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鬼人の旅路 これは君を探す物語  作者: 直江真
第ニ章 王都エウロアエ 神が堕ちた日編
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第26話 ホーンラビット討伐依頼1

 あれから俺達は王都を出て西の街道を徒歩で進んでいた。


 馬車を借りるという手段もあるがいかせん金がかかり過ぎる。仕方ないので徒歩になったというわけだ。


 レティシアもそれには賛同してくれた。狼獣人は身体能力が高いのでこれぐらいなら問題ないそうだ。


 レティシアがギルドでホーンラビットの依頼書を出した時に依頼の詳細内容を教えて貰った。


 その内容は商人が王都へ向かっている途中、休憩という事で街道から少し離れた所にある大きな木の影で休んでいると馬車の方から自分の馬の鳴き声が聞こえた。


 いつもならこんな大きな声で滅多に鳴かない愛馬がどうしたのかと近寄ってみると馬車の積み木から物音がしたという。


 急いで確認するとホーンラビットが数匹、積んである食べ物を食い漁っているじゃないか。ホーンラビット達と目があった商人は危険を感じて荷物はそのまま、急いで愛馬と一緒に逃げてきたという話だ。


 命は助かったもののこれでは商売が出来ない。出来れば食料は諦めるとして他の荷物だけでも回収してきてくれというのが今回の目的である。


 だから相場よりも多く、この料金設定がされたという事らしい。


 しかし、ホーンラビットか。奴らはすばしっこい上に立派なツノがある。それも複数となるととても厄介だ。


 ホーンラビットについてレティシアと話しながら街道を道なりに進んでいくと話にあった大きな木が見えてきた。しかし、馬車は何処にも見当たらない。


「レティシア、聞いていた話だと大きな木のすぐそばで襲われたらしいんだよな。でも馬車が見当たらないぞ」


「そうですね、もう少し近くに行って調べましょう」


 俺達は大きな木の側まで近づいて周辺を探る。草の根を掻き分けてみると目の前にホーンラビットがいた。慌てて距離を取る。


「うわっ!レティシア、ホーンラビットだ!」


 俺の声に反応してレティシアとホーンラビットが近くに寄ってきた。ホーンラビットは荒ぶっている様子だ。


「キュー!!」


「アルバルトさん!ご無事ですか。ここは私に任せてください!」


 レティシアはそういうと俺とホーンラビットの間に立つ。レティシアは両手に短剣を構えると同時にホーンラビットは攻撃を仕掛けてきた。


 その可愛らしい声とは裏腹に鋭く凶悪なツノを此方に向けて飛んでくる。


 ホーンラビットは攻撃する時に身体を前に倒す仕草を見せるので要注意だ。後ろ足を前足よりも大きく蹴る事でとてつもない瞬発力を発揮する。油断すると俺みたいに身体に穴を開けられるので見極めが必要だ。失敗するとかなり痛い。


「……そこ!」


 レティシアはホーンラビットの攻撃を持っている短剣で器用に弾く。攻撃を弾かれたホーンラビットはくるくると宙で回転しながら上手く着地する。


「これで決めます!"疾風(アクセル)"」


 いつも無表情な顔を少し歪ませてホーンラビットへ突撃する。魔力を足に通して土が抉れる程の力を込めてレティシアは走る。


 その姿はまるで風と一体になっているようだ。


 ホーンラビットも迎撃すべく、再び身体を前に倒す。これは飛びかかる前動作だ。


「キューィ!」


「はぁーー!!!」


 レティシアは飛びかかってきたホーンラビットのツノを短剣の側面で受け流し、剣先を変えてツノを上に弾く。空中で身動きの取れないホーンラビットの首筋に短剣を突き刺した。


 ダメ押しと言わんばかりに彼女は小柄な身体を回転させて遠心力と体重を使い、敵の身体に刃を切り込み、首を掻き切る。


 ホーンラビットはどさっと倒れ落ち、動かない。その様子を見て俺達は武器の構えを解いた。レティシアはいつの間にか無表情に戻る。


「アルバルトさん、終わりました」


「ああ、凄かったよ。すばしっこいホーンラビットをあっさりとなんて」


「ありがとうございます。スピードには自信があったので……さて早く解体しましょうか。少し待っていて下さいね」


 先程倒したホーンラビットはレティシアの手によって解体されていく。解体は得意では無いので正直助かる。


「それにしてもレティシアのスキルは足が速くなるのか?まるで風の様な速さだった」


「……ええ、私のスキルは風纏(かぜまとい)。風を己の身体に纏わせる事が出来る能力です。今はまだ足にしか纏わせる事が出来ないですが、それでもかなり便利だと思ってます」


 話しながら待っているとレティシアが解体が終わったことを告げた。


 手元を見るとツノや毛皮、魔石に布に包まれた肉がある。


 俺はツノと肉を彼女は毛皮と魔石をお互いに分けて仕舞い込む。俺のは魔法袋の為、このくらいなら嵩張る事はないから安心だ。


「ありがとう。俺はまだ解体に慣れてないから助かったよ」


「いえ、大丈夫です。それよりも馬車は何処に行ってしまったんでしょうか?」


「確かにな。聞いていたホーンラビットも1匹しか居なかったし、まだこの辺りをよく調べてみよう」


 俺達はホーンラビットがいた所を中心に手掛かりはないかと探ってみる。手探りに探すが何も見つからない。


「アルバルトさん、此方に来てもらえますか?」


 レティシアが何か発見したのか。急いで呼ばれた方へ行く。


「これを見てください。ホーンラビットの体毛と食べ物の残骸です。おそらくここに馬車があったと思います」


 ホーンラビットの体毛と血痕、そして齧られた果物の残骸。これは当たりだろう。


「確かに毛と食べ物の残骸だな。でもやっぱり馬車が見当たらないな。ホーンラビットは馬車を引けるほどの力はない筈だし、そもそもあの魔物にそんな知能は無い」


 レティシアは顎に手を当てて考える。彼女の獣耳がピーンと立った。何か閃いた様だ。


「私にも分かりませんがホーンラビットにこんな事が出来るとは思いません。きっと誰かがホーンラビットを討伐した後、馬車を見つけて盗んだというのが考えられますね」


「可能性はあるかもな。ホーンラビットの事は一旦置いて馬車の痕跡を探そう」


 馬車が盗まれたのなら何処かに痕跡がないか調べる。

 そして俺とレティシアは馬車を引いて出来た車輪の痕跡を見つけた。



「これは…!」


「跡を追ってみましょう」


 その跡はこの大きな木から街道へ出て西へと続いている。俺達はその跡を追って更に西へと向かうのだった。

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