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鬼人の旅路 これは君を探す物語  作者: 直江真
第三章 ヒガリヤ 剣舞祭編
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第114話 マリアとヴィーラと旅の仲間

 俺とレティシアはマーラットと別れた後、オーダーする品を決めて次の日の朝には王城へ提出しに行ったのだった。


「はい、承ります。後日、迎えの者が行きますのでその者に同行して此処へお越し下さい」


「分かりました。宿は…」


 レティシアが門番に当日の事について詳しく話を聞き、俺達が泊まっている宿を教える。


 これでその日は迎えが来るまで宿へ待機していれば良いと言う訳だ。


 俺はキドウさんから貰った大剣がある為、防具を頼む事にした。

 土蜘蛛のせいでぶっ壊れた防具の修復を買ったお店で頼んだが、ここまでボロボロだと買った方が安いとまで言われてしまい、かなり悩みに悩んだ。


 幾ら身を守る為の防具だとしても、人から選んで貰った物だから大切にしようと決めたのに僅か1週間程でぶっ壊れるとは想定外だし、新たに購入しようとすれば出費も嵩む。


 取り敢えず、その場で買うのは一旦保留にした。防具だって安くは無い。金も掛かるとなれば尚更だ。

 今回の賞品で賄えばいいという思惑もあったので少しがめついが、マーラットに貰った紙に希望する防具の部位と性能を書き加えた。


「なぁ、レティシアの方はもう決まったのか?」


「私は短剣にしようかと思います」


 反対にレティシアは今回の件で自分には攻撃力が足りない事を自覚した。強敵との戦いにおいて素早さは持ち合わせているが、力が後一歩足りないとの事だ。


 狼獣人としてはかなり力がある方だと思うのだが、本人は満足していない。成人男性と同じぐらいには力を持つ彼女だが、それでも納得はしない。何処までも強さに貪欲の様だ。


「……希望通りに出来上がると良いですね」


「…だな。軽くて頑丈な奴を頼んだけど果たしてどんなのが出て来るのか…今から楽しみだな」


 此方の希望を書いた紙の提出も終わった。

 その後は疲れを癒す様に食べ歩きや出店で掘り出し物を見に行ったり、魔法を使った曲芸を見たりして時間を過ごしていく。


 嗅覚が鋭いレティシアは食べ物屋を探す上で大活躍だ。花丸をあげても良いぐらい入る店にハズレがない。


「ゴクリッ……良い匂いです…!」


「ボリュームもあるし……美味そうだ」


 テーブルに並べられたサラダや肉料理に大量のチーズが掛かったリゾットなど香りだけで涎がドバドバと出る。


 美味い酒、美味い料理に俺とレティシアは目を輝かせ、無我夢中で腹の中へ詰め込んでいった。


 ……何故か、行く先々の食べ物屋にマリアがいてテーブルの上に所狭しと皿を積み上げていた事に驚いたがな。


 ヴィーラ達と合流して一緒に酒を嗜んだのは良い思い出だ。


「ヴィーラはどうして此処へ…?」


「聖女様がどうしてもと…あれ程、危ない目に遭ったのですから暫くは外出しないで下さいと言っていたんですが…七英雄のトキ殿がその会話を聞いていたみたいで警戒は任せてくれと言われてしまい…」


 確かにあのトキが言いそうな事である。


「……で、連れて来たというわけか。マリアは…スッゲェ食ってる。食費だけで恐ろしいよ。頑張ってんだな、ヴィーラも…ほら、お酌でもするから」


「……すまない。少し頂こう」


 レティシア達はどうしているのか気になって様子を伺うと何だか食べ物で張り合っている。手元にある皿を相手に差し出してオススメしあっている。


「これが1番美味しいです!」


「それに目を付けるとは……なかなかやりますねぇ。しかし、これを食べても…そう言えますかね?」


 というレティシアとマリアの会話が聞こえて来た。食に拘る彼女らが喧しい。


(……相変わらず、仲が悪いのか良いのか、よく分からん)


