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鬼人の旅路 これは君を探す物語  作者: 直江真
第ニ章 王都エウロアエ 神が堕ちた日編
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第22話 アリーダとポーション

 門番に止められたが何とか通過出来て良かった。

 流石に血を流している二人組なんて止められるわな。


「レティシア、俺はまだ王都へ来て浅いんだけど傷薬とか売っている所は知ってるか?」


「お薬……ならこの先を真っ直ぐに行くと薬屋さんがある筈です」


 レティシアの案内の元、その店へ歩いていく。流石にこんな状態で子供を親に返すわけにもいかない。案内されて着いた先は今朝、俺がボロボロで怪しいお店と思った所だった。


「ここかぁ……本当に此処で間違いないか?なんか見た目、薬は薬でもやばい薬を勧められそうなお店なんだが…」


「ここで間違いないです。私がよくお世話になっている所ですから」


 本人が間違いないと言うのだから取り敢えず入ってみる。それにしてもよくお世話になってるか…。


 中に入ってみると瓶に入った緑色の液体や青色の液体、それから薬草だと思われる様々な草が壁一面にずらっと並んでいた。目の前のカウンターには何やら座り込んで作業している若い女性が目につく。


「邪魔してすまん、至急傷を治す薬が欲しいんだが売ってもらえるか?」


「おや、お客さんかい?アリーダの薬屋へようこそ、私が店長のアリーダさ。それに後ろの子は…レティシアちゃんかい?」


 作業している手を止めて振り返る女性は金髪メガネで白衣を身に纏っている。胸の辺りの白衣から押し上げる存在感は凄まじい。


 アリーダの声に反応して背中に引っ付いているレティシアちゃんがひょこっと横から顔を出してアリーダに声をかけた。


「アリーダさん、お世話になってます。アルバルトさん、降ろしてもらっていいですか?」


「はいよ」


 背負っていた彼女を下へ降ろしてアリーダへ再度傷薬があるか質問した。


「えーとアリーダさん。傷薬はあるか?見ての通り彼女が全身傷だらけなんだ」


「確かに見たところ2人ともボロボロだね?薬っていうならそこに置いてあるポーションがオススメさ」


「ポーションね…それを使えば良いのか?」


「アルバルトさん、薬屋さんっていったらポーションが有名です。怪我を治したり体力を回復させたりと出来るんですよ」


「へぇ…実物を見るのは初めてだが、こんな色してたのか…」


 ポーションという存在に驚いているとアリーダさんが呆れたな顔を此方に向けていた。仕方ないじゃないか…村だとポーションなんて必要なかったから本の知識でしか知らないんだ。


「あんた、仮にも冒険者だろう?そのぐらいは知っていなきゃ駄目さ。ほれ、レティシアちゃんに飲ませてあげな」


「でも、私あまり手持ちが……」


「いいさね、代金はこっちのお兄さんから貰うから。でしょ?お兄さん」


「ああ、それでいい。このまま返す訳にもいかないしな」


「いいんですか…?ポーションって高いんですよ」


「いいんだよ。それにもし俺が父親の立場で自分の子供が傷だらけで帰って来てみろ。すっげぇ驚くだろうからな。そんなの嫌だろう?」


「…分かりました。では、お言葉に甘えて頂いておきます。また今度、お礼をさせて下さいね」


 グビッとレティシアはアルバルトから渡されたポーションを一気に煽る。するとキラキラとレティシアが光り出し、傷が徐々に治り始めていく。


「驚いたかい?これがポーションさ。軽い傷程度ならこんな風にすぐ治しちまうのさ。冒険者なら常備しておく事を勧めておくよ。後、代金は銀貨1枚ね」


 へぇ、何本か買っておいて鬼人の力で治す時に誤魔化したりする事が出来るかも知れないからな。


「分かった。それと後2本ぐらいくれ。代金は銀貨3枚だろ?」


 金を渡してアリーダからその分のポーションを確保する。試験管みたいな小さい瓶を2本受け取る。それを割れない様に腰にある魔法袋に収納する。この中に入れておけば、動いても割れないだろう。


「さてとお兄さんの用事は済んだかな。次はレティシアちゃんかね」


「はい、この薬草をお願いします」


「はいよ。ちょっと待ってな」


 レティシアが彼女に森で取ってきた薬草を渡すとアリーダさんは奥へ引っ込んでいく。


「レティシア。あれはどういう事なんだ?」


「私は薬草を多めに持って来る事で代わりにアリーダさんからお薬を作ってもらう契約をしてるんです。普通に買うとなると高いですから」


「成る程な。アリーダさんも得するし、レティシアも得をするという事か」


「そうなんです。後、先程はポーションありがとうございました。この御恩はいずれ返させていただきます」


 ペコリと頭を下げるレティシアの頭部に手をポンと軽く乗せる。


「分かった。楽しみにしているよ」


「あー、いい所悪いさね。はいコレを、解熱剤といつものお薬さ」


 タイミングを見計らったかの様に奥から現れたアリーダが声をかける。レティシアがその薬が入った袋を受け取る。


「はいはい、お兄さんとレティシアちゃんは用事が終わったら出て行くさ。営業の邪魔だからね」


 背中を押されたまま、店から外へ出ていくとアリーダはアルバルトに声を掛けた。


「本日はありがとう。また薬が欲しくなったら来るんだよ!お兄さんはレティシアちゃんを送って行く事!優しいお兄さんなら分かってるかね…?」


「分かってるよ。また利用させて貰う。さあ、行こうか。案内また宜しくな」


「分かりました。アリーダさん、お薬ありがとうございました。また今度、薬草持って来ます」


 鬼人と狼人の2人は別れを告げ薬屋を後にする。後ろからそんな2人を見てアリーダは小さく手を振ってお別れした。


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