力を解放すれば恐らく治るとは思うが使ったが最後、自分自身がどうなるのか確かめるのがまだ怖い。幸いな事に彼女達の献身のお陰か身体は思ったよりも動く。


「ハッ、ハッ、ハッ!」


 身体はまだぎこちないが、それでもこうしてちゃんと動かせる。半年間寝ていたと聞かされた時は戸惑いが大きかったが問題はないようだ。


 それだけ孤児院のみんなに、レティシアに支えられてきたんだと体感する。迷惑も沢山かけてしまったから、早く前みたいに動けるようになって少しでもいいから何か手伝いが出来ればと思う。いつまでも厄介になるのは気が引けるしな。


「ハッ、ハッ、くっ…!」


 途中で腕に限界が来て身体が床に沈む。荒い呼吸と汗が身体から放出されていく。


「ハァハァ、まだまだ俺は頑張らなくちゃいけない。これ以上、迷惑かけられるか!」


 自分自身に喝を入れて腕立てを再開した。汗が額から流れて目に入って染みるが腕を曲げ伸ばしは止まらない。


 今よりももっと強く、ヘリオスを倒せるレベルまで強くなるんだと不甲斐ない自分を苛め倒す。腕が痺れて力も抜けていくが、声を張って気合を入れ直す。


「絶対に、誰よりも強く、なってやる!!」


 目を細めて強い決意を滾らせる。俺はまだまだ弱いから、今度こそ魔王ヘリオスを止める為に強くなろう。


 そして腕立てに腹筋と続けていくアルバルトだったが用事を済ませたレティシアとミミに見つかり、大目玉を食らった。ミミからは泣かれ、レティシアにはお説教を永遠と食らわせられる。


「………絶対安静だと言いましたよね?」


「すみませんでした……!!」


 ハルゲルが様子を見に来て止めるまでレティシアのお説教は続いた。



アルバルト

このルーファっていう料理、美味すぎる!

この後、男泣きしながら食べた。


レティシア

あの料理なら私も作れますね。いつか作ってあげますしょう。 

……ねぇ、私言いましたよね?絶対安静だと…で、何をしてたんですか?私が理解できる様に説明しなさい。


ミミ

無理しちゃダメって言ったのに……!


ハルゲル

お前らもうそれくらいで許してやれよ…



最後まで読んでくださりありがとうございます。


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モチベーションにもなりますので、感想等もよかったら聞かせて下さい!誤字脱字も教えて頂けたら幸いです!


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