 その光景を呆れた様に見ていたら2人に気付かれた。

 グワッと来る彼女達に俺とヴィーラはお互いに見て笑い合う。料理が乗った皿を突き出して俺に感想を求めて来やがった。


「アルバルトさんはどちらがっ…!」


「食べてみてください!」


「はいはい、落ち着けってお前ら。両方食うから」


 レティシアはチーズがたっぷりと掛かったリゾットで、マリアは卵を使ったオムライス的な物だ。

 濃厚でよく伸びるチーズは美味いし、卵はふわふわトロトロで喉越しは最高。


 手に持つフォークで2人の料理を一口取って食べるが、どっちも美味しいんだよなぁ。


 もちゃもちゃと食べている俺をレティシア達は黙って見ている。こういう場合は1人だけ褒めると拗ねるケースが多いから厄介だ。


 ならばとよく噛んで飲み込み、俺は口を開いた。


「うん、両方…美味いっ!!」


「どうしてですかっ!私の方が美味しいんですぅ!」


「アルバルトさん!」


「そこまでですよ、2人とも。美味しい物は美味しいで良いではありませんか?折角なんですから張り合ってないで一緒にご飯を食べましょう!」


 ヴィーラが上手くマリア達を宥めて落ち着かせてくれた。


 本当になんて言うか、ヴィーラは姉って感じがするよな。レティシアやマリアは手のかかる妹、俺は…兄って事にしよう。

 前世でよく義妹の世話をしていたので兄としては歴が長い。


 任せろ、俺がお兄ちゃんだっ!!


 ……とまあ、馬鹿な事は置いておいて、あのままどっちか選んでいたら正直、選ばれなかった方に恨まれそうで怖かったのだ。


(……チキンな兄を許しておくれ)


 食堂の天井を仰いでいるとヴィーラが話しかけて来る。

 その真剣な表情を見て気を引き締め直した。


「……そういえば、アルバルト殿。例の話、どうなっていますか?」


「ヴィーラさん、例の話とは…?」


 不思議そうにコテンと首を傾げるレティシアが目に入る。


 そういえば、この話は剣舞祭の控え室でしか話していなかったな。大会が終わったらレティシアにも話そうと思っていたのを忘れていた。


 じとーと俺を見つめてくるレティシアに手を合わせて必死に説明する。


「すまん、言い忘れていた。マリア達が俺達の旅に同行したいと言われてたんだ。精霊について色々と知っている様だったし、人の多い方が旅も楽しくなるかと思ったんだが…」


「この前の王城の一件は誠にご迷惑をお掛けした事を謝ります。魔王との関連があると思われる以上、ああして強引にでも確かめなければいけませんでしたので…」


 マリアが眉を下げて悲しそうな表情でレティシアと俺へ頭を下げる。

 今にも土下座しそうな勢いであったので、慌てて顔を上げさせようとしたが、レティシアがそれを手で制す。


「一つ…教えて下さい。貴方にとって彼はどういう存在ですか?」


「共に魔王を倒す者として、勇者様として協力をして欲しかった。それだけは間違いありません」


 レティシアの刺す様な視線に対してマリアが胸を張って答える。その答えを聞いてレティシアは目を閉じて、また目を開ける。


 彼女の中の気持ちが整理できたのだろう。


「……分かりました。アルバルトさんがマリアさんと和解しているなら、私からは何も言いません」


 そういうがレティシアの顔は若干顰めっ面だった。よく一緒にいたから僅かな表情の違いが分かる。

 レティシアは続けてマリア達に向かって言葉を発した。


「ですが、私は聖女様だからと言って甘やかす気はありませんよ。寝ずの番もしてもらいますし、料理当番も回して行きますからね」


「レティシアさん、受け入れて下さりありがとうございます。私達に出来る事があれば言って下さいねっ!」


「……我々も必ず力になろう。友人として仲間としてこれからはよろしく頼む、レティシア殿」


 レティシアが彼女達に言いたい事は多くあっただろう。

 彼女達と揉めた事で王都エウロアエからここまで逃げ来る様に移動したのだ。その他にも騙し討ち紛いの事をした相手によく許したものだ。


 レティシアの懐の大きさに尊敬の念を贈る他ない。


 あの後、俺達がヒガリヤを出る時はマリア達にも知らせると約束して宿へ帰還する。


 話を聞けば、マリアは聖女としての力を使う時に大量の魔力が必要となっている為、食事を取る事で賄っているらしい。


 食べた物を魔力に変換して貯蔵出来るスキルを持っているんだとか……絶対変換出来てない部分があると俺は思う。


 だって何とは言わんが、一部がドデカい。身長がこの中で1番小さい筈なのだが、1番大きいとはこれいかに。

 レティシアは度々、マリアの胸に目線を送って苦い顔で自分を見下ろしていた。見ていて可哀想になってしまったのは内緒だ。


 旅の間、あの食費についてどうするか悩ましい問題だったが、ヴィーラがマリアの財布から出させると約束したのでこの話は終わった。


 明るいマリアとしっかりとしているヴィーラが旅の仲間に加われば、かなり賑やかになるだろう。


 俺はこれからの旅路を思い描き、心を弾ませた。


ご愛読頂きありがとうございます。本日からしばらくは金曜日更新とさせて頂こうと思ってます。

その間にストックを書き溜めてまた毎日更新とさせて頂こうと思いますのでよろしくお願いします!


皆様のご感想や評価等も頂ければ幸いです。引き続き、鬼旅をよろしくお願いします!

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