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鬼人の旅路 これは君を探す物語  作者: 直江真
第ニ章 王都エウロアエ 神が堕ちた日編
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第28話 盗賊撃破とその後 

 俺とレティシアは2人の盗賊を倒した後、馬車に積んであった縄で身体をぐるぐる巻きにして拘束した。

 魔力を使い切った2人はこの拘束は解けないだろう。まあ、魔力を回復される前に王都へ帰って衛兵に引き渡そう。


「お疲れ様さん。荷物は無事か?」


「壊された積み木は少しばかりありますが後は大丈夫でした。アルバルトさんもお疲れ様でした」


「確認ありがとうな。早速だが、王都へ急いで帰ろう。コイツらもそうだが、早く商人へ荷物を届けなくちゃな」


「ええ、そうですね。急ぎましょう」


 俺は拘束した盗賊達を馬車の空いているスペースに乗せる。レティシアにも馬車に乗って貰い、途中で目を覚まして逃げ出そうとしないか見張ってもらう。


「よし、じゃあ行くぞ。…よいこらせっと」


 鬼の力を少し解放して馬車を動かす。なるべく揺らさない様に気をつけながら元来た道へ引き返した。


(ホーンラビットの討伐が…とんだ大事になってしまった…疲れた。帰ったらすぐ寝よう)


 アルバルトは気付かない。


 前を向いて一生懸命、馬車を引いているからだ。後ろから覗く、観察する様な暗く鋭い瞳はアルバルトを視界にずっと映し出していた。


 ◆


 あの後、運良く魔物と出会う事なく街道を進むことができた。


 王都へ到着して衛兵に盗賊共を引き渡す。お尋ね者の2人だったらしく少しばかりの褒賞を貰えた。


「まさか、お尋ね者だったなんてな…」


「ええ、なかなか手強い相手でしたよね。アルバルトさんのお力が無かったら危なかったです」


(嘘だ〜、きっと彼女1人でも十分倒す事が出来ただろうに…)


「……何か、私の顔に付いてますか?」


「いや、嬉しそうだなと思って、な」


 咄嗟に出た言葉だったが、嬉しそうだったのは本当だ。表情は相変わらず硬くて分かりづらいが、よく見れば口角が上がってる。


「それはもう、今日はいい稼ぎになりそうなので晩御飯は少し奮発しようかと思ってたんですよ」


「へー、良いなそれ。丁度、ホーンラビットの肉も手に入ったし、最高だな」


「お肉……」


 じゅるりと舌を舐める様な音が隣からしたが、レティシアに視線を向けても何も無い。


 気のせいかと思って少し軽くなった馬車を押す。すると剣を構える看板を発見した。


 アレが俺達の目指していた冒険者ギルドだ。


 馬車を冒険者ギルドの脇に止めてギルドの中へ報告に行く。


 俺達は買取場にホーンラビットのツノと魔石、毛皮を出す。肉は…そうだな、レティシアにあげよう。


 解体している為、早く買い取りが終わった。これが解体する時のメリットだ。解体の時にかかる手数料を取られないで済むのも良い。


 買取証明書を貰い、ナタリーさんへ依頼達成の報告を済ませる。


「ナタリーさん、ホーンラビットの討伐と馬車を取り返した。馬車は表に止めてあるので確認を……」


「お疲れ様でした。職員の者が只今、確認いたしますので少々お待ちください」


 きっと依頼した商人を呼んで確認するんだろう。時間が掛かりそうと思い、俺とレティシアは近くの空いている席へと座る。


「レティシア、お疲れ様。初めてのパーティーは結構、疲れたけど良いもんだな」


「お疲れ様でした。私も楽しかったです。やっぱり仲間がいると心強いです。……これからもよろしくお願いします」


 レティシアは手を此方に差し出す。俺も旅に出るまでは宜しくと差し伸べられた手を握って握手をした。


 取り敢えず、先程買取に出さなかったホーンラビットの肉をレティシアに渡す。


「これ、レティシアが貰っておいてくれ。お父さんに食べさせてあげな。それと報酬は半分で良いか?」


「そ、そんなアルバルトさんが貰ってください…!報酬も最後なんて私、ずっと役に立っていませんでしたよ?」


 肉を出した途端、目を開いて尻尾をぶんぶんさせている女の子がそんな事言っても説得力ねえぞ。顔に出なくても尻尾で十分、分かる。全く素直じゃないな。


「良いんだよ。俺はあまり腹は減っていないからな。報酬はパーティーなんだから等しく分配にしよう」


「ありがとうございます……では、有り難く貰っておきますね」


 布に包んだ肉を受け取り、大事そうに自分のウエストバックに仕舞い込む。無表情な顔も少しだけ口元が崩れている。嬉しそうで良かった。


 俺達はギルドの確認が終わるまでお互いの得意な戦い方を話し合う。怪力を使っていた男と力で渡り合っていた事について聞かれたが身体能力が上がるスキルだと言い、笑って誤魔化した。

 実際、スキルと言ったのは嘘だが、鬼人の力で身体能力が上がるのは本当だ。


 なら納得ですねとレティシアも頷いた。無表情なので本当に納得出来たのかは謎だが。


 レティシアのスキルは風纏(かぜまとい)。その名の通り、風を纏いに走れる事も出来るらしい。


 魔力もそこまで消費しないので結構使えるらしい便利なスキルだ。俺も自分だけのスキルが欲しいものだ。


 ぶっ壊れの鬼人族の力があるので高望みかも知れないけど、親から引き継がれる力にどんなのか興味はあるからな。


 レティシアと次はどんな依頼を受けたいかなど話しているとナタリーさんに呼ばれる。


 どうやら荷物の確認が済んだらしく、売れない商品はあったもののこれだけ取り戻したという事で報酬に色を付けてくれると言う事だ。


(ありがたい…臨時収入もあり、今日は凄く稼げた)


 報酬はレティシアと2人で半々に分け合う。


「明日はどうする?ここで昼ぐらいに集まるか?」


「そうですね、今日と同じ時間でお願いします」


「おう、じゃあ明日も宜しくな!」


 冒険者ギルドを2人で後にする。期間限定だがパーティーを組んで今日は本当に良かった。レティシアの速さと俺のパワー。これから先、別の奴とパーティーを組む機会がもっとあるかも知れない。


 お互いに連携を取れれば、戦略の幅が広がる。俺自身がもっと強くなる為にも必要な経験だ。


 アルバルトとレティシアはお互いに様々な想いを馳せる。そんな彼らを祝福する様に夕焼けが彼らを明るく照らしていた。


 そんな彼らを遠くから見つめる人影がいる。


「…僕のレティちゃんを誑かしやがってあの男、許さないからな!!」


 その人影は彼らの背中が見えなくなるまで睨み付けている。怨念とも言える呪いの言葉を吐き続ける人影はレティシアの隣に歩いているアルバルトに目線を固定していた。


 アルバルトは突然、身体を震わせる。


「なんか…寒気がした様な…」


 また新たな波乱が来る予感がしていた。







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