表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼人の旅路 これは君を探す物語  作者: 直江真
第一章 旅立ち
13/148

第13話 リサーナとの対決1

「本当に今日はありがとうございました!料理もとても美味しかったです!」


「いえいえ〜、いいのよぉ。美味しかったなら嬉しいわ〜」


「おぅ、今日はめでたい日だったからな!リサの奴はまだ眠っているが起きたら旅の事を伝えておく」


 あの後、リサ達がいる部屋へ戻ってみるとランヌさんは目を覚ましていたがリサはまだ気絶したままだった。いつの間にか夜遅くになっていたので帰ることを伝えると2人が玄関まで見送りに来てくれた。


「はい、リサに知られるとついて行くと言いそうなのでよろしくお願いします」


 今までありがとうございましたと深く2人に頭を下げる。


「はいはい〜、これから頑張ってね、いつでも帰ってきていいから」


「親父探し頑張ります!それとランヌさん達にも会いたいので時々帰ってきますね」


「あら〜まぁ〜」


 笑顔で返事を返す。ランヌさんと話し終えるとキドウさんが何かを持ってこちらに差し出してくる。


「アルバルト、これをやろう」


 受け取るとそれは黒い刀身の大剣だった。なんとか片手で持ち上がるぐらいの重さがある。


「これはワシが世界を旅していた時に使っていた相棒だ。一緒に連れて行ってくれ」


「頂いていいんですか!?それに俺は剣なんて使った事無いですよ」


「それでも素手よりかは良いだろう。それは持ち主の魔力を吸い込む事で切れ味を増す事やエンチャントなんかも出来る。頑丈だからきっと役に立つだろう」


 キドウさんから良い物を頂いてしまった。大剣の鞘に付いているベルトを身体に括り付け背中に背負う。重たいがトレーニングだと思えば気にはならない。


「私からはこれよ〜。きっと役に立つわぁ」


 ランヌさんからはウエストバックを貰う。これなら戦闘中でも邪魔にはならないだろう。


「それはね、魔法袋(マジックバック)っていう魔導具よ。その見た目の倍以上は物が入るから大切に使ってね〜。取り出したい物は念じながら取り出せるからね〜」


 魔法袋…確か冒険者だったらまず手に入れるべきアイテムの一つだ。それ相応の値段もするから本当に貰っていいのかと思ってしまう。


「本当に…何から何までありがとうございます!大切に使わせて貰います」


 お辞儀をするぐらい頭を下げて2人に別れを告げ、自分の家へ向かって歩き出す。今日は久しぶりにとても楽しかった。あんなに笑ったのはいつぶりだっただろうか。


 家に着くとベルトを外し背負っている大剣を部屋の片隅に立てかけて布団に横になる。


 明日は早く出発して王都へ向かわなければ。ここからだと船で海を渡って大陸へ行かなければいけないので明日到着する予定の商船に乗せてもらう手筈になっている。


 その船もキドウさんにお願いして乗せてもらう事が出来た。キドウさんには本当に世話になってしまっている。後で帰ってきた時にでも何か珍しい物を送ろうと思う。


 目を閉じて眠る。やはりリサの事が気になったが眠気に勝てず、俺は眠りについた。


 朝日が顔に当たって体温が上昇する。


 そろそろ起きるか。もう朝か、彼女が来る前に起きて行かなければ。


 腕を上に組み、そのまま伸ばして身体をほぐす。薄らと目を開けると目の前にはリサの顔しか見えなかった。そう、此方を上から覗き込むリサがいた。


「…っ、リサどうして部屋の中にいるんだ」


「お父様に聞いたぞ。やっぱり、今日出発するんだね。私に黙って居なくなるなんて酷いじゃないか。私は悲しくて悲しくて…」


 目を合わせたまま、俺の身体の上に跨って来た。目を見開いて戦いの時の様にギラギラとさせている。


 怖い…いつも明るい感じのリサじゃない!誰か助けて。


 彼女は俺の肩に手を置き、ずいっと顔を近づけてこう言った。


「どうにかなってしまいそうだよ」


「ひっ、ごめん!悪かった!ちゃんと話すから許してくれ!」


「…では話を聞こうか」


 リサが上から退いてくれた。めちゃくちゃ怖くて心臓がドキドキする。正直、ちびりそうだったが何とか堪える事が出来た。


「ほら、たまには朝食を私が用意したんだ。一緒に食べようじゃないか」


「あ、ああ。食べようか」


 彼女の後ろをついて行き、リビングへ向かう。


 朝食を食べる為、リビングに足を運ぶとそこには様々な肉料理が並んでいた。骨付き肉やステーキ、肉野菜炒めなど沢山ある。


 まさかコレを全部1人で用意してくれたのか、目の前の肉料理に目を取られ、少し心が躍る。


「いただきます……うっま」


 椅子に座り、目の前のご馳走に箸を動かして口に運ぶと噛めば肉汁が出て来て物凄く美味い。マジで料理出来たんだと心の中で思う。


「ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいよ。これからは毎日作ってあげよう。私の料理もなかなかいけるだろう?」


