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鬼人の旅路 これは君を探す物語  作者: 直江真
第ニ章 王都エウロアエ 神が堕ちた日編
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第25話 レティシア再び

 ハルゲルとの一騎打ちから数日、俺はCランクのクエストをひたすらこなしていた。


 金の件もあるが、真の目的は魔大陸へ上陸する事。そこはAランク以上の冒険者しか立ち寄れないからだ。


 俺はゴブリンにヘルハウンド、ホーンラビットなどを討伐、片手間に薬草を採取して金を稼ぎ、丈夫な皮の防具などを冒険者にとって必要な道具を買い揃えていた。


 ゴブリンは全身緑色の子供みたいな感じだ。醜悪な顔に臭いがめちゃくちゃキツいので最悪だった。


 糞尿を武器に塗り付けて攻撃して来るから遠距離からの魔法で対処する。


 ホーンラビットは前世にいたフワフワとしたうさぎにごつくて長い一本のツノを額に足した感じだ。


 此方を見るとキューと可愛く鳴いて近づいて来る。可愛くて撫でようと腰を下ろしたら突進された。


 油断大敵、どんなに可愛らしくても野生の生き物。ツノで身体を刺された所は穴が空いて非常に痛かった。


 取り敢えず、鬼人の力で治療しながら討伐を出来はしたが、2度と見た目には騙されないと誓った日だった。


 昼間にお金を稼ぎ、夜に酒場で俺の両親を探す為、特徴を伝えて聞き込みをする。


 金を払わないと情報を渡さないと言うやつもいたが払ったとて大した情報を持っていなかった。噂では魔大陸へ向けて空を飛んでいた人らしき黒い影を見たとか、それが1番の有力情報だ。


 金を稼いで情報を集める、そんな生活を続けている。


 そして今日、冒険者ギルドへいつもの様に足を運び、掲示板を見ている。今日は何かいい依頼がないかと吟味していると受付嬢のナタリーさんに声を掛けられた。


「アルバルト様、あちらにアルバルト様のお客様がお待ちになっております」


 手で示されたテーブル席へ視線を移すとそこには数日前に助けた少女、レティシアがいた。


 身体を小さく丸めて自分の尻尾をもふもふしている。


(何だあれ、可愛いかよ)


「おーい、レティシア。……久しぶりだな。お父さんの様子はあれからどうだ?」


「あ、アルバルトさん。先日は助けて頂き、ありがとうございました。おかげさまですっかり良くなりましたよ」


 レティシアは座っていた椅子から立ち上がり、こちらにペコリとお辞儀する。


「ああ、治ったなら良かったよ。もしかしてそのお礼を言う為に待ってたのか?」


「確かにお礼もする予定だったんですが……少々、お願いしたい事がありまして待たせてもらいました」


(お願い…?一体なんだろうか)


 取り敢えず、聞いてみなければ分からないので話を促した。


「アルバルトさん、私と一緒にパーティを組んでは頂けないでしょうか?」


 パーティー。それは冒険者同士がタッグを組んで同じ依頼をこなしていく集まりのこと。


 報酬はソロと受けた時と同じだし、パーティーを組むと受けられる依頼がパーティーの中で1番低いランクに合わせられる。一見、旨みが少ない様に見えたりするがメリットもある。


 それは連携が取れるという事。自分では叶わない、達成出来ない依頼をパーティーを組めばお互いがお互いをフォローする事が出来る為、ソロよりも比較的安全に依頼を達成しやすい。


 冒険者は身体が資本だ。まずは怪我をしないそれが重要である。


 この数日中、ハルゲルやナタリーさんからソロとパーティーのメリット、デメリットを聞かされていた。


 しかし、俺がパーティーを組むとなると問題が発生する。


 金を稼ぎ、季節の変わり目にはこの国から旅立つ予定だ。それにレティシアには父親がこの国で暮らしている。パーティーを組んでも良いがいずれ別れる事になるだろう。後は鬼人の力。全部スキルによるものです、魔法です、で納得してくれれば良いがボロが出そうで怖い。


 さて、此方をじーっと見続けてくる少女にどう断ろうか。


「気持ちは嬉しいが今のところ、パーティーを誰かと組もうとは思っていないんだ。それに俺はこの春の季節が終わったら国を立つ予定だから組んでも少しの期間しかいられないし……」


 パーティーを組めない理由をレティシアに話す。しかし、それでも彼女は諦めなかった。


「そうですか、分かりました。ですが、旅に出るまでの間で良いのでパーティーを組んでください!…お願いします」


「いや、だからな。組もうとは考えてはな…?」


「お願いします」


「あの…」


「お願いします」


「……………はい」


 なんというか目力が凄い。無表情だが断る度に顔がどんどん険しくなっていく。


 クールな子だと思っていたのに、なんて頑固なんだ。後は周りからの目線が痛い。


「ありがとうございます。……では、パーティー結成という事で良いですよね?私はパーティーの結成を受付に報告して来ますので、少し待っていてください」


「ああ、分かった……手続きは宜しくな」


 レティシアが先程まで使っていた椅子に座り、テーブルにうつ伏せになる。


「うわぁー、最近の子って大人しそうに肉食系なのな…」


 これからどうしようと項垂れていると受付へ報告が終わったレティシアが帰ってきた。


「終わりました。これで私達は今からパーティーです。パーティー名は黒い牙(ブラックファング)にしました。よろしくお願いします」


 黒い牙(ブラックファング)。なんだろう…カッコいいじゃないか。名前は厨二病っぽいが少しだけ心が踊った。


「ああ、これから宜しくな。今から依頼を受けようかと思うが大丈夫か?」


「はい、私は大丈夫です。早速、行ってみましょう」


 テーブルから離れて先程見ていた依頼書が貼ってある掲示板へ歩く。前を行くレティシアの後ろ姿を見てどういう人物か勝手に想像した。


 まず、レティシアの考えている事が顔からじゃ読み取れない。整っているが無表情なのでちょっと不気味である。


 ちなみに俺の方が身長は高いので必然的に彼女が自然に上目遣いになって可愛かったりする。


 後は耳と尻尾だな。今は耳はぴこぴこ動いて尻尾もゆらゆら揺れているのでご機嫌っぽい感じがする。今度から耳と尻尾で機嫌を判断しよう。


 掲示板へはすぐにたどり着く。何か良いのがないか見てみるとレティシアが一つの依頼書を取る。


「これはどうでしょうか?ここから西にある街道にホーンラビットが出現したらしいですね。報酬が1匹あたり銅貨15枚となかなかです」


「ああ、確かにいつもなら1匹あたり銅貨10枚ぐらいが相場なのにな。それだけ数が多いって事かも知れない。後は荷物を取り返してくれか……一体どういうことなんだ?」


 ホーンラビットだけなら破格だ。荷物を取り返してくれというのはどういう意味だ?報酬も荷物を取り返したら追加で銀貨2枚か。


「恐らく、ホーンラビットに襲われて荷馬車が奪われたんでしょうか?取り敢えず、何もなければこれにしましょう。私の実力を見せるには丁度いい相手です」


 俺が大丈夫と返せば、レティシアは依頼書を剥がして受付へ行く。


 俺はその後ろに着いていく。果たしてレティシアの実力はどれ程かと少しだけ興味を持ちながらクエストへ出発した。

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