「いやまあ、美味しいけど毎日って…その…」


 その後も食べ続け、食事が終わった所で話を切り出す。


「リサ、俺は今日から旅に出ようと思ってる」


 途端にリサの目が鋭くなる。此方を睨みつけて恐ろしい。彼女が怒ったのは久しぶりに見た。


「旅か、旅ね。私に何も断りも入れずに行こうなんて酷いじゃないか。まあ、言っても絶対に行かせないがね」


「それは悪かったよ。引き止められて決心が鈍りそうだったからごめん。それに島には年に一度は帰る予定だったんだ」


 この5年間ずっと考えていた。早く外の世界へ行き、親父を探したいと。後はこの世界がどうなっているのか見てみたいという感情もある。


「駄目だ…!アル、君は弱い!外の世界は危ない所だと何度も言ってるだろう!?この村で暮らしたら良いじゃないか!何でわざわざ出て行こうとするんだ!」


 ガタッと席を立ち、姿勢を前のめりになりながらも捲し立るように話して来る。


「俺の親父は知ってるだろ?失踪したアイツを探してあの日の真相を聞き出すんだ!…母さんもまだ何処かで生きているかもしれない!」


「アルの父君なら私も知っている。でも無謀だよ。いなくなった人を探し当てるのなんて無理に決まっている!それに世界を回りたいだと?なら私も連れていけ!私が君を守ってあげられる!」


「無理かどうかは試してみないと分からないだろ。後、お前は連れていけない。成人するまでは島の外に出てはいけないと村の掟で決まっている筈だ」


「そんな物!…いいや、此処で言い争いをしても時間の無駄だ。鬼人族らしく…決闘で勝負をつけようじゃないか」


「……分かった。その勝負受けよう」


 目を鋭くさせ睨みつける様に視線を送る。


 コイツに黙って出ていこうとした自分も悪いが何より此処で勝負しなければ意地でもついていきそうな感じがする。流石に掟を破らせるわけにはいかないので受ける事にしよう。


 負けたらまぁ、キドウさんに話してリサーチを捕まえていて貰い、その隙に逃げ出してしまえばいい。どうせ、追って来れないからな。


 それに舐められっぱなしは俺のプライドが許さない。


「決まりだな、場所は昨日の広場だ。時間は覚悟が決まったら来い。そこで待ってる。」


 リサはそう言い残すと部屋から出ていった。鬼族の視力は見ようと思えば数キロ先まで見る事ができる。こっそりと出て行こうとしても気付かれるだろう。監視されていると見て良い。


 ため息を吐きながら簡単に挑発に乗ってしまった自分に嫌気が差す。


 服を着替え、顔を洗い、持っていく荷物を整理する。


 料理に使用した皿を洗って食器棚へとしまう。腹ごなしに庭に出て軽くストレッチを行い、筋肉をよく解してから鍛錬をする。


 船の待ち合わせもあるので約束の時間に間に合う様にしなければいけない。


 ちょっと急ぎながら背中に大剣を背負い、腰に魔法袋を装着し、手提げ袋を肩にかけて出発した。魔法袋には金貨と銀貨を入れ、手提げ袋には銅貨を入れる。一応、どちらかなくした時でも大丈夫な様にするためだ。


 俺の全財産は金貨1枚、銀貨20枚、銅貨50枚だ。この5年間は色々とキドウさんに仕事を紹介してもらって貯めた額だ。この世界でお金の種類は白金貨、金貨、銀貨、銅貨の4つである。価値は大体前の世界と比べるとこんなもんだ。


 白金貨 1枚 1千万円

 金貨 100万円 10枚で白金貨1枚分 

 銀貨 1万円 100枚で金貨1枚分 

 銅貨 100円 100枚で銀貨1枚分


 これだけあれば次の街で辿り着いて生活する事も可能だろう。そして辿り着いたら冒険者になって今よりも稼ぐ。目標はある程度、稼いだら次の街へって感じだ。


 村の中を歩いているとすれ違う度に村の鬼達から視線を感じる。それはそうか、村の半端者が大きな荷物を持って外へ出ていこうとしているのだから。


 その視線の中にはキビトとキツネ目の少年、リリーとララの姿もあった。


 此方を見る訝しげな視線を掻い潜り、昨日のキャッチボールをした広場を目指す。すると人影が見えて来た。


 風に吹かれ、丘の方から流れてくる桜の花びらと一緒に光り輝く長い銀髪が揺れている。黙っているとお淑やかな感じもするが口を開けばそのイメージは簡単に崩れ去るだろう。


「やっと来たな、よく逃げずに来た」


「いつまでも弱いと思われるのは嫌なんでね」


 荷物を下ろし、適当に地面に突き刺さってる岩の所に大剣を立てかけておく。流石に素手と刃物じゃ怪我をしてしまうかもしれないし、まだ使い始めたばかりだ。慣れない武器はかえって邪魔になる。手提げから銅貨を1枚取り出す。


「じゃあ、始めようか。俺が合図をする。」


「ちょっと待て、もし私が一度でも背中に土を付けられたら君の勝ち。逆にアルが参ったと言えば私の勝ちって事にしよう」


「いいのか、いつもなら参ったと言わせたら終わるのに」


「大丈夫、コレもハンデだ。負けるつもりは毛頭ないのでね。それに私はまだ君に本気を見せていない」


 赤い目がギラギラと輝いている。ハンデがあっても負けないという自信があるのだろう。ならば此方も全力で迎え撃つまでだ。


「分かった、後悔はするなよ。じゃあ、この銅貨が下に落ちたら試合開始だ」


 お互いに自分なりの構えをして相手を見据える。袋から取り出していた1枚の銅貨を指で弾くとコインが空中を舞う。くるくると回転しながら地面に落ちた瞬間、お互いに動き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